新型インフルエンザへの不安…2009年5月景気動向指数は5か月連続の上昇、先行きも5か月連続の上昇

2009/06/09 05:06

内閣府は2009年6月8日、2009年5月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はないものの、現状・先行き共に五か月連続しての上昇傾向を見せた。基調判断は先月同様にやや厳しい表現「景気の現状は厳しいものの、悪化に歯止めがかかりつつある」であり、底打ち感をにおわせるような雰囲気が感じられる(【発表ページ】)。

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在庫調整が進み、期待が高まり各数字は上昇へ
文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値についてはまとめのページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】にて解説している。そちらで確認のこと。

2009年5月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス2.5ポイントの36.7。
 →5か月連続上昇。「悪化」判断が減り、「変わらない」が増えた。「やや良くなっている」も微増。
 →家計においては新型インフルエンザの影響で旅行や飲食関連にマイナス影響があったものの、環境対応車両への補助、エコポイント、定額給付金、高速道路料金引き下げに対する需要増が幸いして、上昇。企業においては受注や出荷の下げ止まり感から上昇。雇用でも離職者増加数のペースがゆるやかになってきたことなどから上昇している。
・先行き判断DIは先月比プラス3.6ポイントの43.3。
 →5か月連続してのプラス。
 →雇用の先行きや新型インフルエンザ、夏のボーナス減少見込みに対する不安が続く。定額給付金、各種特別減税、高速道路料金の値下げに対する期待などがプラスに。企業の思惑も在庫調整の進展・受注の下げ止まりや持ち直しへの期待で好判断。
先行き指数は全項目で40を突破
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
景気の現状判断DI

お先真っ暗感で世の中が支配されたような2008年12月-2009年1月の時期と比べると、「底は見えた」的な実感があるためか、期待感が高まり、多くの項目でプラスを見せている。特に雇用関連の値が30を回復したのは注目に値する。一方で新型インフルエンザの騒ぎがきっかけで、飲食関連とサービス関連がマイナスを示している。これは突発的イベントによるものだから、仕方ないといえよう。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

「ITバブル崩壊後の不景気時期にあたる2001年-2003年(日経平均株価が7000円台を記録)の時期の水準に近い状態が続いている」とは2008年後半以降同年年末までの下落基調における傾向。いわゆる「リーマンズ・ショック」をきっかけに、その限界ラインを底抜けし、2008年12月では大底の状態となった。「もしかすると1桁、あるいはゼロに限りなく近づくのでは」という懸念もあったが、2009年1月には横ばい、多少の上昇を見せ、2月以降は上昇機運を見せている。今月の上昇幅は先月4月よりさらに伸び率が低く、回復感の足踏みが懸念されるものの、上昇していることに違いはない。

・下落傾向から反転へ
・「雇用と全体の下落逆転」は
いまだに継続中。
・合計のDIは現状においては
02-03年の不景気時代の最悪期よりは
回復へ。
ここ一、二年の下落が「前回(2001年-2002年)の急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にぶれがあったのに対し、今回は一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったこと、それが「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」ことを表していることは、これまでに説明した通り。連鎖反応的に襲い掛かった「サブプライムローンショック」「8.17.ショック」と呼ばれるサブプライムローン問題関連、資源高、さらには「リーマンブラザーズショック」などのマイナス要素(いわゆる金融工学危機)が怒とうのごとく押し寄せたのが主な原因。

今月も含めたここ数か月の上昇ぶりは、2001年後半以降の大底からの反転を複写しているかのようにすら見える。だとすれば、このパターンを踏襲した場合、直近の天井で「雇用関連指数」と「合計全体指数」のクロスが発生し、そこから再びしばらく(過去なら2002年半ば)は軟調さが続き、もみ合いながら景気の復調が見られることになる。もっとも、今回は下落幅がかなり大きかったこともあり、復調しても以前のパターンより低い水準のまま、つまり「やや不景気」のまま横ばいの値を見せる可能性も否定できない。

景気の先行き判断DIについても、先月と比べて上昇した。

景気の先行き判断DI
景気の先行き判断DI

「現状」と違い、ほぼ全項目でプラスを見せている。新型インフルエンザの影響もあり、飲食関連はプラスマイナスゼロではあるが、マイナスではない。また、雇用関連の伸びが顕著で、すべての値が40台まで回復しており、かなり良い状況になったといえる。

2000年以降の先行き判断DIの推移
2000年以降の先行き判断DIの推移(赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに昨年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方よりも下の値に達していた。それ以降はやや横ばいかほんの少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。昨年10月におきた株安や景気の悪化(「リーマンブラザーズ・ショック」)が、いかに大きなインパクトを、家計や企業の先行きの心境にも与えたのかが分かる。

