テレビ朝日の下方修正(2009年4月2日版)

2009/04/03 05:25

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テレビ朝日イメージ【テレビ朝日(9409)】は2009年4月2日、2009年3月期の連結決算について下方修正の発表を行った。それによると2008年12月に発表した今期期末の連結純利益1億円が、マイナス17億円(-1800.0%減、前年比-126.5%)になり、テレビ事業単独の個別決算だけでなく連結業績においても、最終純利益で開局以来初の赤字になる予想であることが明らかになった。今回の下方修正についてテレビ朝日側では、保有有価証券の評価損などによる特別損失が主な原因であると説明している。なお今期見通しの下方修正は今回で4回目となる。


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連結において売上の変化は前回予想と比べて-0.6%・15億円に過ぎないが、本業だけの利益から算出される営業利益が+50.0%・4.0億円と割合ではかなりの、金額としてもそれなりの増加を見せている。説明によると、タイム・スポットなどの広告売上は前回予想よりさらに下回っているものの、「番組制作費、経費等の圧縮や、減収に伴う代理店手数料の減少」など、費用の削減が推し進められ、営業利益においては前回予想を上回る結果を出しているとのこと。これは経常利益、そして個別の営業・経常利益にもいえることで、リストラ・経費削減効果が出始めていることを意味する(売上が減っているのに利益が増えているということは、売上の減少以上に経費を削減していることを意味する)。

一方、前回の下方修正の際に「最終純利益が1億円と計上されているが、経験則上、上場企業において「最終純利益予想が1億円(などのギリギリな、そしてキリの良い黒字額)」の場合、数字合わせ的に黒字化させる計算が行われている場合が多く、決算時にはこれがマイナスに触れる可能性は否定できない」とコメントした最終純利益は、予想に違わず下方修正され、連結で17.0億円、個別で21.0億円の赤字を計上している。

テレビ朝日連結決算業績予想(前回予想との差異)
テレビ朝日連結決算業績予想(前回予想との差異)

テレビ朝日個別決算業績予想(前回予想との差異)
テレビ朝日個別決算業績予想(前回予想との差異)

なお、個別決算業績予想の純利益の増減率が425.0%というややおかしな値を見せているが、これは前回予想が-4.0億円・今回予想が-21.0億円と双方ともマイナス値で、しかも今回の方がマイナス幅が大きいのが原因。つまり「マイナス÷マイナス=プラス」というわけだ。本来マイナス値が生じた場合には増減率は記載しないのだが、グラフ化にあたりあえて算出したため、このような結果となってしまった。感覚的にはむしろ「-425.0%」とすべきなのかもしれない。

リリースでは今回の下方修正について(一部重複するが)

 世界的な景気後退が一段と強まっているなか、テレビ広告市場は、東京地区のスポット広告の出稿量が前年同期を大幅に下回っており、大変厳しい状況となっております。
 タイム、スポット収入の落ち込みにより、売上高は前回予想を下回りましたが、番組制作費、経費等の圧縮や、減収に伴う代理店手数料の減少などにより、営業利益、経常利益については、前回予想を上回る見通しであります。
 一方、当社において、特別損失に投資有価証券評価損や固定資産の減損損失を計上することや、繰延税金資産の一部を取り崩すことにより、当期純利益は、前回予想を下回る見通しであります。

と説明している。

今回の下方修正からは「テレビ広告市場はさらに減退を続けている」というテレビ業界全体の問題の他、少なくともテレビ朝日では「経費削減が相当進んでいる」ことがあらためて確認できる。また、株価や地価の低迷で多額の特別損失が発生するなど、テレビ業界以外の点でも、財務を圧迫する要因が少なからず存在することが分かる。

なお、営業利益・経常利益は前回予想から多少状況が改善されているものの、個別業績(テレビ事業部分)では今期は最終的に本業部分の営業利益、そして当然のことながら純利益も赤字の予想は変わらず、開局以来の赤字転落(個別・連結共に)ということになってしまう。

「KDDI、テレビ朝日、朝日新聞社による連携ビジネスの推進について(PDF)」の発表にもあるように、先日テレビ朝日では朝日新聞・さらには【KDDI(9433)】と連携して相互情報提供・相乗効果を期待できる事業展開に関する提携を結んでいる。これも手持ちの経営資源を用いて売上や利益をかさ上げする方策を模索した上での結論の一つだろう。

有価証券や固定資産の評価損による減損損失は、ある程度仕方がないところもある。むしろ本業の部分で収益構造が多少ではあるが改善されている面を評価し、注目すべきだろう。あとはこのリストラ・経費削減によって生じうる、番組の質の劣化による「商品」としてのテレビ放送の価値の低下をどこまで押さえられるかに注目すべきといえる。


■関連記事:
【テレビ朝日の下方修正をグラフ化してみる(2008年12月17日)】
【主要テレビ局銘柄の第2四半期決算をグラフ化してみる】


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