旅行や季節ものの売り上げが不調…2009年8月景気動向指数は8か月ぶりの下落、先行きは2か月連続の下落

2009/09/09 12:00

内閣府は2009年9月8日、2009年8月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はなく、現状は8か月ぶりに下落となった。先行き指数も2か月連続の下落傾向を見せている。基調判断はやや厳しい表現であると同時に先月と同様の「景気の現状は、厳しいながらも、下げ止まっている」となった(【発表ページ】)。

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新型インフルエンザの影響大
文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値についてはまとめのページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】にて解説している。そちらで確認のこと。

2009年8月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス0.7ポイントの41.7。
 →8か月ぶりの下落。「やや良くなっている」判断が減り、「やや悪くなっている」が増加。
 →家計においてはエコポイント付与、環境対応車両への補助がプラスに働いたものの、天候不順や新型インフルエンザの影響により、旅行や季節ものの売り上げが不調なために低下。企業では受注や出荷の持ち直し感はあるが絶対量が少なく、さらに販売価格の引き下げ圧力も強く、下落。雇用は一部で求人動向が活性化してきたことから上昇している。
・先行き判断DIは先月比マイナス0.9ポイントの44.0。
 →2か月連続のマイナス。
 →家計では新型インフルエンザの拡大懸念、企業は販売価格の引き下げ圧力で低下。雇用部門のプラスを打ち消して全体でマイナスに引っ張ることに。
雇用以外はほぼ軟調
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
景気の現状判断DI

先月末から少しずつながらも上昇していた先月までとは違い、マイナスばかりが目立つ前月差となった。先月に「そろそろ直近における天井が見えてきたのかもしれない」とコメントしたが、それが現実のものとなりつつある。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、前回の下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマンズ・ショック」をきっかけに、直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。「もしかすると各数値が1桁、あるいはゼロに限りなく近づくのでは」という懸念もあったが、2009年1月には横ばい、多少の上昇を見せ、2月以降は上昇が続いていた。今月は雇用指数以外がマイナスにぶれ、いよいよ「踊り場」の感が強くなってきた。

・下落傾向から反転。
・「雇用と全体の下落逆転」が
とりあえず確認される。
・合計のDIは現状においては
02-03年の不景気時代の
最悪期よりは回復。
・「踊り場」に突入か。
ここ一、二年、すなわち2007年の夏における「サブプライムローンショック」以降の下落が「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にぶれがあったのに対し、今回は一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったこと、それが「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況を表していることは、これまでに説明した通り。連鎖反応的に襲い掛かった数々のマイナス要素(いわゆる「金融工学危機」)が、多種多様な方面で一斉に経済へ悪影響を与えた様子が手に取るように分かる。

今月も含めたここ数か月の動きは、2001年後半以降の大底からの反転をなぞっているようにも見える。この傾向が景気回復における「パターン」であるのなら、先月触れたように天井付近で「雇用関連指数」と「合計全体指数」の交差が発生し、そこから再びしばらく(過去なら2002年半ば)は軟調さが続き、もみ合いながら景気の復調が見られることになる。今月発表分では天井感が見え、さらに「交差」現象まで確認できた。前回の傾向を踏襲するとすれば、これからしばらくは雇用情勢はやや回復が見られるものの、全体的には再び景気後退が加速することになる。

景気の先行き判断DIについては、先月同様に下落した。

景気の先行き判断DI
景気の先行き判断DI

飲食関連はやや持ち直しを見せているが、全体的には先月からの下落傾向が確認できる。特にサービス関連の落ち込み具合が顕著だが、これはひとえに新型インフルエンザの影響によるところが大きい。

2000年以降の先行き判断DIの推移
2000年以降の先行き判断DIの推移(赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方よりも下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かったことを示している(また、株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。昨年10月におきた株安や景気の悪化(「リーマンブラザーズ・ショック」)が、いかに大きなインパクトを、家計や企業の先行き心理に与えたのかが分かる。

今月は全体的にはマイナス傾向が家計だけでなく、企業にまで及ぶようになった。家計は新型インフルエンザへの懸念、企業は価格引き下げ圧力が、かなり強いことがうかがえる。

そして「現状」同様に上昇・安定時の傾向「雇用指数が全体指数を大きく上回る」、その前提となるクロス・逆転現象が「先行き」でも確認できている。「現状」「先行き」共に、景気動向は次なるステップに進んだ可能性が高い。

