【更新】FT誌曰く「『ビジネスウィーク』には1ドルの価値しかありません」

2009/07/24 04:40

1ドルイメージメディア構造の変化や積み重なってきた不信感、「媒体力」の低下などで新聞や雑誌など紙媒体メディアが、財務的に大変な状況にあることはすでに【4大既存メディア広告とインターネット広告の推移をグラフ化してみる(2009年7月発表分)】などでお伝えしている通り。そしてさまざまな情報分野で日本を先行するアメリカでは、紙媒体の動向についても【アメリカの新聞広告の売上推移をグラフ化してみる】【アメリカ雑誌の広告売上の変化をグラフ化してみる】などにあるように、やはり先行している感がある。そんな状況を象徴するニュースが、先日【メディア・パブ】で紹介されていた。イギリスの経済誌[FinancialTimes(FT)、http://www.ft.com/cms/s/0/bd68cdc6-6fdc-11de-b835-00144feabdc0.html 現時点では登録者のみ]が、売りに出されたアメリカのトップクラスのビジネス誌「ビジネスウィーク(BusinessWeek)」をして「1ドルの価値しかないネ(Business Week sale may fetch only $1)」とコケおろしたのである。

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FT誌の元記事などによれば、

・「ビジネスウィーク」は1929年創刊、満80年の老舗ビジネス誌で200人近いスタッフを抱えている。
・発行部数は直近で93万6000部(FT記事より)。
・MPA(Magazine Publishers of America)によると、2009年第2四半期の広告売上高は前年同期比のマイナス30.1%、4387万6589ドルにまで落ち込んでいる。
・「あまりにも広告営業成績が悪いので、『ビジネスウィーク』を出版しているMcGraw-Hill社(あの格付け会社S&Pの親会社でもある)が仮に同誌を売却したとしても、1ドルしか得ることはできないだろう」という話が内部事情を知る人から伝えられている。その人の話によると「(ビジネスウィークの今後を考えるにあたり)戦略的なオプションの一つとして売却を考えた際の調査の結果、そのような値が出たに過ぎない」と答えている。
・かつて投資会社OpenGate Capitalは、TV Guideという赤字を出していたテレビ関係誌の事業を1ドルで購入した経歴がある(【Ad Innovator:TV Guide事業、1ドルで投資会社に転売】)。ある銀行関係者は「おそらく『ビジネスウィーク』も(同社に売却するのなら)似たような売却パターンになるだろう」と述べている。
・McGraw-Hill社は2009年第1四半期、情報・メディア部門において営業利益は前年同期比で76.4%のマイナスを記録している。そこには「ビジネスウィーク」「JD Power & Associates」「Platts」などが含まれている。
・紙媒体に投資や買収を積極的に行っている企業グループのうち、ブルームバーグは今件についてノーコメント。ニュース社(『ウォールストリートジャーナル』などを発行)は「興味無し」とコメントしている。

Magazine Publishers of Americaによる2009年第2四半期の広告売上高から「ビジネスウィーク」の部分を抽出。確かに3割以上の減少が確認できる
Magazine Publishers of Americaによる2009年第2四半期の広告売上高から「ビジネスウィーク」の部分を抽出。確かに3割以上の減少が確認できる。

「ビジネスウィーク」イメージなどが語られている。要は物理的な資産や著作権などの有形・無形資産はそれなりにあるが、事業体として運営を続ければ続けるほど赤字が増えていく状況であり、さらにますますその赤字体質は悪化していくのが容易に想像できるので、(持っているだけで支出は増えるし、財務体質を改善して黒字化するには相当な手間と投資資金が必要になるため)「1ドル」という事実上の「無料提供」でないと誰も引き取り手がいない、ということだ。また、一般株式のように多数の売り買い人がいる中でのオークション取引ではなく、1対1の相対取引だから、買い手が納得するような価格で無ければ売買そのものが成立しない(「ビジネスウィーク」の売却話は圧倒的に売り手のMcGraw-Hill社側の立場が低い。何しろ赤字垂れ流し状態の事業を引き取ってもらうのだから)。

これを「100万部近くも売れているし歴史的価値がある。さらに固定資産価値はあるから、1ドルで売るだなんてとんでもない」という一面だけを見て感情的に批判し反発すると、どこぞの国の宿泊施設問題のような、「売り手も買い手も売却対象も得はせず、事態は一切解決しないどころか『赤字積み増し』という状況悪化に陥り、得をするのは騒ぎ立てたメディアと評論家のみ」という状態になりかねない。

「ビジネスウィーク」といえば日本人でもその名を知らない人はいないくらいにメジャーなビジネス誌の一つとして名高い雑誌。それが「雑誌1部」が、ではなく「事業そのもの」が1ドルでもなかなか引き取り手がいない状況は、昨今の紙媒体の難しさを象徴しているのかもしれない。

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