梅雨明けの遅れが響く…2009年7月景気動向指数は7か月連続の上昇、先行きは7か月ぶりの下落

2009/08/10 17:00

内閣府は2009年8月10日、2009年7月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はなく、現状は7か月連続の上昇を見せる一方で、先行きは7か月ぶりの下落傾向を見せた。基調判断は「景気の現状は、厳しいながらも、下げ止まっている」となった(【発表ページ】)。

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各種対策による心理的成果が出始め、各数字は上昇へ
文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値についてはまとめのページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】にて解説している。そちらで確認のこと。

2009年7月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス0.2ポイントの42.4。
 →7か月連続上昇。「悪化」判断が減り、「変わらない」が増加。「やや良くなっている」が微減。
 →家計においてはエコポイント付与、環境対応車両への補助がプラスに働いたものの、梅雨明けの遅れや南部地域の豪雨の発生などで夏物商品の売れ行き不振が響き、低下。企業においては受注や出荷の持ち直し感から上昇。雇用でも一部で求人動向が活性化してきたことから上昇している。
・先行き判断DIは先月比マイナス0.7ポイントの44.9。
 →7か月ぶりのマイナス。
 →家計では新型インフルエンザの騒動の再活性化懸念や政治的な不安定要素、冷夏に対する不安から低下。企業と雇用部門のプラスを打ち消して全体でマイナスに引っ張ることに。
現状・先行き指数共に全項目でプラス

それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
景気の現状判断DI

10代の数字が列をなしていた昨年末から今年の頭と比べると、「底は見えた」的な実感がある。ただ今月は先月と違い、家計動向の一部がマイナスに転じ、企業・雇用の数字の上昇分も小さなものとなっている。先月の記事でも多少触れたが、そろそろ直近における天井が見えてきたのかもしれない。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、前回の下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマンズ・ショック」をきっかけに、直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。「もしかすると各数値が1桁、あるいはゼロに限りなく近づくのでは」という懸念もあったが、2009年1月には横ばい、多少の上昇を見せ、2月以降は上昇が続いている。今月は先月と比べると上げ幅も最小限のものにとどまり、いわゆる「踊り場」に達したようにも見える。

・下落傾向から反転。
・「雇用と全体の下落逆転」は
「まだ」継続中。
・合計のDIは現状においては
02-03年の不景気時代の
最悪期よりは回復。
・いわゆる「踊り場」?
ここ一、二年、すなわち2007年の夏における「サブプライムローンショック」以降の下落が「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にぶれがあったのに対し、今回は一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったこと、それが「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況を表していることは、これまでに説明した通り。連鎖反応的に襲い掛かった数々のマイナス要素(いわゆる「金融工学危機」)が、多種多様な方面で一斉に経済へ悪影響を与えた様子が手に取るように分かる。

今月も含めたここ数か月の動きは、2001年後半以降の大底からの反転をなぞっているようにも見える。この傾向が景気回復における「パターン」であるのなら、先月触れたように天井付近で「雇用関連指数」と「合計全体指数」の交差が発生し、そこから再びしばらく(過去なら2002年半ば)は軟調さが続き、もみ合いながら景気の復調が見られることになる。今月発表分では天井感は見えたものの、残念ながら「交差」現象は確認できなかった。前回の傾向を踏襲する・しないの判断は保留した方がよさそうだ。

景気の先行き判断DIについては、先月から転じて下落した。

景気の先行き判断DI
景気の先行き判断DI

「現状」と同様、家計部分の失速が目に留まる。「先行き」では家計内全項目がマイナスに転じており、これが企業・雇用のプラスをも相殺し、全体でマイナスとなってしまった。また、プラスを維持している企業・雇用も、先月と比べると伸び率が低下しているのが気になる。

2000年以降の先行き判断DIの推移
2000年以降の先行き判断DIの推移(赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに昨年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方よりも下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かったことを示している(また、株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。昨年10月におきた株安や景気の悪化(「リーマンブラザーズ・ショック」)が、いかに大きなインパクトを、家計や企業の先行き心理に与えたのかが分かる。

今月は企業・雇用の上昇値は最小限のものにとどまり、家計の値は全項目でマイナスを記録。結果として約半年ぶりに再び下落傾向を見せてしまった。昨年末と比べた上での比較論的な期待はあるが、冷夏や総選挙の影響、秋以降に再び活性化すると思われる新型インフルエンザへの懸念が高まりつつあるのが原因。

そして「現状」同様に上昇・安定時の傾向「雇用指数が全体指数を大きく上回る」、その前提となるクロス・逆転現象は起きていない。「現状」同様に雇用関連のマインドの改善が、全体的な雰囲気の底上げには欠かせないのだが、それはまだ先のようだ(数字的にはあと一息なのだが)。