「現状そこそこ」「先行き不安」の声が
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・エコポイント制度の効果で、テレビの販売台数は前年比140.5%と好調に動いている。また、冷夏にもかかわらず冷蔵庫の販売台数が105.0%、エアコンも115.4%と伸びている(家電量販店)。
・客単価、商品単価等は、一段と低下傾向にある。第3のビールの100円販売や野菜価格高の中での緊急値下げなどが低単価化を促進しており、利益を圧迫している。また、冷夏によって、衣料品の売上は前年同月比70%となっている(スーパー)。
・高速道路料金引下げの効果で相変わらず週末は来客数が多いが、悪天候と総選挙の影響で全体的には伸び悩んでいる(テーマパーク)。
・天候不順で夏物衣料の動きが低迷しているが、不況の影響により秋物衣料の立上りも遅れている(衣料品専門店)。
・いったん決まっていた旅行需要が、新型インフルエンザの国内まん延状態をみて、変更又は中止になるケースが続発してきた(旅行代理店)。

■先行き
・2-3か月先の会合の受注状況は改善されていない。新型インフルエンザの流行や異常気象による食材の値上がり等、好材料が見当たらない(高級レストラン)。
・ハイブリッド車の受注残が大きいので当面の販売環境に変化はないが、ハイブリッド車の受注にも若干陰りが出てきたので気がかりである(乗用車販売店)。
・例年では秋に四国遍路の仕事が増えるが、インフルエンザの流行が怖い。今春もインフルエンザの影響で、お遍路さんのキャンセルがあり、今秋は更に悪化する(タクシー運転手)。
・一度引下げた弁当の単価を上げるのは難しく、売上は低迷する(その他飲食(弁当))。
など、直前まで打たれていた政策でどうにか息をついている一方、天候不順や新型インフルエンザの流行、さらには値下げ圧力を受けて先行きに不安を感じている心境がうかがえる。

掲載は略するが企業関連でも家計同様に、エコポイントやハイブリッド車関連など政策絡みで堅調さを見せるところがある一方、値引き圧力の増大など先行きの見通しに対する不安の声が増えている。さらに「先行き」では政治動向(雇用調整助成金などの予算関連もあわせ)に対する不安の増大も見て取れる。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
耐久消費財の値上げや雇用喪失など
実体経済への傷も深い。
海外の景気後退も影響し、
外需中心の企業も大きな痛手。
それが内需中心の企業にも波及。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
政策の転換や新型インフルの流行など
直近の複数の不安定要素で揺さぶり。
前回不況パターンと同じなら
今後「景気は今より少々悪め」な状態に
突入の可能性も。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているが、今回の景気悪化(と復調)が2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復」パターンを踏襲する可能性は十二分にある。その場合、全体の指数の底打ちと前後して「大幅な雇用関係指数の下落・他指数とのかい離(かけはなれること)」現象(反動のためのエネルギーの蓄積)が見られると推測される。2008年12月の値が「大幅なかい離」と判断するにはまだ足りないようにも見えるが、元々理論値としての下限(ゼロ)に近い値で起きているだけに、この程度の「かい離」でも反動エネルギーは十分蓄積されたとも考えられる。

その仮説が正しければ、すでに底値は脱しており、今後は短期的な下落を経て、横ばい・回復基調が続く可能性は高い。実際今月では「現状」「先行き」ともに、本格的な上昇の事前現象である「全体指数を雇用関連指数がクロスして大きく上向く」の先駆けともいえる「クロス」現象が確認できた。あとはこれが継続すれば、パターン踏襲がより確実なものとなる(。その場合、2002年中と同様に、景気指数は再び下落することになるが)。

また、本文中でも指摘しているように、底値における値が前回と比べてかなり低い状態にあることから、たとえこのまま上昇・横ばいの傾向を継続したとしても、DI値が50をやや下回る値で継続する可能性がある(いわゆる「何となく不景気」状態の継続)。

今回の不景気は海外要因に寄るところが大きい。つまり日本一国だけではどうにもならない項目が多い。日本国内でどれほどベストの対策を打っても、昨年2008年のリーマンズ・ショックのような海外のネガティブサプライズがあれば、すべてを台無しにしてしまう。それほど世界経済はグローバル化が進んでいる。

さらに今後しばらくの間は国外要素に輪をかけるかたちで、国内要素がマイナスに作用する可能性が高い。海外の経済動向だけでなく国内のさまざまな動きを見極め、正しい情報を元にした正しい判断のもと、景気の流れを慎重に見守り、行動する必要があるだろう。

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