【更新】米新聞社サイトのアクセス動向をグラフ化してみる

2009/08/08 10:07

新聞イメージ先日[産経新聞]などが伝えたように、アメリカの「メディア王」とも呼ばれ、メディア大手のニューズ・コーポレーションを率いるルパード・マードック氏は2009年8月5日、傘下の新聞サイトを1年以内にすべて有料化する方針を明らかにした。これは新聞事業が大きな赤字を抱えていること、さらに同氏の「質の高いジャーナリズムは高くつく。
内容を無料で提供することは、資産を切り売りしているのと同じことだ」「有料化の先陣を切ることで読者の減少に見舞われようともかまわない。もしわれわれが成功すれば、世界中の新聞が追随するだろう」という考え・方針によるものとされている。ちょうど同じ頃、アメリカのメディア動向に詳しい【メディア・パブ】において、そのアメリカの新聞社提供によるウェブサイトの動向を物語るデータが開示されていた。非常に興味深い内容となっていることもあり、今回はそれをグラフ化することにした。

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元記事には各方面からの抽出データと、主要新聞社などのサイトの滞在時間をはじめ、各種データが展開されている。そのうち、調査会社ニールセンによる、【アメリカの新聞社によるウェブサイト(Newspaper Web Sites)】のデータを元に、グラフ化を試みることにする。

なお元データにもあるように、ニールセンでは最新データの2009年6月分から新技術を用いたウェブアクセスのデータ収集を開始している。よって同じ項目でも厳密には2009年6月分とそれ以前のデータには連続性がない。一部の項目で最新データにやや大きなぶれが見られるのもそれが理由と思われる。

さて、まずは新聞社の月単位におけるページビュー数とユニークユーザー数の推移。

米新聞社サイトのユーザー関連データ推移(一人当たりのページビュー数と滞在時間)
米新聞社サイトのユーザー関連データ推移(一人当たりのページビュー数と滞在時間)

紆余曲折がありながらも、全体的には順調にページビュー・ユニークユーザー数共に増加の傾向を示している。ただし「紙媒体のニーズが激減する中、新聞社が生き残りをかけるにはウェブしかない!」とばかりに全力入魂をしている割には、あまり大きな上昇率には見えない。また、新たにウェブに展開をはじめたり、コーナーを増設したり、記事ボリュームを増やした新聞社があることを考えると、正直「物足りない」という表現の方が適切だろう。

確かに新聞社提供のウェブサイトは認知度を高め、インターネットユーザーに対し浸透度を深めつつある。それは次のグラフからも明らかだ。

ネット利用者全体に対する米新聞社サイトの利用率(%)
ネット利用者全体に対する米新聞社サイトの利用率(%)

直近の下げは前述したように調査方法の変更に伴う誤差である可能性が高く、無視しても構わないだろう。この5年間で約15ポイントもの普及率増加をみせていることが分かる。

しかし気になるのは、一人一人の読者の「提供する立場から見た」質。新聞社にしてみれば、多くの人が読みに来てほしいのはもちろん、一人一人がじっくりと長時間にわたり、しかも多くのページを読んで欲しい。注力度・注力時間が大きいほど媒体力としての価値が高まり、広告主に強烈なセールスポイントとなるからだ(「手にとって数秒で打ち捨てられるチラシ」と、「自宅に持ち帰ってじっくりと長時間閲覧され、さらに額に飾られるアイドルのサイン入りパンフレット」のどちらに宣伝効果があるのか、と考えればよい)。

米新聞社サイトのユーザー関連データ推移(一人当たりのページビュー数と滞在時間)
米新聞社サイトのユーザー関連データ推移(一人当たりのページビュー数と滞在時間)

このデータを見る限り、読者一人一人が「新聞社にとって、よりよい・質の高い読者」になりつつあるとは思い難い。さらにメディア・パブでも指摘されているように、ここ半年の間はページ閲覧数・滞在時間共に減少の傾向をみせている。アクセス数は増えても期待したほどではなく、読者の「媒体力を支える質」は横ばい、あるいは低下の傾向をみせているのでは、「(財務的に)紙媒体の後を担う存在」として無料配信のインターネットに期待するのはハイリスクであると考えてしまうのも道理といえる。



新聞社サイトの有料化はすでに何社かが先行して実施している(成功しているとは言い難いが)。マードック氏が「「質の高いジャーナリズムは高くつく」と表現していることの意味(「高くつく」の値付けも含め)、読者を取り巻く情報メディア環境の変化、読者側の「情報」に対する考え方もあわせ、成功するか否かは別として、今回のような試みをすること自体は評価すべきといえよう。

例えば手身近な例で考えてみても、インターネット関連で対価を支払ってまで欲しい情報・情報周りの快適なサービスは山ほど存在するし、そのビジネスモデルで成功している例も数多く見受けられる。なぜそれらのサービスが成功しているのか、そして新聞社のウェブサイトの場合は比較するとどうなのか。そのあたりも含め、考える必要があるものと思われる。


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