「トレインチャンネル」の秘密をちょっとだけのぞいてみる

2009/09/10 04:40

トレインチャンネルイメージ先に【電車内の液晶テレビ「トレインチャンネル」知ってる? 認知率は……】【JR東日本(9020)】の「トレインチャンネル」をはじめとする、電車内液晶画面媒体(広告)に関する調査結果を記事にしたあと、いくつか新しい資料を見つけることが出来た。「トレインチャンネル」について色々と面白い話もあったので、ここにまとめてみることにする。

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まずは2009年6月に発表された【JapanInternetComの調査結果】。「トレインチャンネル」をはじめとする、昔ながらの広告がデジタル化したものを「デジタルサイネージ」と呼ぶそうだが、それらに関する調査の結果の一部が公開されたもの。その中の一項目に「トレインチャンネル」で便利だと思うのはどのコンテンツか、という設問があった。

「トレインチャンネル」で便利だと思うのは、次のどのコンテンツですか。(2009年6月8日、インターネット経由で東京在住の20-60代の男女300人に問い合わせた結果。複数回答)
「トレインチャンネル」で便利だと思うのは、次のどのコンテンツですか。(2009年6月8日、インターネット経由で東京在住の20-60代の男女300人に問い合わせた結果。複数回答)

興味深いことに、広告や娯楽コンテンツ(啓蒙CMなど)に対する便利さを感じる人はほとんど無く、天気予報や運行情報、乗換案内など、「移動に必要な・リアルタイムに変化する・最新のデータが望ましい情報」が望まれている。元々電車が「移動機関」である以上、それを果たすために欠かせない情報なのだから、当然といえばそれまでなのだが、電車内における情報のニーズが集約されたデータともいえる。

そしてこちらはやはり今年の6月5日に【IT+PLUS】で掲載された記事なのだが、「トレインチャンネル」をはじめとする電車内液晶画面媒体(広告)が注目されやすく、広告効果も高い秘密を解くヒントが書かれている。簡単にまとめると、

・トレインチャンネルはかつて8インチほどのディスプレイがドア横に取り付けられていた程度だった。しかしあまり注目されず。
・車両のドア上に15インチの液晶ディスプレイを配し「右……運行情報や遅延情報など各種電車関連の業務情報」「左……ニュースや広告、天気予報、クイズなどテレビ放送的な情報」という役割づけをする。大人気に。
・「必要情報とそうではないものの組み合わせや共存がトレインチャンネルの成功のカギ」
・「人間はおそらく一つのディスプレーからは一つの情報しか受けとることができないのではないか」
 「トレインチャンネルの場合は「情報(運行情報)」と「コンテンツ(CMや番組)」をそれぞれディスプレー単位で使い分けたことで、一気に普及や認知が進んだのではないだろうか」

「トレインチャンネル」単画面と2画面バージョン
「トレインチャンネル」単画面と2画面バージョン

というもの。つまりあえて「業務放送」と「広告も含めた一般コンテンツ」を分割し、横に並べたことで、全体の注目度そのものと、CMなどへの関心度も高めたというのだ。

これは「モノを見る」際の人間心理を巧みについた手法といえる。見る対象が一画面しかなく、その中で「A:必要な情報」と「B:必要でない情報」が相互に写し出された場合、「必要な情報」の時には注意が向けられるが、そうでないときには注意は払われなくなる。(失礼かもしれないが現実問題として)テレビCMなどが良い例だ。

他方、2画面を「一方を見た時にもう片方が視界に入る範囲で配した」並べ、片方に「A:必要な情報」を流した場合、人は「A:必要な情報」を見た時にもう片方の情報を「不完全な形で(「AB?:必要でないかもしれない情報」とでもしよう)」認識することになる。

単画面と2画面を見た時の人間心理
単画面と2画面を見た時の人間心理

結果的にもう片方の情報が「B:必要でない情報」だったとしても、「不完全な形で」認識した時点では「AB?:必要でないかもしれない情報」でしかなく、それを確かめることはできない。しかも「不完全」であるからこそ、その「もやもやとした」部分をすっきりとさせ、確かめたくなり、その時点におけるもう片方の情報への注力度はグンと跳ね上がることになる。結果として、もう一方の「B:必要でない情報」へも見入ってしまうというわけだ。

「トレインチャンネル」の
2画面表示は人間の
リスク回避の本性である
「不確定情報を確定情報に
するための注力」を
うまく用いている。
例えば映画館のスクリーンの横で、「スクリーンそのものには決して影を落とさないものの」うろうろし続ける(観客の視界には入っている)子供がいたら気にならないだろうか。パソコンで作業を続けている際、「決して画面やキーボードには触れたりかぶさったりしないものの」自分の視界の端々でペットの猫がうろつき回っていたら、やはり集中はできないだろう。

人はよほど集中しない限り、自分の視界の端に映ったものに対し、「不確実情報を確定情報にしよう」という考えが働き、そちらへの集中度を高めてしまうのだ。これは何かハプニングの原因となるものが目の前に現れる前に、情報を確定させて判断し、未然に回避しようとする本能の一種ともいえる。



「トレインチャンネル」をはじめとした電車内液晶画面媒体(広告)は初期投資にやや高額な資金が必要とするものの、ターゲットを絞りやすく宣伝効果も高く、しかも運行情報をはじめとしたお客への情報サービスの拡充も図れるため、大手鉄道会社が続々と新車両への導入を進めている。

また、広告を出稿する側も工夫を続けており、パナソニックの【エコアイディアワールド】などの独自コンテンツ(個人的に好きな番組だ)など、「テレビのCMを流用せず、最初から電車内広告として使うために作られた番組・動画」を創るところも多数登場している。トレインチャンネルは基本的に音が使えないため、まるで昔の「無声映画」の技術が現代によみがえったかのようで、不思議な感覚もある。

不況下やメディアの多様化、視聴者側の「飽き」や広告を載せる媒体の「媒体力」の低下などで、広告業界が一様に業績を落としていることは既知の通り。しかし新しい技術とこれまでの経験、そして工夫と努力を重ね、「トレインチャンネル」のような次世代を切り開く広告・メディアが生まれているのもまた事実。崩れゆく足元に見て見ぬふりをしながら既得権益にしがみつき、芽生えつつある新芽に石つぶてを投げるだけでなく、周囲の田畑まで荒らしまわるようなことはいい加減に止め、新芽たちに水や肥料を施すような「大人」になってほしいものだ(あえて「誰が」「何処が」は語らないでおく)。

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