進む二極化・境界線は「20万円・70平方メートル」-東京23区内の賃貸住宅家賃事情

2009/06/13 17:40

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賃貸物件イメージアトラクターズ・ラボは2009年6月12日、東京23区の賃貸住宅における賃料改定状況調査の最新データ結果を発表した。それによると東京23区における賃貸住宅では、総計で20万円未満の物件はほぼ家賃改定時においても変更額がゼロに等しい(実質プラス)が、20万円を超える高級賃貸物件になると家賃改定の際に家賃を下げる傾向が見えてくることが明らかになった。三か月前の前回調査(【20万円・70平方メートルが境界線! 東京23区内の賃貸住宅家賃の変化は二極化へ】)と比較しても二極化の度合いは拡大しており、ますます「高級賃貸住宅離れ」が進行している様子がうかがえる(【発表リリース】)。


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今調査はアトラクターズ・ラボの賃貸住宅データベースを用いて集計したもので、対象期間は2009年1月-3月期のもの、対象データは東京23区内。同一住戸における前回募集賃料(入居・退去を経たもの)と今回募集賃料とを比較している。例えば同額だった場合、値は0%となる。前回・今回募集時期の平均期間は約2年、サンプル数は2万4737戸。

調査結果では「賃料帯別」「面積帯別」「賃料帯別における都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)と他区地域比較」それぞれについてデータが公開されている。それらをまとめると、次の通り。

東京23区全体・賃料帯別賃料改定率
東京23区全体・賃料帯別賃料改定率

東京23区全体・面積帯別賃料改定率
東京23区全体・面積帯別賃料改定率

・家賃価格帯では20万円未満は安定。年数経過による劣化を考慮すると実質的にプラス。一方でそれ以上は高額ほど値引率も高くなる。
・面積帯では70平方メートル未満は安定、それ以上は広面積ほど値引率も高くなる。
・三か月前と比較すると、高家賃・広面積の賃貸物件に対する値引率の幅が拡大する傾向にある。

つまり空き室率を別にすれば、昨今の不動産市場の急落の中でも、「20万円未満・70平方メートル未満」の(比較的に)一般家庭層向けの賃貸住宅物件では、さほど相場に変わりは無いことが確認できる。逆に、高級志向の物件は賃貸価格が高いほど値引率も高くなり、これが市場全体の下落における主要因であることが分かる。もちろん売買用の売買不動産物件の下落と比べれば、賃貸物件の下落率はまだまだ低レベルのものだが。

・一般賃貸住宅の
需給バランスは維持
・高額賃貸住宅は
需要が減り、値下げを
余儀なくされている
今データには空き室率は配慮されていないが、基本的には希望入居者が集まらないから賃貸料を下げる・入居者が集まる可能性が高いので家賃を据え置くという「市場原理」を考えれば、いわゆる「安定層」における空き室率は低く、「高額層」では高めであることが容易に想像できる。言い換えれば、普通に居住する賃貸物件は不動産プチバブルの崩壊・景気後退以前から変わらずにそれなりの需給バランスが維持されているが、ぜいたく志向の強い高額賃貸物件では景気後退のあおりを受け、需要が減退(住居へのぜいたくを減らさざるを得なくなった)ものと考えられる。

さらに注目すべきは三か月前の前回データと比べ、「高家賃・広面積」の下落層の下落率が加速度的な様相を見せているということ。この層の賃貸住宅市場で供給過多・需要減少の傾向が継続・悪化している可能性がある。

「高価な物件は避け、ほどよい広さ・家賃のものを選び、居住することを第一に考える」という不動産の選択意識は国内外で浸透しつつある。アメリカにおいては【「広さ」から「機能美」へ-景気後退と共に変わるアメリカ住宅事情】で言及しているが、不必要なほどの広さの不動産物件に対するニーズが減少の傾向を見せている。国内でも例えば【タカラレーベン(8897)】の比較的安価な売買物件が(この不動産不況の中で)一週間を待たずに完売を見せている(【発表リリース、PDF】)。

どうやら不動産市場は賃貸も売買も、かつてのプチバブルの主役だった「転売目的の高価な物件」「ハイソ向けの高額物件」ではなく、「適正価格・適性規模の住居物件」を中心に動きを見せつつあるようだ。


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