テレビ各局の節約度をグラフ化してみる

2009/05/26 05:00

テレビイメージ先に【主要テレビ局銘柄の期末決算をグラフ化してみる】で民放テレビ放送のキー局5局について決算短信資料をざっと眺めみたわけだが、何点か気がかりなところがあった。その一つが各局の本業のリストラ・節約度。例えば【テレビ東京(9411)】の場合、中間決算と比べて本業の利益を示す営業利益の点では改善が見られたが、これは経費削減効果に他ならない。そこで今回は、各局の連結決算における財務諸表中、損益計算書の上記部分、「売上高」から「営業利益」にいたる部分を簡略化し、各局で比較してみることにした。いわば【朝日新聞の決算短信から「おサイフ事情」をチェックしてみる】でチェックを入れた朝日新聞の損益計算書の「①」の部分を各テレビ局でやってみようという試みだ。

スポンサードリンク


まずは【日本テレビ放送網(9404)】

日本テレビ・損益計算書中営業利益までの各値前年比
日本テレビ・損益計算書中営業利益までの各値前年比

お金の流れをざっと説明しておくと、本業の売上は「売上高」。ここから売上に必要な商品の費用が「売上原価」として差し引かれ、「売上純利益」が計算される。そして、そこから総務や経理、役員など間接部門における人件費などの「販管費」が引かれ、「営業利益」が計算される。つまり、

「売上純利益」=「売上高」-「売上原価」
「営業利益」=「売上純利益」-「販管費」
      =「売上高」-(「売上原価」+「販管費」)

となるわけだ。

日本テレビの場合、「売上原価」の下げ幅が「売上高」より小さいので、生産コストの節減がうまく行っていない。「販管費」は「売上高」以上に削られているので、こちらはある程度節約がうまく行われている。結論としては「×△」という程度か。

続いて【TBS(東京放送ホールディングス)(9401)】

TBS・損益計算書中営業利益までの各値前年比
TBS・損益計算書中営業利益までの各値前年比

「売上高」が伸びているのに、「売上原価」はそれ以下に抑えられている。つまり、原価を抑えてそれ以上に売上を伸ばすことに成功している。これが功を奏して「売上純利益」も堅調。しかし「販管費」がそれ以上の伸びをたたき出してしまっているため、結局「営業利益」は前年比マイナス。決算短信を見ると、代理店手数料は減少しているものの、人件費・広告宣伝費・業務委託費などが大幅に増加しているのが確認できる。色々な事業体の子会社を傘下におさめたため、かかる費用も増加してしまったというところか。結論としては「○×」。

【フジメディアHD(4676)】

TフジメディアHD・損益計算書中営業利益までの各値前年比
フジメディアHD・損益計算書中営業利益までの各値前年比

「売上高」に対して「売上原価」の下がり方がやや少なめ。そのため、「売上純利益」の下げ幅が拡大している。そしてなによりも「販管費」がほとんど削減できていないため、「営業利益」が大幅に減少していることが分かる。決算短信で詳細を見ると、代理店手数料や宣伝広告費などは減少しているものの、人件費が前年235億5400万円に対して今期は280億6700万円と19.2%も増加している。連結子会社の増加によるものだが、それらが足を引っ張るだけの存在になっていることが分かる。結論としては「▲×」。

【テレビ朝日(9409)】はどうだろうか。

テレビ朝日・損益計算書中営業利益までの各値前年比
テレビ朝日・損益計算書中営業利益までの各値前年比

「売上高」の減少は最小限に抑えられたものの、「売上原価」は逆に増えてしまっている。「販管費」を大きく抑えたのは評価できるが、やはり「売上原価」の上昇が痛手となり、「営業利益」は大幅減を示している。結論としては「×○」。

最後に【テレビ東京(9411)】

テレビ東京・損益計算書中営業利益までの各値前年比
テレビ東京・損益計算書中営業利益までの各値前年比

「売上高」が落ちているのに「売上原価」が上昇している構造はテレビ朝日と同じ。これがダメージとなり「売上純利益」が大きくマイナスに。「販管費」の削減に成功してやや痛手を回復したところだが、起死回生とまではいたらず「営業利益」を大きく減じてしまっている。結論としては「×○」。



以上5局をチェックしたが、いずれの局においても売上のおおもとの費用となる「売上原価」と、間接費の「販管費」双方において、「売上高」以上の改善(削減)を満たしているところは無かった。特に「売上原価」は削減できない固定費の部分が多く、なかなか削れないという事情もあるが、費用の面からだけで見れば効率が悪くなっているのも事実である。

例えるなら、1つ100円のおにぎりを1日1000個創れる生産ラインで、1日10個しかおにぎりを作っていなくてもかかる経費はほとんど変わらないというところ。この例の場合、

・1000個作っている時……売上原価は9万円
  施設の維持費1万円、人件費5万円、材料費3万円(1つ分30円×1000個分)
・10個作っている時……売上原価は6万0300円
  施設の維持費1万円、人件費5万円、材料費300円(1つ分30円×10個分)

となる。

「売上原価」が減っている局は現場や下請けの士気と技術低下が気になるし、「販管費」の減少が大きいところは現場コントロールの不十分さや戦略面でのミスジャッジ・士気低下が懸念される。そして双方とも「適切な箇所」のカットを果たさないと、質そのものが低下する可能性がある(歯医者に行って虫歯でない歯を削られても、痛い目に合うだけで歯痛の状況は改善されない)。

売上高の回復がここしばらくは見込めない以上、今後どのような戦略・経費の適正化策を各局がとっていくかが気になるところだ。

余談になるが、唯一「売上高」を前年比プラスにさせたTBSについて。「販管費」が「売上高」以上に大きくなっているのが気になる。「売上高」の額自身が大きいので現状ではさほど気にならないほどの利益(額)を上げることに成功しているが、一度収益バランスが崩れると調整は他局以上に難しくなる。不動産事業の成功で他局からうらやましがられているであろうTBSだが、あるいはこれがウイークポイントになりうるのかもしれない。

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2017 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー