電通の2009年5月の売上高
2009/06/06 10:48


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まずは業務別の売上前年同月比。テレビの額が全体の半数程度を占めていることなど、絶対額の状況に前月から大きな変化はなく(逆に言えば「少しずつ」変異を見せつつある)、むしろ季節変動などをも考慮できる前年同月比の方が状況の変化はわかりやすい。

電通2009年5月度単体売上高(前年同月比)
・「OOHメディア」とは「Out of Homeメディア」のことで、交通広告や屋外広告などのこと
・「インタラクティブメディア」とはインターネットやモバイル関連メディアを意味する(要は「インターネット」)
・「クリエーティブ」とは制作部門によって考案、計画、制作された(独自)コンテンツのこと
・「その他」には衛星その他のメディア、メディアプランニング、スポーツ、エンタテインメント、その他コンテンツの業務を意味する
区別がしやすいよう、全体(全支社をあわせた「全社」)を緑、4大既存メディアを赤で着色してみた。4大既存メディアのうち紙媒体の「新聞」「雑誌」が特に不調なのは昨今の傾向から変わるところがないが、特に「雑誌」が前年同月比で4割近くも落ち込んでいるのが目立つ(これが冒頭の「少々気になる値を出した項目」)。「4割減」で28.34億円を記録しており、逆算すると昨年同月は45.71億円。差し引き17.37億円の売上減という計算になる。「38.0%減」という割合同様に「17億円強の売上減」という実額の減少も、インパクトとしては非常に大きい。幸い、額そのものは巨大なテレビが13.9%減に留まっており、500億円近い売上を上げているのが救われる(とはいえ、前年同月比のテレビ売上の減少額は80億円を超しているのだが)。
その一方、ここ数年成長が著しいインタラクティブメディアは、なんとか前年同月比でプラスを維持。ただし額そのものは18.52億円と、雑誌の減少分を売上全体でまかなえる程度。また、先月4月ではそれなりに健闘していた、4大既存メディア以外のオーソドックスな分野も大きな落ち込みを見せている。
全体の中長期的な動向は冒頭でも触れたように、業界全体の流れを見るために経済産業省のデータを追っていく。今回は電通内の、ということで四大既存メディアのみのをグラフ化した。

電通の過去1年間+αにおける業務別売上高前年同月比推移(全社及び四大既存メディアのみ)
先月のグラフから、「雑誌」の折れ線グラフの色を変えて実線化し、わかりやすいようにしてみた。今月に限らず「雑誌」「新聞」という2大紙媒体の落ち込みが経常的におきていること、「新聞」「雑誌」の下げは顕著で、2008年後半から加速度的な下落を見せていることが確認できる。この値は「前年同月比」だから、月ごとの特性は考慮した上でのもの。それで1年で3割強の減少という値は、驚愕レベルどころではない。
特に今月「雑誌」が4割減に達したことは、腰が抜けるほど(底が抜ける、でもある)、と表現しても良い。「電通特有の失策では?」という仮定もできるが、【4大既存メディア広告とインターネット広告の推移】の業界全体における最新データでも「雑誌」の下げ幅は大きな値を示しており、これが「電通のみの特例」でないことが確認できる。
年度替りの4月だけでなく、5月においても継続的に、しかもさらに加速する形で広告費、特に4大既存メディア、中でも紙媒体の「雑誌」「新聞」に対する圧迫が強まっている。これは先日【日本テレビのタイム・スポット広告の変化】で記事化した、(紙媒体ではないが)日本テレビの広告費の動向でも同様の傾向を見せている。景気動向が表面的にはやや落ち着きを見せ始め、それを反映する形で株価もいくぶん持ち直しを見せているにも関わらず、広告費の減少に歯止めがかからない状況は何を示しているのか。
一つには「実体経済はまだまだ厳しい状態のままで、各企業も引き締めを継続し、さらに強める姿勢を見せている」。もう一つは「ROI(費用対効果)を見極めて、効果の低い媒体への配分を減らしている」。この2つが理由として考えられる。
既存媒体の広告効果は低いと認定?
とはいえ、4月以降の広告費低迷は、【10余年間における4大メディアへの広告費の業種別動向】などで指摘している、2005年以降GDPの成長率と広告費、特に4大メディア向けの出費は連動しない傾向の継続性を意味する。このままの状況が続けば、関連各社・業界は(売上の減少に対応するため)大規模な変革を迫られるに違いない。
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