個別業績では最終赤字・TBSテレビの連結決算をグラフ化してみる

2009/05/14 06:43

TBSイメージ【TBS(東京放送ホールディングス)(9401)】は2009年5月13日、2009年3月期の連結決算を発表した。売上は前年比で2割近く増えたものの、営業・経常利益共に1割強の減少、最終損益は大きく減少し、16億5500万円の黒字に留まった。主軸となるTBSテレビ本体の個別経営成績では売上高は+0.5%とかろうじてプラスを維持したものの、最終損益は38億0100万円の赤字。赤字は1951年の開局以来初のことで、テレビ放送事業が業績的に厳しいことを示している。今回は先の【開局以来初の最終赤字となったテレビ朝日の連結決算をグラフ化してみる】同様に、「連結決算」についてポイントを絞ってグラフ化し、チェックを入れてみることにする。【決算短信そのものはこちら(PDF)】

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売上増えても利益は減少
まずは決算短信から主な経営指標を前年度比でグラフ化したのが次の図。

連結経営成績の前年度比
連結経営成績の前年度比

売上そのものはむしろ増加、営業利益は減少幅を縮めているものの、経常利益・純利益が大きく減っていることが確認できる。これはTBS全体として事業の収益性が悪化したことを意味している。儲けの効率を示す一つの指標、「売上高営業利益率」(営業利益を売上高で割ったもので、売上の何%が本業の稼ぎにつながるかを意味する)を計算すると、2008年3月期は6.5%、2009年3月期には5.0%で、先のテレビ朝日と比べるとまだ健全な値だが、決して良い数字とはいえない。

なお以前のテレビ朝日の決算関連記事で指摘があったが、テレビ事業の営業利益率がさほど高くないのは、関連地方局に放送料の支払いがあるため。ある意味構造的な低収益ともいえる。

テレビ放送事業がメインなのか、それとも……
TBSでは本業の事業を4つに区分している。すなわち

・放送事業……テレビ・ラジオの放送事業及び関連事業
・映像、文化事業……各種催物、ビデオソフト等の企画・制作、野球興行、雑貨小売、通信販売、化粧品製造販売、外食・洋菓子製造販売など
・不動産事業……土地及び建物の賃貸など
・その他事業……調査、研究など

である。それぞれについて2009年3月期と2008年3月期の営業利益をグラフ化したのが次の図。

セグメント別営業利益(億円)
セグメント別営業利益(億円)

他のセグメントでは利益を積み増ししているにも関わらず、本業のテレビ放送で思いっきり足を引っ張っているのが分かる。特に不動産事業の伸びが著しいが、これは【TBSの利益構造をもう少し詳しく調べてみる】で解説しているように、「赤坂サカス」が貢献したもの。ちなみにそれぞれのセグメントにおける費用をグラフ化するとこのような形になる。

セグメント別営業費用(億円)
セグメント別営業費用(億円)

「放送事業」では動きがほとんどないが、「映像・文化事業」と「不動産事業」では大きな増加が確認できる。これと直上の利益を比較して分かることは、後者2つが「物理的な商品を売って利益を得る」タイプのビジネス(商品を売れば売るほど費用もかかるが利益が増える)なのに対し、「放送事業」が物理的な物品を売るのではなく、広告展開の権利など「見えないもの」を売るビジネスであり、「商品が売れようが売れまいがある程度の費用が発生する」ビジネスモデルであること。「放送事業」では広告枠が1本も売れなくとも同程度の費用は発生する。広告が入りそうにないから番組は作りません・放送しませんというわけにもいかない。

広告枠の販売がうまくいけば、同程度の費用で大きな売上が見込め、利益もグンと跳ね上がる。しかし昨今のように広告に対する人気の雲行きが怪しくなると、売上が上がっても上がらなくとも放送事業は費用がかさむため、いわゆる「金食い虫」となりかねない、ということになる。


経営成績悪化の原因は2点「スポット広告の減少」「有価証券評価損」
決算短信にも明記されているが、今回TBSの業績が大きく減少した原因は、テレビ朝日同様に「スポット広告の減少」と「有価証券評価損」にある。

まずは「スポット広告の減少」について。「スポット広告」については【テレビ局からスポット広告を減らした業種を調べてみる(2009年3月期第2四半期編)】で詳しく解説しているが、要は「特定番組のスポンサーではなく番組間でばらまきをするタイプの広告」。

