【更新】パートタイムの賃金の国際比較をグラフ化してみる

2009/08/10 08:10

パートタイムイメージ先に【日銀レポートによる「なぜ好景気でも賃金は上がらなかったのか」】で日銀関係者によるレポート【賃金はなぜ上がらなかったのか? - 2002-07年の景気拡大期における大企業人件費の抑制要因に関する一考察】を紹介したが、そのレポートの解説には多数の有益なデータや図表が収められていた。今回はその中から「パートタイム賃金のフルタイム賃金に対する比率の国際比較」を再構成してみることにする。要は「正社員と非正規社員の手取りの違いを時給ベースで比較した図」というあたりだろう。

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レポートが大本の資料として用いているのは、OECE(経済協力開発機構)が毎年発行している【Taxing Wages】。元資料には記載されていないが、2004-2005年版のものと思われる。また、パートタイム・フルタイムの定義は国毎に異なることや、集計対象が各国でばらばら(製造業のみ、全産業)のため、あくまでも参考値程度でしかない。

パートタイム賃金のフルタイム賃金に対する比率の国際比較(時給ベース)
パートタイム賃金のフルタイム賃金に対する比率の国際比較(時給ベース)

【若年層の正社員・非正規社員、派遣社員などの割合をグラフ化してみる】【正規雇用者・契約社員や派遣社員・パートやアルバイトなどの割合の推移をグラフ化してみる】でも触れているように、1990年代以降日本のパート労働者比率は上昇の一途をたどっている。また、正社員並みの仕事をする・させられる非正社員の割合も増加しているが、時給が少ない非正社員(パート含む)の割合は2007年時点で7-8割に達している(【労働者 4人に1人は パートです 仕事はハードで 給与はひかえめ】)。結果として、他国に比べてパートタイム賃金の時給がフルタイムと比べて低く抑えられる一因となっている。

先の日銀のレポートでは「正社員の賃金が上がらない理由」の一つとして、パート賃金がかさ上げされないため、それと比する立場にある正社員の賃金を押さえつける役目も果たしたのではないかとする推論を挙げている。具体的にそれを裏付けるデータが不足しているのであくまでも「推論」でしかないが、興味深い話ではある。

一方で、「仕事内容が同じでもパートの賃金が安い」理由として企業側は「勤務時間の自由度」「残業の時間数・回数」「企業への貢献度の期待」「転居を含めた人事異動の幅の違い」などを掲げている(【労働者 4人に1人は パートです 仕事はハードで 給与はひかえめ】)。

仕事が同じでも正社員とパート間に賃金格差がある場合の理由(再録)
仕事が同じでも正社員とパート間に賃金格差がある場合の理由(再録)

要は、日本の企業としては

「賃金」=「労働対価」+「会社への帰属・拘束の代償」

と見ており、後者の「会社への帰属・拘束の代償」のウエイトが高いがためにパートタイマーの時給がフルタイム労働者と比べて低く抑えられていると考えられる。

労働そのものを重視するのか、それとも会社への帰属を重視するのかは企業の選択によるところであり、「会社への帰属・拘束の代償」を重視する企業の主張にも一理ある。それだけ定着する人材を重要視しているという解釈もできるからだ。しかし立場上後者を示しにくいパートタイム労働者にはつらい話には違いない。

一方、パートタイム労働者のことをおもんばかって、あるいは「労働」そのものを重視するあまり、「会社への帰属・拘束の代償」をまったく評価しないとなれば、パートタイム労働者もフルタイムとほぼ同等の賃金を受け取れるものの、今度は正社員のモチベーションが著しく下がることになる。正社員ならではのさまざまな拘束・取り決めによる代償が無くなるからだ。正社員の流動性が著しく高まり、人材が根付かない状態になれば、企業の質が低下し、存続そのものがおぼつかなくなる。

バランスの問題という点もあり、いきなり正社員と同じ、というわけにはいかないだろう。だが、少なくとも同様の作業内容をこなしているパートタイム労働者には、もう少し「配慮」を見せてもよいと思われる。もっとも日銀レポートでも指摘されているように、フルタイムの時給を底上げすることは、正社員の賃金を上げる後押しにもなりうる。結局大規模な人件費の増加(パートタイムだけでなく正社員の人件費も底上げされうる)が予想されるので、企業側はあえてパートタイム賃金を抑えている、のかもしれない。

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