日本と諸外国の家計における金融資産の構成比率を比較してみる

2009/06/03 15:00

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財産の各国比較イメージ先日【株式市場雑感(09/06/02)】でも触れたのだが、ファストフードの来訪客の年齢階層比を調べている。【携帯ゲーム機、どこで遊ぶ? 自宅や友だちの家、そして……】でコメントした「ファストフード店が子どもたちの社交場になりつつある」を裏付けるためのものだが、いまだ現在においてもそのデータは見つかっていない。しかしそれを調べる過程で、色々と面白いデータを見つけることができた。今回はそのデータの中から、「日本と諸外国における家計の金融資産の項目別構成比率」についてグラフ化することにする。


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元データは【社団法人日本経済調査協議会】が2008年3月13日に発表した「人口減少時代の企業経営」。内容そのものも興味深い言及が多数なされているが、その中で「本論III-2(PDF)」における「金融市場の国際的位置づけとグローバル市場への展開」から。大元のデータはOECD発の「National Accounts」で、家計と対家計民間非営利団体の合計ベースの2004年データを元にしている。要は諸外国と日本の家計の金融資産の構成比率を比較し、日本の金融資産の構成の問題点を探ろう、という話なわけだ。

家計金融資産構成の国際比較(2004年・OECDデータより)
家計金融資産構成の国際比較(2004年・OECDデータより)

ぱっと見で分かるように、そして世間一般に言われている話の通り、日本は「現金・預金」などの低リスク・低リターンな金融資産の比率が極めて高い(。そして「保険・年金」の割合も低い)。一方、諸外国の特徴を見ると、

・アメリカ……株式や投資信託の割合が高い
・イギリス……保険、年金の割合が高い
・ドイツ……債券の割合が高く、投資信託や株式などとのバランスが良い
・フランス……株式の比率が高め

などの特徴が見られる。株式関連に高い配分をしているアメリカ、質実剛健的なドイツなど、各国の性質が非常によく出ている。

元資料ではこのデータを元に「預貯金が多いということは、家計の余剰資金が銀行を経由しないと企業にいきわたらない(。つまり間接金融が非常に大きなウエイトを占めている)。高度経済成長期にはこのバランスで問題無いが、経済成長が鈍化し停滞すると、支障をきたしてくる」と説明している。

結論から言えば経済全体の流れとしてはまさにその通りで、昨今の「貸し渋り・貸しはがし」という言い回しに象徴される、銀行の間接金融の中核としての立ち位置の忘却と、それに伴う「経済全体の血流たるお金の流れの枯渇」は、「家計の資金の多くが銀行からでないと企業に向かわない」という状況によるもの。

しかしその一方、視点を変えて各家計ベースで見れば、「直接的には」昨今の金融(工学)危機で、もっとも被害が少なくて済んだのは日本であり、その原因は独特の金融資産構成比によるものといえる。この数年でいちじるしく評価価値が下落した投資信託や株式の比率が一番低く、表面的には変化の無い現金・預金の比率が一番高いのも日本であるからだ。これは結果論でしか無いが、日本はきわめてラッキーだった(不幸中の幸いだった)といえよう。



財産の再構築イメージ今回登場した五か国の中ではもっとも現金・預金率の低いアメリカだが、【アメリカの家庭内おサイフ事情(改定・増補版)】にもあるように、少しずつではあるが確実に預貯金額推移は増加する傾向にある。今回のデータが計測された2004年と、「アメリカの家庭内おサイフ事情」に掲載されている最新のデータ2008年第3四半期の間には、概算で1.5-1.6倍ほど預貯金額が増えている。単純に今回のグラフの「12.9%」に1.5倍がそのまま乗ぜられることはない(他の金融資産も変化しているため)が、確実に増加していることは間違いない。

どのくらいの割合がより良いのかは、各国の民族性や法整備の問題(例えば免税や税金軽減措置など)、そして受け入れ側の金融市場の姿勢など、多種多様な要素があり、一概にベストなものを提示することは難しい。しかし日本においては、アメリカのように極端なほど株式に配分しろ、とはいわないが、もう少し(比較的リスクが低い)債券や投資信託などに割り振りをしてもいいのではないか、という気もしてならない。


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