「厳しいながらも、下げ止まっている」…2009年6月景気動向指数は6か月連続の上昇、先行きも6か月連続の上昇

2009/07/09 07:55

内閣府は2009年7月8日、2009年6月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はないものの、現状・先行き共に六か月連続しての上昇傾向を見せた。基調判断は「景気の現状は、厳しいながらも、下げ止まっている」であり、底打ち感をにおわせるような雰囲気が感じられる(【発表ページ】)。

スポンサードリンク


各種対策による心理的成果が出始め、各数字は上昇へ
文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値についてはまとめのページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】にて解説している。そちらで確認のこと。

2009年6月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス5.5ポイントの42.2。
 →6か月連続上昇。「悪化」判断が大きく減り、「変わらない」が増加。「やや良くなっている」も微増。
 →家計においてはエコポイント付与、環境対応車両への補助、定額給付金、高速道路料金引き下げに対する需要増が幸いして、上昇。企業においては受注や出荷の下げ止まり感から上昇。雇用でも一部で求人動向が活性化してきたことから上昇している。
・先行き判断DIは先月比プラス2.3ポイントの45.6。
 →6か月連続してのプラス。
 →家計では新型インフルエンザの騒動の鎮静化による、旅行・飲食関連の売上回復期待、企業では受注や出荷の持ち直し期待、雇用でも状況悪化に対する懸念後退から上昇。
現状・先行き指数共に全項目でプラス
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
景気の現状判断DI

10代の数字が列をなしていた年末年始と比べると、「底は見えた」的な実感があるためか、期待感が高まる状況は先月から変わらず、全部の項目でプラスを見せている。上昇幅も片寄ることなくプラス5前後で推移しており、雰囲気的には悪くない。特に飲食・サービス関連は、先月が新型インフルエンザ騒動でマイナスを示してたものがプラスに転じているあたり、注目に値する。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマンズ・ショック」をきっかけに、直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。「もしかすると各数値が1桁、あるいはゼロに限りなく近づくのでは」という懸念もあったが、2009年1月には横ばい、多少の上昇を見せ、2月以降は上昇が続いている。今月の上昇幅は一時低迷した先月と比べてやや持ち直しを見せ、2002年初頭の「一時回復感」に近い状況が見られる。

・下落傾向から反転。
・「雇用と全体の下落逆転」は
「まだ」継続中。
・合計のDIは現状においては
02-03年の不景気時代の最悪期よりは
回復。
ここ一、二年、すなわち2007年の夏における「サブプライムローンショック」以降の下落が「前回(2001年-2002年)の急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にぶれがあったのに対し、今回は一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったこと、それが「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」ことを表していることは、これまでに説明した通り。連鎖反応的に襲い掛かった数々のマイナス要素(いわゆる金融工学危機)が、多種多様な方面で一斉に悪影響を与えた様子が手に取るように分かる。

今月も含めたここ数か月の上昇ぶりは、2001年後半以降の大底からの反転をなぞっているようにも見える。この傾向が景気回復における「パターン」であるのなら、直近の天井で「雇用関連指数」と「合計全体指数」のクロスが発生し、そこから再びしばらく(過去なら2002年半ば)は軟調さが続き、もみ合いながら景気の復調が見られることになる。もっとも、今回の不景気は下落幅が前回よりも大きかったことから、景気が復調しても以前のパターンより低い水準のまま、つまり「やや不景気」のまま横ばいの値を見せる可能性もある。

景気の先行き判断DIについても、先月と比べて上昇した。

景気の先行き判断DI
景気の先行き判断DI

「現状」と同様、今月は全項目でプラスなのが嬉しい。ただし「現状」と比べて水準値の50に近づいていることもあり、上昇率が低下している、特に住宅関連の値がほぼ横ばいなのが気になる。

2000年以降の先行き判断DIの推移
2000年以降の先行き判断DIの推移(赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに昨年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方よりも下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かったことを示している。それ以降は横ばいかほんの少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。昨年10月におきた株安や景気の悪化(「リーマンブラザーズ・ショック」)が、いかに大きなインパクトを、家計や企業の先行き心境に与えたのかが分かる。

今月も先月同様に、値は上昇を見せている。昨年末と比べた上での比較論的な期待の他に、先行きに対する具体的な要素・希望が見えているのが分かる。個別値を見ると、新型インフルエンザ関連で先月の反動を見せた飲食・サービス以外の家計関連の値は上昇率が今ひとつの一方、企業・雇用関連は先月同様に元気が良い。特に製造業はもうすぐ50に達しそうですらある。

また、「現状」同様に上昇・安定時の傾向「雇用指数が全体指数を大きく上回る」、そしてその前提となるクロス・逆転は起きていない。「現状」同様に雇用関連のマインドの改善が、全体的な雰囲気の底上げには欠かせないのだが、それはまだかなっていない。

対策効果実感の声があちこちで
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)に関して事例を挙げてみると、

・来店する客の、販売決定率が向上している。また、エコポイントの影響もあり、高単価商品へ購入商品が変更されている(家電量販店)
・今までは店内に入ってきた客から購買意欲は感じられなかったが、定額給付金の効果があり、今は購買意欲がはっきりと感じられる。また、単価を少し下げることで、客は好感を持って購入している(商店街)。
・新型インフルエンザの影響で、観光客の動きが止まっていたが、ようやく先週から小学生の修学旅行がみられるようになってきた。ただ、それ以外の観光客はまだ減ったままであり、外国人観光客は極端に減っている(一般小売店)
・ランチ弁当の値段がワンコインを切るご時世である。客は賢く飲食店を使い分けて、ランチを含めコストパフォーマンスには特に敏感になっている(一般レストラン)
・銀行による住宅ローンの審査が厳しくなり、新築住宅が減少していることから売上が減少している(住関連専門店)
・商品1点当りの単価が前年より5%程度低下し、売上が前年を下回るようになった。競合する各社ではナショナルブランド商品の特売が増加し、対抗上、当社でも特売商品の売価を下げている。それでも買上点数、客数とも伸びない(スーパー)
など、各種景気対策が消費マインドに影響を与える一方で、中期的な消費者の節約傾向、金融機関の「貸し渋り」「査定厳格化」で頭を痛めている状況がよく分かる。ただ昨年末から年始にかけての絶望感一色の雰囲気ではない。

掲載は略するが企業関連では「在庫調整の一段落」「受注改善」「補正予算などで好調」という言葉が踊る一方、「受注環境が厳しい」など特に下請け・中小企業での苦境が確認できる。雇用関係も下げ止まりをイメージできる表現がちらほら見受けられるが、同時に「回復」では無いため、油断は禁物。さらに一部で「海外生産に切り替え」など、気になる文言も目に留まる。景気後退だけでなく、派遣業そのものへのバッシングが、結果として企業の生産拠点を国外に逃す傾向を後押ししてしまった可能性がある。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
耐久消費財の値上げや雇用喪失など
実体経済への傷も深い。
海外の景気後退も影響し、
外需中心の企業も大きな痛手。
それが内需中心の企業にも波及。
現状は「底打ち感」と
今後への期待から「回復の兆し」。
各種政策が功を奏してきた面も。
前回不況パターンと同じなら
「景気は少々悪め」な状態が
長らく続く可能性もある。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているが、今回の景気悪化が2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復」パターンを踏襲する可能性がある。その場合、全体の指数の底打ちと前後して「大幅な雇用関係指数の下落・他指数とのかい離(かけはなれること)」現象(反動のためのエネルギーの蓄積)が見られると推測される。2008年12月の値が「大幅なかい離」と判断するにはまだ足りないようにも見られるが、元々理論値としての下限(ゼロ)に近い値で起きているだけに、この程度の「かい離」でも反動のエネルギーは十分蓄積されたと考えることもできる。その仮説が正しければ、すでに底値は脱しており、今後もしばらくは横ばい・上昇率の低下を挟みながら、回復基調が続く可能性は高い。

ただし本文中でも指摘しているように、底値における値が前回と比べてかなり低い状態にあることから、たとえこのまま上昇・横ばいの傾向を継続したとしても、DI値が50をやや下回る値で起きる可能性がある(いわゆる「何となく不景気」状態の継続)。先行き指数が50を前に上昇率が低下する傾向があるのが、それを裏付けているようで不安でならない。

今回の不景気は海外要因に寄るところが大きい。つまり日本一国だけではどうにもならない項目が多い。日本国内で景気回復の兆しが見えても、昨年2008年のリーマンズ・ショックのような海外のネガティブサプライズがあれば、すべてを台無しにしてしまう。国内はもちろん、海外の経済動向(直近では特にヨーロッパ、そしてアメリカのいくつかの州財政)にも注目しながら、景気の流れを慎重に見守る必要があるだろう。

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2017 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー