「広さ」から「機能美」へ-景気後退と共に変わるアメリカ住宅事情

2009/03/24 04:40

アメリカの住宅イメージ先に【不況下で変わる家具の好み・「大」より「小」、より省エネスペースへ】で、アメリカの不景気の主要因の「不動産売買市場」と、住居としての「住宅事情」に密接な関係があり、景気後退に伴って(彼ら水準で)小さな住宅に住む人が増え、結果として小さいタイプの家具が大きく売上を伸ばしている話を紹介した。その状況はいまだに変わりがないようで、USA TODAYに先日、「アメリカ人は今よりも小さな、きれいに整理整頓された家に住むようになりつつある」という記事が掲載された。現在のアメリカの「住居としての」住宅事情をかいま見れる内容なので、ざっとではあるが見てみることにしよう(【Americans are moving on up to smaller, smarter homes】)。

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元記事でまず紹介されたのは、ヒットセラーとなった著書『The Not So Big House(こじんまりとした家)』の筆者で建築家でもある、 Sarah Susanka嬢。緻密な設計とシンプルな材料を使って自宅を改造することで、何千ドルも節約できると主張している。彼女自身は10年以上も前から「もっと大きな、ではなくもっと良い家を建てましょう」と繰り返し述べていたが、最近の景気・住宅事情を受けて、その主張はますます注目を集めるようになった。

1960年以来、アメリカの新築住宅の平均面積は大きくなる一方だった。「大きい事は良い事だ」である。しかし昨年は実に10年ぶりに大きく減少したことが確認された。具体的には第2四半期は2629平方フィート(244平方メートル)だったのが、第4四半期には2343平方フィート(218平方メートル)に急減している(……いずれにしても日本と比べれば非常に広いことには違いないのだが(笑))。彼女の言葉が注目されたのも、このような社会情勢が大きな背景にある。そして彼女は語る。経済状態や文化の変化が「住宅環境における需要において、広い面積よりも、限られたスペースの有効活用へのシフトを加速させる」と。

多くの住宅・不動産関係者が同様の意見を持っているという。箇条書きに並べると次の通り。

・2008年の金融市場の崩壊が、住宅のデザイン革命のきっかけとなった。「The New Economy Home」とでも呼ぶべきモデルが求められている。他人への賃貸住宅としても貸し出せる部屋割りを持つ住宅を販売予定だ(建築家のMarianne Cusato嬢)

・「小さいサイズ」への住宅を好む動きは大規模に及んでいる。自分は元々そのような住宅を担当していたので、今はこれまで以上に忙しい。iPhoneなどの、小さくても活躍している機器の普及が「大きい事は良いことだ」の風潮を改めさせる一因ともなったのではないか。ニーズは「大きいものじゃなくて、たくさんのものが欲しいの」(建築家)

・経済が回復しても、この傾向は残るんじゃないかな。建築業者も以前より小さくて、低価格の住宅を求められているよ。大きな家は必要とされていない。家族構成もこの35年間減少している(全米住宅産業協会研究部)

アメリカの小さな住宅イメージ・元々景気後退の間は、住宅サイズが停滞する傾向がある。経済が回復すれば求める面積も広まるかもしれない。が、住宅価格があまりにも急落したので、(また暴落するかも、という恐怖感から)「居住空間」以外の、投資対象としての住宅購入をとどまらせるだろう。そして高額住宅は買い手が低下する。実はリセッション前から、住宅平均面積の減少の傾向は見られていた(全米建築協会主席エコノミスト)

・数年前から住宅面積の減少傾向が見られた。そこで小さな間取りの設計を多く提供している(バージニアの建築会社)

・2年前の平均的な住宅は、2400平方フィートで4つの寝室と3つのお風呂があった。今年は1500-1600平方フィートにまで平均が落ちるかもしれない。また、880平方フィートの住宅を6万3995ドルで販売している業者もいる。「寝室を一つ減らす代わりに、高価なフローリングや証明や調理代や高級家具を選んだ人もいるよ」(アメリカでもっとも大きな建築業者のひとつであるKB-HomeのCEO)

・10年くらい前から「住宅面積の要望に対する反転現象」は起きている。クライアントが「もっと狭くしろ」と口やかましく要求してくるようだ。メーカーは家具や調理器具を小さくすることでそれに答えている(インテリアデザイナー)

・「無駄に大きな家にに住む人は郷土愛に欠けている」「ベビーブームに生まれた人たちは狭いサイズの家を望む」。一方でエコ志向の大人は「500平方フィートでもかまわない」「ただクールなものがほしいだけ」とのこと(住宅関連の書籍の筆者)

Cusato嬢は語る。「小さいスペースでも人が満足できるのは、公園やお店など、公共スペースを有益に使っているから。近所のいたるところが遊び場で、家の中が広い必要はなかったわ」。彼女は大人になってからも300平方フィート未満のアパートで暮らしていた。外部共同体の施設をうまく使うことで、自分の所有物を簡素化することができたというのだ。

また、冒頭のSusanka嬢も同様のことを語っている。その上で

私たちは今、大きく振れている振り子にぶら下がっているような状態です。これから起きることで、きっと良いバランスの住宅を手に入れることができるでしょう。
"We're in the midst of a pendulum swing," she says. "What will come of this will be a more balanced home."

とコメントしている。

アメリカの小さな住宅イメージアメリカ人すべてがCusato嬢やSusanka嬢の語るような「小さくても機能的な住宅」をずっと追い求めるわけではないし、景気の回復と共に再び大型住宅のニーズが高まる可能性もある。しかし専門家らが口々にしているデータを見ると、(Susanka嬢の言の通りにまたぶり返しがあるかもしれないが)しばらくは住宅に関するアメリカ国内の需要は、「大きさよりも適度な面積と機能美」を追い求めることになるのかもしれない。そして地域に根付いた生活を求められるようになるのだろう。


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