2010年3月期におけるキー局銘柄の第1四半期決算をグラフ化してみる……(2)業績斜め読みと広告売上、利益率の変化

2009/08/07 04:45

テレビイメージ「2010年3月期におけるキー局銘柄の第1四半期決算をグラフ化してみる」その2。ここでは発表された業績を斜め読みし、さらに「広告売上減少」に対する各局の姿勢をざっと見ることにする。今年は去年の同期(【主要テレビ局銘柄の第1四半期決算をグラフ化してみる……(2)業績斜め読みとスポット広告の落ち込み】)と比べ、少々違った傾向が見えている。

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業務成績は2分化
それでは早速各社のデータを見ることにする。業務成績が分かりやすい、「売上高」「経常利益」「純利益」3項目について、前年同期比の増減率をグラフ化したのが次の図。

主要5局の2010年3月期・第1四半期における業務成績(前年同期比・増減率)
主要5局の2010年3月期・第1四半期における業務成績(前年同期比・増減率)

キー局中唯一売上を伸ばしているのは【TBS(9401)】だが、後述するように本業の放送事業の売上は思わしくない。売上が伸びた原因は、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「おくりびと」、「ROOKIES-卒業-」「余命一ヶ月の花嫁」など、映像・文化事業の好調さによるもの。売上・営業利益共に前年同期の約2倍の値を見せている。また、前年同期比で見ると、


に2分化されることが分かる。特にテレビ東京の純利益の伸び率がすさまじいことになっているが、これは去年同期の額が1.75億円と少額なために生じたもの。一方マイナスの放送局は純利益が前年同期比でいずれもマイナス50%を超えており、こちらも「すさまじい」事態に陥っている。

続いて放送局なら当然、放送法でも定められている主事業たる「放送事業」に的を絞って眺めてみることにする。売上高と営業利益をそれぞれ前年同期と比べる形でグラフにしたのが次の図。

主要5局の放送事業における、前期・今期第1四半期の売上(億円)
主要5局の放送事業における、前期・今期第1四半期の売上(億円)

主要5局の放送事業における、前期・今期第1四半期の営業利益(億円)
主要5局の放送事業における、前期・今期第1四半期の営業利益(億円)

広告枠の販売がおもわしくなく、売上が落ちているのは全局共通。しかしながら営業利益(要するに「売上」-「経費」)は日本テレビ放送網とテレビ東京は前年同期比で大きくかさ上げされている。先の業務成績全般でもこの2局は前年同期比でプラスを見せており、放送事業の利益増加が全体の業務成績を押し上げたと見てよいだろう。

2局の業務成績改善は「利益率の向上」
日本テレビ放送網とテレビ東京が放送事業での利益を伸ばしているのは、経費を削減した、表現を変えれば「利益構造の効率を良くした」からに他ならない。放送事業における営業利益率(利益÷売上高。売上の何%が利益になるかの値。高いほど「稼ぎやすい」)を各局毎に前年同期と並べてみると、それがはっきりと分かる。

主要5局の放送事業における、前期・今期第1四半期の放送事業営業利益率
主要5局の放送事業における、前期・今期第1四半期の放送事業営業利益率

日本テレビ放送網は6割強、テレビ東京にいたっては(元々低かったせいもあるが)5倍強にも営業利益率が伸びている。一方、他3局はいずれも前年同期比でマイナス。「卵が先かニワトリが先か」という問題にもなりかねないが、ともあれこの2局の放送事業の経費削減効果が今四半期に出てきたことは間違いない。【主要テレビ局の収益構造を再点検してみる】でも触れているが、両局とも強烈なまでのコストカットを推進しており、その成果が出たことになる。

スポット広告だけでなくタイム広告も…
昨年度においては主事業であるテレビ放送事業の売上の中でも「スポット広告」の減少が著しかったが、今年に入り「タイム広告」にまで減少傾向が見えてきたのは前述の通り。今期第1四半期決算短信にはその傾向が明確に見えている。

主要5局のスポット・タイム広告売上・前年同期比(個別)
主要5局のスポット・タイム広告売上・前年同期比(個別)

「広告不況」と呼ばれた昨年度よりさらに両広告の売上が減少しており、財務状態を圧迫しているのは決算短信の文面にもしっかりと記載されている。たとえばテレビ朝日の場合、

・タイム収入は、スポンサーの固定費削減傾向が拡大したため、4月改編セールスで苦戦を強いられ、レギュラー番組のセールスが大幅な減収となりました。単発番組では、「世界フィギュアスケート国別対抗戦2009」、「2010FIFA ワールドカップTM アジア地区最終予選」3試合、ドラマスペシャル「刑事一代」などのセールスを積極的に行い、増収となりましたが(以下略)

・スポット収入は、「出版」「卸売」「家庭用品」が好調に推移したものの、「サービス・娯楽」「輸送機器」「食品・飲料」などをはじめとするほとんどの業種が低迷したため(以下略)

とあり、スポット広告だけでなくタイム広告にまで、企業の経費削減の荒波が押し寄せていることが確認できる。

気になることをいくつかまとめてみると、まず一つは「どの局も前年同期比で10%超えのマイナスを記録している」。昨年度はややマシだったタイム広告は比較論として仕方がないが、「広告不況」の代名詞とまで言われたスポット広告までさらに押し下げられているのは状況的によろしくないといえる。

「タイム広告」が落ち込んでいるということは、各定番の番組を資金的に支えるスポンサーがしり込みしたり、値引きを強いていることになる。「スポット広告の減少」はまだテレビ全体としての影響力の低下云々で責任回避、あるいは「みんながそうだから仕方ないよネ」で説明・言い訳がつく。しかし個別の番組に対するスポンサーも撤退しているのでは、テレビ放送を構成する個々の番組にも問題提起がなされていると考えざるを得ない。

■TBS
…個々の番組の魅力減少傾向激化
…局そのものの魅力も低下中
■日本テレビ放送網
…個々の番組の魅力急降下
→経費削減の副作用の可能性
もう一つは、タイム広告の落ち込みが激しい2局、日本テレビ放送網とTBSにおいては、個々の番組の媒体力の落ち込みが著しいのではないかという懸念があること。TBSの視聴率が低迷し、度重なる番組改編も功をなさないことはすでに多くの人が知るところではある。個々の番組の魅力、視聴率が落ちれば当然タイム広告を出稿する企業も減り、それはテレビ局全体の媒体力低下にもつながる。スポット広告の落ち込みもキー局中トップをいくTBSは、放送事業においては「これまでとは違う」抜本的な見直しが求められていることを、この数字が表している。

一方日本テレビ放送網は【日本テレビのタイム・スポット広告の変化をグラフ化してみる】や今件のこれまでの記事中で触れているが、「経費削減がキツ過ぎたあまり、個々の番組の魅力・媒体力が減少し、それがタイム広告の出稿の大幅減につながったのではないか」とする懸念がある(言い換えれば「経費ケチりすぎたせいで番組がつまんなくなった」だ)。この推論が正しいとすれば、今後この傾向にはますます拍車がかかるようになり、同局の経費削減・リストラ策は「短期的にはプラスの効果を生み出しても、中長期的には大きな痛手となる」可能性を秘めていることになる。

(続く)

■一連の記事:
【2010年3月期におけるキー局銘柄の第1四半期決算をグラフ化してみる…(1)「キー局」と「スポット広告」】
【2010年3月期におけるキー局銘柄の第1四半期決算をグラフ化してみる……(2)業績斜め読みと広告売上、利益率の変化】
【2010年3月期におけるキー局銘柄の第1四半期決算をグラフ化してみる……(3)TBSの特殊事情とまとめ】

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