今月も先月に続き、値は上昇を見せている。もっとも悪い状況よりはマシという比較論的な期待の他に、先行きに対する具体的な要素・希望が見えてきたのが分かる(現状よりも未来への期待感が高まるのは良い傾向)。個別値を見ると、家計関連の値は先月よりも伸び率が低迷し、企業・雇用関連は勢いを増している。このペースでいけば、あと半年も待たずに「50」を回復しそうな気すらしてくる。

また、「現状」同様に上昇・安定時の傾向「雇用指数が全体指数を大きく上回る」、そしてその前提となるクロス・逆転は(ぎりぎりだが)起きていない。「現状」同様に雇用関連のマインドの改善が、全体的な雰囲気の底上げには欠かせないようだ。

明るい意見も随所で
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)に関して事例を挙げてみると、

・定額給付金の給付開始とそれにあわせて発売されたプレミアム付き商品券に加えて、省エネ家電のエコポイント制度の開始など、家電業界への追い風が強まっていることから、
売上が顕著に伸びている(家電量販店)
・ゴールデンウィークは曜日配列もよく、久しぶりに例年並みの集客ができた。また土日が5回あったほか、週末は高速道路料金引下げ効果もあり、県外の個人客で平日の売上減少を穴埋めしている(高級レストラン)
・新型インフルエンザの影響で、マスクやアルコール消毒液、うがい薬などが前年比で異常なほど動いており、備蓄用の食料品も好調に推移している。一方で、外出を控える人が増えたため、衣料品の売上が落ち込んでいる(スーパー)
・売上が前年比10%減で推移していたが、下旬になり予想以上に新型インフルエンザの影響を受けている。影響が一番少なかったのは路面店舗だが、ターミナル型店舗や郊外ショッピングセンターでは売上が20-30%減となっている(一般小売店)
・新型インフルエンザの影響で関西方面の修学・観光旅行、出張のキャンセルが続出した。関西以外でもスポーツ観戦や観劇などの団体予約が中止となった(旅行代理店)
・最も室料単価の高いゴールデンウィーク期間中の売上は前年比で10%増と好調であったが、新型インフルエンザによる修学旅行のキャンセルがあり、後半は伸びず、総売上においても85%と大幅に減少している(観光型ホテル)。
など、各種景気対策が少しずつではあるが消費マインドに影響を与える一方で、新型インフルエンザに振り回されている状況がよく分かる(言葉通り「悲喜交々」)。

掲載は略するが企業関連では住宅、資材関係で状況の低迷が続いているものの、一部製造業者では下降傾向が止まり、横ばい、あるいは一部上昇の動きも見えている。さらに生産調整がひと段落ついたと受け止められる意見も見受けられる。雇用関連も低迷は続くものの「さらなる急落」への不安は減り、落ち着きを見せ始めている面もある。総じて昨年末の「全部ダメ」ではなく、まだら模様で「止まったかな?」「上向きになりつつあるかな?」の領域が見えてきたような感じだ。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
耐久消費財の値上げや雇用喪失など
実体経済への傷も深い。
海外の景気後退もあり、
外需中心の企業にも影響は大きく、
それが内需中心の企業にも影響を。
現状は「底打ち感」と
今後への期待から「回復の兆し」の
心境が高まりを見せている。
前回不況パターンと同じなら
「景気は少々悪め」な状態が続く
可能性も否定できない。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているが、今回の景気悪化が2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復」パターンを踏襲するのなら、全体の指数の底打ちと前後して「大幅な雇用関係指数の下落・他指数とのかい離(かけはなれること)」現象(反動のためのエネルギーの蓄積)が見られると推測される。2008年12月のデータが「大幅なかい離」と表現するにはまだ足りない感もあるが、元々理論値としての下限に近い値で起きているだけに、このくらいのかい離でも反動のエネルギーは十分たまったと考えることもできる。だとすれば、すでに底値は脱しており、今後もしばらくは横ばい・上昇率の低下を挟みながら、回復基調が続く可能性は高い。

ただし本文中でも指摘しているように、底値における値が前回と比べてかなり低い状態にあることから、たとえこのまま上昇・横ばいの傾向を見せたとしても、DI値が50をやや下回る値で起きる可能性がある(いわゆる「何となく不景気」状態の継続)。あまりにも深手を負ってしまったため、傷が回復しても体力や筋肉がなかなか元に戻らないという例えが分かりやすいだろうか。そうでないとしても、DI値が水準の50に戻るまでには前回以上に長い期間を要することだろう(先行き指数は結構健闘しているので、その不安も薄らいできたが)。

今回の不景気は海外要因に寄るところが大きい。日本一国だけではどうにもならない項目が多い。日本国内で景気回復の兆しが見えても、昨年2008年のリーマンズ・ショックのように海外の出来事がすべてを台無しにしてしまうかもしれない。国内はもちろん、海外の経済動向(直近では特にヨーロッパ)にも注目しながら、景気の流れを慎重に見守る必要があるだろう。

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