エンゲル係数の推移をグラフ化してみる

2009/04/20 08:10

総務省統計局のデータの一つ【2008年の家計調査報告(家計収支編)】から世の中のお金の流れ・動きを感じ取れるようなデータを見つけ、グラフ化してみる企画記事。今回はいわゆる「エンゲル係数」の移り変わりをグラフ化してみることにした。今では昔ほど生活の豊かさと連動しないと言われているこの係数だが、「食費」という観点から生活費の変化を知ることができるはずだ。

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今件データは二人以上の勤労世帯を対象にしたもの。また、「エンゲル係数」そのものは消費支出に占める食料品の割合を意味する。具体的には

・(実)収入……世帯主の収入(月収+ボーナス臨時収入)+配偶者収入など
・支出……消費支出(世帯を維持していくために必要な支出)
     +非消費支出(税金・社会保険料など)
     +黒字分(投資や貯金など)
・エンゲル係数……食料費÷消費支出

となる。元々エンゲル係数そのものはドイツの社会統計学者エルンスト・エンゲル(Ernst Engel)が提唱したもので、「家計の消費支出に占める飲食費割合が高いほど生活水準は低い」とするもの。よほどの富裕層(そしてそれらはごく少数)でない限り、食費の額に大きな違いは出ず、一方で食費そのものはどの家庭でも必ず発生する。よって、全体の支出に占める比率は、消費支出そのものが大きくなるほど低くなる・食費以外の項目に割り当てられる額が大きくなるというもの。

現在では商品価格の水準や生活様式が同じものどうしでないと比較にならない、農村部の住民は自前で主食や野菜を自給出来る(割合が高い)ので必然的にエンゲル係数が低くなる、さらには住居費も合わせて考えるべきだとの意見もあり、昔ほど重要視はされなくなった。しかしそれでも一定の基準値として参考値にはなるはずだ。

さてそのエンゲル係数だが、全体では20年の間は低下傾向にある。エンゲル係数の定義に従えば、生活水準は向上していることになる。

エンゲル係数推移
エンゲル係数推移

また、今世紀に入ってからはほぼ横ばいを続けている。【働けど働けど……収入と税金の変化をグラフ化してみる】にもあるように、可処分所得・物価共に大きな変化はないので、エンゲル係数も横ばいを見せているのだろう。現在では消費支出(世帯維持のために必要な支出)のうち23.2%が食費、という計算だ。

一方、年齢階層別に見ると、大きな違いが見られる。

エンゲル係数推移(全体と年齢階層別)
エンゲル係数推移(全体と年齢階層別)

30歳以下の若年層において、多少の凹凸はあるがエンゲル係数の低下が見られる。これは生活の質の向上、というよりは少子化が影響しているものと思われる。「二人以上の世帯」である以上対象世帯は婚姻世帯を前提としているが、夫婦二人きりよりは子どもがいる方が食費はかさむ。当然エンゲル係数も高くなる。少し前にDINKS(Double Income No Kids、共働き収入・子供なし)という言葉が流行ったが、その傾向が継続しているのだろう(ちなみに晩婚化は今件では関係が無い。未婚ならば統計に含まれないからだ)。

子どもの有無・数・年齢に伴う食費の増大とエンゲル係数の増加は他の年齢階層のデータにも現れている。直近では30代-40代の世帯でエンゲル係数が高く、50代になるとそれらよりは低くなる。これはひとえに、40代以降50代になると子どもがひとり立ちするからだと思われる。【平均世帯の家計簿的なお金の使われ方をグラフ化してみる】にもあるように、世帯主が50代の世帯では「仕送り金」の出費割合が急激に増加していることも、その裏づけとなる。

また、30代-50代、特に30代・40代の世帯では、1985年-2000年にかけて急激な(と言っても5ポイント前後だが)エンゲル係数の低下が見られる。これも生活水準そのものの向上と共に、少子化の影響が少なからずあるのだろう。

一方、60歳以上のエンゲル係数も下げる傾向にあるが、年齢階層別ではもっとも高く、さらにここ数年では上昇する雰囲気が見られる。やはり「平均世帯の家計簿的なお金の使われ方をグラフ化してみる」でも触れているように、若年層と比べて食生活に気を使っていることに加え、生活が(エンゲル係数の上では)厳しくなりつつあることを示唆している。



統計データ分析イメージそもそも「エンゲル係数」とは「食事はどんな世帯でもあまり変わらない」「食事は生活には不可欠なもの」という定義で求められている。食事そのものの質や、食生活が生活水準に与える影響までは加味していない。食の安全性や自然志向などに注目が集まる今、「食費がかかる」=「金銭的に食費以外の消費が圧迫される」であっても、「食費がかかる」=「生活水準が低い」とは言い切れない。ほとんど自炊でまかなっていればエンゲル係数は限りなくゼロに近づくし、自然志向の食品ばかりを調達していればエンゲル係数は平均値よりも上昇してしまう。

食生活が多様化した現在では、「エンゲル係数」は昔ほど権威を持たなくなったといえる。むしろ、家計支出に占める子育て費用の割合を示す「エンジェル係数」(【子育て費用割合「エンジェル係数」過去最低に・二極化と子ども減少が原因か】)や「家賃指数」(【家賃の面から大学生の収入と生活の厳しさをグラフ化してみる】にもあるように2-3割が妥当な線)と合わせて考えると、生活水準の本質を見極めることができるだろう。

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