直前で触れたようにテレビ局の事業の多くが「売上と費用は正比例しない、売上が上がらなくてもある一定の費用は発生しうる」箱モノビジネスである。同時に元々売上高営業利益率が低いビジネスである以上、売上高の減少は即赤字転落の危機を呼びこみうる。決算短信に、各事業セグメントと広告部類別の売上高の推移が掲載されていたので、それを元に2008年3月期と2009年3月期を比較した「前期比」をグラフ化したのが次の図。

セグメント別売上高・前年度比
セグメント別売上高・前年度比

スポット広告が非常に大きな減少を見せている……のと共に、不動産が大きく伸びているのが分かる。【主要テレビ局銘柄の第1四半期決算をグラフ化してみる……(3)TBSの特殊事情とまとめ】でも触れているが、「TBSって本業が斜陽で副業で支えている」ようにも見えるし「どちらが本業?」という疑問も沸いてくる。「これだけ不動産ががんばってるのだから、大幅に黒字を計上できるはずでは?」と見えるのだが、前年度からの「額の差異」でグラフ化すると、それも難しいことが確認できる。

セグメント別売上高・前年度比(金額)
セグメント別売上高・前年度比(金額)

いかにスポット広告の落ち込みが致命的か、そして「テレビ事業で損をして、他の事業で穴埋めをしている」構造であるかが分かるはずだ。

そして2009年3月期の赤字転落の原因のもう一つは「有価証券評価損」。要は株価やその他資産の価値が下がったので持株の評価を下げねばならなくなったということ。

2008年3月期と2009年3月期における特別「損失」の内訳
2008年3月期と2009年3月期における特別「損失」の内訳

「減損損失」は固定資産の評価減によるもの。そして持株の売買による「投資有価証券売却損益」(利益と損失を足したもの)だが、去年は150億円近い黒字だったのに対し今年は4億円強の赤字。そして一定割合以上の「評価損」による計上「投資有価証券評価損」が100億円強も出てしまったため、「投資有価証券評価損益」も同等の値を示してしまっている。これも今回の本業のテレビ事業の不調同様に、最終赤字を招いた大きな要因である。

あくまでも極論だが、個別の最終赤字額が38億0100万円であることを考えると、株価の低迷が無ければ最終赤字という事態には陥らなかった、と考えることもできる。

次期予想をかいま見る
次期、つまり現在進行期である2010年3月期の業績予想も短信には記載されている。それによると、売上高などは広告費の減退影響を受けて減少を続けるものの、コスト削減により営業・経常利益は改善。さらに今期の「投資有価証券の評価損」による大幅業績悪化の反動で、増益を予想している。

2010年3月期連結業績予想(前年比)
2010年3月期連結業績予想(前年比)

コスト削減などについて決算短信の資料には、「あらゆる角度からコストの見直しを図り、営業費用の抑制に努めてまいります」とあり、今後さらにコスト削減を断行することを明らかにしている。ただしそれが具体的にどの方面で行われるのかまでには触れていない。売上が低迷することが予想され、それでも「その部門で」利益を得たいのなら、売上低迷分以上に費用を削減するしか方法がない。局こそ違えど【テレビ朝日の下方修正をグラフ化してみる(2009年4月2日版)】でも言及しているのだが、「コストカット」でおきうる番組の質の劣化によって、「商品」としてのテレビ放送の価値の低下(≒広告収入の減少)をどこまで押さえられるのかが注目される。

上記グラフにもあるように、TBSは他のキー局と異なり、本業であるはずのテレビ事業が不調で、それを取り巻く周囲事業、すなわち関連商品売買の「映像、文化事業」や「不動産事業」が大きな伸びを示している。本業の不調を副業で支えているのか、影の本業を成り立たせるために仕方なく表向きの本業をしているのか、よく分からないような状態だ。

昨今の経済状況や【過去20余年の媒体別広告費の移り変わりをグラフ化してみる】【民放連曰く「諸君らが愛してくれたテレビの広告費は減った。何故だ!?」】にもあるように、テレビの媒体力の相対的低下が「広告費減少」という形で顕著に現れるようになった昨今(、そしてコスト削減による商品力の低下も容易に想像できるため)、本業のテレビ事業がますます斜陽化することは否めない。

その時、「東京放送ホールディングス」は本業たるテレビ事業に対して、どのような姿勢をみせるのだろうか。他のテレビ局との収益構造の違いともあわせ、注目したいところだ。

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