バンダイナムコホールディングスの株主総会出席レポート(2009年6月編)

2009/06/22 16:10

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バンダイナムコホールディングスの株主総会イメージ先日【旧コーエーの株主総会出席の目論みが水泡に帰した件について】でも触れたように、ゲームメーカーの株主総会に出席するため【バンダイナムコHD(7832)】と旧コーエーの株式を両建てして権利確定したところ、コーエー側の総会出席が不可能となり、結局2社分の手数料で1社分しか出席できなかった今回の株主総会出席レポート。去年の【バンダイナムコホールディングスの株主総会出席レポート】に続く形となったから、それはそれで良しとするか、と自分をなぐさめつつ、去年と同じ会場のグランドプリンスホテル新高輪のある東京・品川へと向かう。


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ちょうどほぼ同じ場所で【全日本空輸(9202)】の総会も開かれるあたりも去年と同じ。今年は他に、【三菱自動車(7211)】の総会も確認できた。

品川駅を出たあたりから案内の看板持ちの人もあちこちに。今年もANAと一緒。
品川駅を出たあたりから案内の看板持ちの人もあちこちに。今年もANAと一緒。

入り口には総会会場を知らせる看板も。
入り口には総会会場を知らせる看板も。

入り口の看板には「第4回」の文字が。バンダイやナムコというゲームメーカーそのものは老舗の部類に属するが、バンナムHDという持株会社としては歴史がまだまだ浅い。ある意味、成長過程を見定めているようで、嬉しくもなる(そういうセリフは長期保有してから言うもんだ、と自分でツッコミを入れてみる)。

株主出席票のフォルダーイメージさて会場内部の様子は……というところで去年はストップがかけられたこともあり、今年は最初からデジカメをバッグ内に納める。総会会場内部の様子は個人情報保護法やプライバシーの問題から、たとえプレスであっても一切撮影はお断りであることに変わりは無し。今年も株主出席票のフォルダー(ナムコ・テーマパーク招待券を兼ねる)を撮影して、会場内写真の代わりとする。

議事そのものは昨年同様騒ぎも無く、比較的スムースに進められた。質問に逐一、できるだけ答える形式をとったため、議決案件の議決も含めて2時間ほどかかった。昨年は「エヴァンゲリオン」の葛城ミサト役などで有名な声優の三石琴乃さんが業績報告のビデオアナウンスを担当したが、今年は「機動戦士ガンダム」のララァ・スン役で有名な潘恵子さんが担当。……あるいは、「セーラームーン」つながりなのかもしれない(笑)。

質疑応答の中で気になった、メモに残っていることをまとめると次の通り。

・現行進行年度事業予定では今回の総会決議対象年度と売上がほぼ変わらないものの利益が落ちている。研究投資の額などが増えているせいだが、なぜか?
 →【中期経営計画(今年2月に発表済み、PDF)】に基づいて、これからの3年は地盤固めをするため。

・海外市場に展開するためには統合ブランドがあった方が良い。またそのためには、お色気路線や表現(入浴シーンや下着姿)への対処の検討を。
 →家族で楽しめるアニメの展開も行う。おもちゃやゲームへの波及も考えられる。
  ブランド構築やその際の表現についての問題は考慮する。

・社長の経営哲学をビデオで流すのはどうよ。肉声で聞きたい。
 →今後の参考にする。

・海外に向けた展望としては欧州に特に注力するということだが、南アジアや南米へはどうか。
 →トイホビー部門などでそれらの地域にも展開を予定。南アジアへはシンガポールに支社を新設してコントロールをしやすくした(これまでは香港のみ)。南米へは代理店経由での展開だったが、独自販売網の構築に向けて市場調査中。

・海外の連結子会社が多いのでは? 英語圏なら1社で十分では??
 →事業地域単位で販売の特性が違うため、分割した方がビジネスをやりやすい。とはいえ、業績が上がらなければ経費削減のために統合もありうる。

・深夜アニメを制作放映しているが、すぐに動画投稿サイトに不法にアップロードされてしまう。機会損失の試算や対策は?
 →認識はしている。試算はしていない。対策としては直接サイトに連絡し対処してもらい、場合によっては告訴などの例もある。ただ、共存の方法や、世界同時展開・DVDなどのソフトの販売タイミングの変更などによる対策も考えている。

・アーケードゲームのガンダム系のカードゲームの進捗は。
 →「カードビルダー」は残念な結果に終わりつつある。ただ、もう一種のものとあわせ、次世代に向けたゲームの展開を模索中である。

・障害者の雇用やゲーム環境の整備について。
 →法定雇用数116名に対し110名とわずかに未達。状況改善を模索中。ゲーム機などでの対応も検討課題。

・利益の一部を用いての他社買収の考えは? 中堅どころで良いコンテンツを持っているものの、規模や資金不足で身動きが取れないところは多い。
 →この3年間は中期経営計画に基づき開発先行投資を優先したい。

・連結で有価証券の評価損が大きいが、保有株式の議決権を「有効に」用いて影響力を行使しないのか。例えば角川HDに対して、とか。
 →いわゆる「支配権」に影響を与えるような保有はしない。事業の関連性の強いものは保有し、事業提携などで有効に役立てる。評価損が大きかったのは【不二家(2211)】。これはお菓子関連の事業連動があるから保有している。

・株主優待の会社負担が大きいのでは。長期保有者への優遇、優待権利を1単元から上に引き上げては?
 →多くの人に株主になってもらうのが目的(なので優待権利の単元引き上げの意図はない)。長期保有者への優遇は検討する。

・2015年に向けた中期経営計画について具体的な数字が知りたい。
 →(明確な回答はナシ。概要は上記リンクにあるようにすでに発表済み)

・お台場に建設、公開予定の「等身大の機動戦士ガンダム像」は展示期間後どうするのか。
 →現在のところ未定。ただし、すでに複数の「良い」提案を受けており、現在検討中。詳細はまだ公開せず。

・企業買収のために100億円の借入をしたが、例えばD3は買収に見合うだけの価値を生み出しているのか。
 →D3は今年度9億円ほどの利益上乗せに貢献する予定。相乗効果も期待できる。100億円はD3のためだけにではなく、ヨーロッパの販売網の買収にも使っている。D3は海外とのコネクションも強いので、その方面でも活用できる。

・ゲームメーカー直営のゲームセンターはテーマパークのようなものが多いが、かつてアーケードゲームをたしなんだ人たちは40代前後となり、運営そのものにリスクが生じている。リスクが低い(※と発言者自身が考えている)駄菓子屋系、ゲームカフェ系事業への展開はしないのか。
 →ゲームセンターの設置した場所のニーズに合わせた機材対応(顧客セグメント別の対応)を今年から強化している。ゲームカフェの類は現在試験運用中。

去年と比べれば事業内情に関する質問が多く、総会らしい総会(!?)のようなやりとりだったが、一部株主側の不勉強の部分もあり、思わず突っ込みを入れたくなるような場面もいくつか見受けられた。

一方、バンナム経営陣側も、特に中長期の戦略経営計画である「中期経営計画」について、(先に発表してあるとはいえ)株主総会時には関連資料をほとんど提示していないことが気になった。その中期経営計画においても「2015年からの中期経営計画において営業利益1000億円、海外売上比率50%を実現」という大きな目標、それに伴い2009年4月からの3か年は「成長領域への経営資源の先行投資」「事業の収益性強化」をうたってはいるものの、その説明がきわめて希薄なこと、さらには計画自身についても具体的な数字目標が最低限のものでしかなく具体性に欠け、達成意思が弱いように見える(色々「こういう仕組みをつくる」「このような体制を目指す」とはあるが)のが気になった。

また、発言の端々でも(特にアミューズメント施設系部門において)「頑張る」「努力する」「強く思う」などのニュアンス系表現が繰り返され、「では具体的に何をどうするのか」という回答になっていないのも、頭に疑問符が浮かんだ点ではある。

バイキングのケーキイメージさて、総会が終わったあとの懇親会。パンナムの新製品のお披露目や、バイキングでの食事が提供された。今年は新製品もいくつかお披露目されたが、目が飛び出るような新発表は特にナシ。人気キャラクタ系のプライズものには人気が集まると共に、今年は機動戦士ガンダム生誕30周年ということもあって、ガンダム関係のアイテムにも人だかりが出来ていた。ちなみにバイキングは各種ケーキやカレー、ミートスパ、ミニうな丼、そば、サンドイッチ、クロワッサンなどおなじみのもの。コンスコン隊のリックドムではないが、ミニケーキの類がわずか約20分でほぼ壊滅してしまったのには唖然とさせられた(笑)。

今年は色々と撮影する機会を得られたので、撮影したものを並べてみることにする。

葛城ミサト報道計画。プレステ3のオンラインサービス。各ニュースの区切りの決まり文句(声優直吹き込み)とは比べようも無く、吃音っぽいところも気になるが、正直ここまでよくぞやったものだと感心。こんなニュースなら毎日聴きたいものだ。
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色々なタイプの戦車が操れる通信対戦戦車戦ゲーム「TANK!TANK!TANK」。かつてのナムコの「TOKYO WARS」が思い起こされる。
色々なタイプの戦車が操れる通信対戦戦車戦ゲーム「TANK!TANK!TANK」。かつてのナムコの「TOKYO WARS」が思い起こされる。

「昭和銀座ジオラマ」も。小さい人々がぴょこぴょこ動く。
【かつての銀座を再現した大人向けジオラマ「昭和銀座ジオラマ」バンダイから発売】で紹介した「昭和銀座ジオラマ」も。小さい人々がぴょこぴょこ動く。

プラチナガンダム(左)とお台場にある実物大ガンダムの1/30モデル(右)。プラチナガンダムは田中貴金属ジュエリー製作。いわく「ガンダムの持つ魅力と輝きを永遠に保つことに成功しました」とのこと。
プラチナガンダム(左)とお台場にある実物大ガンダムの1/30モデル(右)。プラチナガンダムは田中貴金属ジュエリー製作。いわく「ガンダムの持つ魅力と輝きを永遠に保つことに成功しました」とのこと。






その他諸々な展示品たち。
その他諸々な展示品たち。

ちなみに今年のお土産は、ガンダム仕様のエコバッグに、RX-78-2「ガンダム」(バージョン ジーサーティース、要は30周年記念版)の1/144スケールHGプラモデル。嬉しい事は嬉しいのだが、組み立ててるヒマは無いなぁ(笑)。



お土産ガンダムイメージ事業内容そのものは財務諸表などを見てもらえばお分かりの通り、事業全体の売上の減少、そして収益率の低下(有価証券評価損やのれん償却費などの特殊な損失含む)もあり、去年と比べてさらに厳しい状況に置かれているといわざるを得ない。景気後退だけでなく事業市場の大きな変化によって、収益構造が揺らぎつつあることも否めない(特にアミューズメント施設や映像コンテンツ系)。今年はまだ機動戦士ガンダム30周年で「ガンダム祭り」があるから良いが、【バンダイナムコのキャラクター別売上】でも指摘しているように、「プリキュア」に続くルーキーの稼ぎ手が登場しないのも問題。

中期経営計画がうまく進捗すれば、「成長領域への経営資源の先行投資」「事業の収益性強化」による成果が見え始めるのが2012年。それまでは「忍」の一文字を貫くしかないということになるのだが、実際のところはどうだろうか。経営陣の尽力ぶりに注目したいところだ。


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