【更新】コンビニ以外の「タスポ導入」の影響をグラフ化してみる

2009/06/17 12:00

たばこイメージ先に【「タスポ効果」が一目瞭然・コンビニエンスストアの商品構成別売上推移をグラフ化してみる】などで記事にしたように、自動販売機でのたばこ購入用成人識別ICカードこと「タスポ(taspo)」の導入で(2008年3月以降順次、同年7月以降は全国で)、カード利用の手間を敬遠した喫煙者が「自販機での購入」から「コンビニでの購入」に移行、結果としてコンビニエンスストアでたばこの売上が上昇し、全体の売上を押し上げている。その記事の掲載後、「それではタスポの導入でコンビニ以外の動向はどうなっているの?」という意見をいただいた。確かにコンビニがたばこの売上で盛況なのはお伝えしてきたが、それ以外のところではまだ取り上げていなかった。良い機会なのでいくつか資料を吟味し、グラフ化してみることにする。

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まずは財務省に提出された、日本たばこ産業が2009年3月に提示した資料【(社)日本たばこ協会等の「成人識別機能付たばこ自動販売機」全国導入について(PDF)】から。ここには四半期単位で、タスポ導入前後のたばこ販売実績と前年同期比などのデータが掲載されている。

タスポ導入後のたばこ販売実績
タスポ導入後のたばこ販売実績

タスポ導入後の7-9月期以降、販売数が減少しているが、元資料にもあるように経済状況悪化などの他要因もあり、タスポによる影響度合いは不明。

続いて日本自動販売機工業会が公開している、2008年度の各自販機のデータ。【2008年末自販機普及台数及び年間自販金額】から、たばこ自販機やその他の自販機のデータを元に、グラフ化したのが次の図。

2008年末自販機普及台数及び年間自販金額(前年比)
2008年末自販機普及台数及び年間自販金額(前年比)

「年間販売金額」とは自動販売機本体そのものの売買額ではなく、自動販売機が提供しているサービス・商品の売買代金。これを見ると、たばこ自動販売機の台数が2割近くも減り、販売金額はほぼ半減という状況にあることが確認できる。これについて日本自動販売機工業会側では

・台数……タスポに対応できない古い機種の撤去、コンビニとの競合による売上低下(の結果による撤去)
・販売金額……たばこ自販機はタスポへの不慣れに伴う自販機利用頻度の低下。飲料機分野ではたばこ自販機利用時の「ついで買い」が減った

などと説明している。また、経済状況の悪化に伴うマイナス分を考慮するため、たばこ自販機と、連鎖反応によるマイナスが生じている飲料自販機「以外」の自販機(=タスポの影響はない)の販売金額と減少率を平均化して「景気後退によるマイナス分」を算出し、それをデータ上のたばこ自販機の販売金額減少分に反映させると、「約48%がタスポ導入に伴うたばこ自販機での販売金額減少分」と見ることができる。ほぼ半減、という状況に変わりは無い(逆にいえば、タスポ導入のような「イベント」さえ無ければ、景気後退時期にも自販機ビジネスは手堅いことを証明しているわけでもあるが)。

興味深いのは、自販機の協会側でも「たばこ購入の際のついで買い」効果があることを(マイナスの面で、だが)認めていること。実際、飲料自販機の台数はマイナス1.9%に留まっているのに対し、販売金額はマイナス10.6%に達している。大きな影響があったと見て良いだろう。当サイトの独自調査【「コンビニでたばこを買う時、ついでに何を買う!?」をグラフ化してみる(最終結果)】でも、たばこ「だけ」を買う人が半数を占めていたが、3割強の人が「飲み物を一緒に買う」と答えており、今回のデータはたばこと一緒の「ついで買い」が少なからぬ影響力を持つことを改めて証明した形だ。

最後に日本たばこ協会が発表している、紙巻きたばこの販売実績。こちらは2008年4月以降月次のデータが用意してあったので([該当ページ])、それをグラフ化する。

紙巻きたばこ販売実績(代金・前年同月比)(点線は3区間平均移動線)
紙巻きたばこ販売実績(代金・前年同月比)(点線は3区間平均移動線)

2008年8月に前年同月比で大きな減少を見せているが、前後の月にもこの程度の動きは頻発している。また移動平均線を見ると、導入の7-8月以降は水準が少し下がっているようにもみえる。

1996年度以降のたばこ販売数量・売買代金
1996年度以降のたばこ販売数量・売買代金([日本たばこ協会]より)

だが、上記のグラフからも分かるように、この10年強の間、販売数量・販売代金共に漸減する傾向を見せている。健康志向などが要因だと思われるが、ともあれこの短期間だけで「タスポの導入がタバコ”全体”の売上を押し下げた」と断じることは出来ない。少なくとも1、2年は販売動向を見守る必要があるだろう。



今件をまとめると、

・タスポ導入でたばこ自販機の販売業績はほぼ半減
・「ついで買い」の減少で飲料自販機の業績も数%のマイナス影響
・たばこの販売数全体への影響は不明(劇的な変移は見られない)
 (自販機減少分をコンビニがほぼ吸収した?)

のような形になる。

たばこ自販機イメージかつては非常に手堅いビジネスの代表格として名前が挙げられていた「たばこの自販機」だが、タスポの導入で言葉通り「1年間で売上が半減」してしまっている。自販機の数そのものの減少を差し引いても、「売上は激減」と表現して良い。[読売新聞の記事(タスポで自販機売り上げ半減、たばこ屋の廃業進む)]などにもあるように、未成年者の喫煙防止を目的として導入されたタスポが、たばこの小売における構造を大きく変えてしまったことは間違いない。

一方、タスポ導入がたばこ業界全体の販売実績にどのような影響を与えた・与えているのか。現時点では明確な答えは出ていない。繰り返しになるが、元々たばこの販売は減少傾向にあり、タスポによるものか否かが判断できないからだ。さらに現在タスポの推定普及率は、喫煙者に対して3割強とされている。これらのことを考えると、普及率がもう少し高まり、時間を置いた上で、販売数全体に対する影響を推し量るべきである。

もっとも仮に、たばこの販売総数がタスポ導入によって減少したとして、それをどう判断すべきなのかはまた別の問題といえる。その時になって、改めて考察する必要があるだろう。

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