「現状そこそこ」「先行き不安」の声が
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・エコカー減税や新車買換え補助の施策が、ようやく客に浸透してきている。新型ハイブリッド車の話題性により来場する客も多く、店頭は活気を取り戻しつつある。加えて、ハイブリッド車以外のエコカーに対する関心も拡大し、減税対象車と非対象車の販売に大きな違いが生じている(乗用車販売店)。
・エコポイント制度の効果で、薄型テレビや大型冷蔵庫の販売は順調だが、パソコンや携帯電話が不振である。更に、梅雨のような天候で、扇風機やエアコンなどの季節商材の需要が前年の半分に落ち込み、全体として、ほぼ横ばいの状態となっている(家電量販店)。
・前年比5%の減少と、観光客の利用が悪い状況にある。しかしながら、7月月初では10%減を予測していたのに対し、中旬で予約が伸びており、今年は旅行出発間際に利用申込をする傾向が見られる(レンタカー)。
・タスポ効果による売上増の一巡に加え、梅雨明けの遅れもあり、夏の主力商材である冷麺、アイス、ドリンク、おにぎり等の売上が減少している(コンビニ)。
・中元の受注開始やクリアランスセールの前倒しを6月から行っており、その分、7月は苦戦している。夏のボーナスの大幅カットが非常に大きいとの声が多い(百貨店)。
・長引く梅雨の影響で客足はすっかり途絶えており、売上の低迷も続いている(衣料品専門店)。

■先行き
・株価が1万円まで回復したほか、新築マンション価格の下落傾向も止まりつつあり、客のマンション購入に対する不安感も薄れてきたため、先行きはやや良くなる(住宅販売会社)。
・総選挙を控え、どのような状況になるのかと様子見の傾向があるため、現在の状況が当分の間、継続する(美容室)。
・秋冬の新型インフルエンザは懸念材料としてあるが、9月の5連休は来客の増加に期待できる(遊園地)。
・10月からの燃油サーチャージの上昇や秋口からの新型インフルエンザの再流行の懸念等、マイナス要因が多く、強力なプラス要因が見当たらない(旅行代理店)。
・天候不順や過去に選挙時期の売上が減少したことを考えると、数か月先の販売状況は明るくない(スーパー)。
など、現状は「どうにか良くなりつつあるかな」といった、何となく景気の回復感が期待できる雰囲気を感じつつ、先行きにおいては大きな不安要素が相次ぎ、消費者のマインドを低迷させていることが分かる。

掲載は略するが企業関連では、一応に「景気が悪い」「受注が激減」といった絶望的な表現は少なくなり、景気の悪い企業と良好な企業に二分化されつつある空気が感じられる。ただし大規模な上昇機運は見られず、みな一様に「身構えながらほふく前進」的な感が否めない。政府が対策を講じた部門では回復基調の意見も見られるだけに、これが続けば他の領域にも波及していくことも期待できるのだが。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
耐久消費財の値上げや雇用喪失など
実体経済への傷も深い。
海外の景気後退も影響し、
外需中心の企業も大きな痛手。
それが内需中心の企業にも波及。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
直近の複数の不安定要素で揺さぶり。
前回不況パターンと同じなら
「景気は少々悪め」な状態が
長期にわたる可能性もある。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているが、今回の景気悪化(と復調)が2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復」パターンを踏襲する可能性は否定できない。その場合、全体の指数の底打ちと前後して「大幅な雇用関係指数の下落・他指数とのかい離(かけはなれること)」現象(反動のためのエネルギーの蓄積)が見られると推測される。2008年12月の値が「大幅なかい離」と判断するにはまだ足りないようにも見えるが、元々理論値としての下限(ゼロ)に近い値で起きているだけに、この程度の「かい離」でも反動エネルギーは十分蓄積されたとも考えられる。その仮説が正しければ、すでに底値は脱しており、今後もしばらくは横ばい・上昇率の低下を挟みながら、回復基調が続く可能性は高い。実際、「現状」「先行き」ともに、本格的な上昇の事前現象ともいえる「全体指数を雇用関連指数がクロスして大きく上向く」状況が近付いている雰囲気も見られる。

ただし本文中でも指摘しているように、底値における値が前回と比べてかなり低い状態にあることから、たとえこのまま上昇・横ばいの傾向を継続したとしても、DI値が50をやや下回る値で継続する可能性がある(いわゆる「何となく不景気」状態の継続)。特に今回(複数の不特定要因があったとはいえ、)先行き指数が50突破を前に再び下落してしまったあたり、それを裏付けているようで不安でならない。

今回の不景気は海外要因に寄るところが大きい。つまり日本一国だけではどうにもならない項目が多い。日本国内でどれほどベストの対策を打っても、昨年2008年のリーマンズ・ショックのような海外のネガティブサプライズがあれば、すべてを台無しにしてしまう。それほど世界経済はグローバル化が進んでいるのだ。国内はもちろん、海外の経済動向にも注目しながら、景気の流れを慎重に見守る必要があるだろう。

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