テレビ番組に対する視聴者からの「意見」の数をグラフ化してみる

2009/03/17 19:40

視聴者からBPO、あるいはBPOから放送局への意見イメージ先日読者からの投稿で「テレビメディアを自己監視するBPOという団体が毎月出しているデータが興味深い」というお話をいただいた。【マスコミ自らがあおる「風評」の被害を景気ウォッチャー調査から調べてみる(1)……最新データの抽出】【「『報道しないこと』これがマスコミ最強の力だよ」-あるマンガに見る、情報統制と世論誘導】をはじめとして、色々と「報道とは、マスコミとは何なのか」という、存在意義・価値すら問われかねない出来事が相次いでいる昨今、確かに傾向の一つとして見る価値はあると判断。今回グラフ化してみることにした。

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BPOって何?
【BPO】とはBroadcasting Ethics & Program Improvement Organizationの略で、日本語で「放送倫理・番組向上機構」と呼ぶ団体のこと。NHKと民放連、民放連加盟会員各社によって出資・組織された任意団体で、理事会・評議員会・事務局と3つの委員会から構成されている。【説明によると】「(テレビ)放送の表現の自由を守りつつ視聴者の基本的人権を傷つけることがないよう、NHKと民間放送がつくった第三者機関です。3つの委員会が、独立して放送倫理や人権の問題を検証し、放送局への勧告や見解を公表します」。現在の構成になったのは2003年7月。

アドバイスイメージしかし【同じく説明ページにあるように】「放送局とは、協力関係を原則としています。従って、放送局に対しての、命令、指示など放送局に強制力をもって義務を課す権限はありません」となっており、助言以上の効力はない。いわく「放送局に自覚を促す」のが存在意義で「よりよい放送に結び付けていくことを期待しています」と主張している。つまり、業界単位でよくある(官公庁からの規制を避けるための)テレビ放送局のための自主規制機関であるが、具体的な指導権限は皆無な存在ということだ。

意見数をグラフ化する
BPOでは毎月1回、【視聴者から寄せられた意見】の概算統計値と具体的意見の一部を公開している。過去データは2006年4月分まで用意してあるが、公開の様式が途中で何度か変更されており、連続性を維持した統計データを生成することは難しい。そこで類似項目の数字はできるだけ一つにまとめ、公開が行われなかった項目は「ゼロ」扱いとし、なんとか最新の2009年1月までの分を一つのグラフにまとめてみた(まとめ方の解釈の違いで、人によっては異なる結果が出る可能性は否定しない)。

項目は最新のデータでは大きく分けると「人権等に関する意見」「放送と青少年に関する意見」「放送番組全般にわたる意見」「BPOに関する意見・問い合わせ」「その他(放送関連以外)」の5項目。そのうち今回は、特に番組内容に深い係わり合いがある「放送番組全般にわたる意見」に絞ってデータを抽出する。

2007年7月以降は項目も固定化されて数字も確定したものが確認できるのだが、それ以前は月によって一部未公開だったり、他の項目とあわせた数字しか掲載されていなかったりしている(その多くは特異な事件がおきて「意見」が急増した場合)。そのためグラフが一部断続的であったり、妙な形をしている場合もあるが、ご容赦願いたい。

まずは該当項目全体のグラフ。

BPOに寄せられた「番組全般にわたる意見」
BPOに寄せられた「番組全般にわたる意見」

データ公開期間に限れば、2007年1月の「あるある大辞典」における納豆報道問題で「テレビ放送って?」という疑問が視聴者の間に持ちあがって以降、BPOへの意見が増えていることが分かる。また、テレビ放送に関して「報道」の意義・意味を問題視されるような問題が発生するたびに、「意見」、特に「情報ワイドバラエティーにおける不適切な内容や不適格な出演者への意見」が急増している様子が把握できる。

このグラフを「情報ワイド・バラエティー」と「報道・情報番組」それぞれに分けて、傾向を見たのが次の2つのグラフ。増減傾向を分かりやすくするため、Excelの近似線機能を用いて多項式近似線(最大値の6項)を点線で引いてみた。

BPOに寄せられた「番組全般にわたる意見」(情報ワイド・バラエティー番組のみ抽出)
BPOに寄せられた「番組全般にわたる意見」(情報ワイド・バラエティー番組のみ抽出)

BPOに寄せられた「番組全般にわたる意見」(報道・情報番組のみ抽出)
BPOに寄せられた「番組全般にわたる意見」(報道・情報番組のみ抽出)

他の項目をはるかに超える形で、「情報ワイド・バラエティー番組」では「不適切な内容、不適格な出演者」が、「報道・情報番組」では「取材・報道のあり方・批判」が増加しているのが把握できる。また、「情報ワイド・バラエティー番組」では直近で「低俗・下品な番組」への「意見」が増えている傾向も確認できる。この数年間のテレビ番組を振り返れば、このような「意見」の増加傾向に納得がいく、だろうか。

具体的な問題点は「分かっている」はず、なのだが
上記グラフはあくまでも総計としての統計的な数字・グラフでしかない。その一方、各月の具体的な「意見」のページを見ると、実に詳細に、そして具体的に、寄せられた「意見」が指摘している問題点をBPOが把握・確認しているかが分かる。

例えば2009年1月における解説をさらに箇条書きにして、概要をまとめると、

・「捏造・やらせではないか」との指摘のうち番組用にプログを自作した番組とテレビ局への批判が集中した。
・漢字の読み違いに焦点をあてた麻生バッシングや政党批判に終始する報道姿勢への批判、政策や国会審議等政治関連報道について「報道の役割を問う」とする政治報道の脆弱性を指摘した意見、情報番組を中心にキャスター・コメンテーターの「印象・情報操作に繋がるかのような無責任な発言」などについての抗議や批判が多い。
・"出演者の発言"や"番組のあり方"では、雇用危機に直面している状況下で、派遣村報道をはじめ解雇された社員への不当な論評を加える情報番組等を批判する意見が多数寄せられた。
・経済、金融危機下での"大食い・高額食材を使った番組"や"不適切なバラエティー・お笑い番組"を制作する放送界の放送倫理や現状認識について厳しく批判。

などがある。「なんだ、BPOもテレビ放送の問題点をちゃんと分かっているじゃないか」、と考える人もいるだろう。しかしBPO側では「いただいたご意見は概要をそのまま掲載しています。意見内容はBPOの考え方を反映しているものではありません」との表記で、これらの意見がBPOが意図しているものではないことを説明している。それでも情報として公開している以上、「把握している」ことは疑いようのない事実である。

(1)視聴者が間違っている。放送局は正しい
(2)視聴者は正しいが、意見に対しBPOが
 「現状こそが正しい」と判断して
 テレビ局に助言をしていない
(3)BPOはテレビ局に助言をしているが
 テレビ局は聞き流すばかり
……さて実態は!?
それを是とするか非とするかはBPOの判断であり、その判断次第で各放送局に「自覚を促す」ための「助言」をするのもBPO次第。「助言」が行われていたとしたら、その「助言」に従うか否かは放送局次第。

上記の箇条書きの内容をはじめとする「視聴者の意見」が正しく、放送局側の姿勢に問題があるとすれば、「自主規制機関」であるBPOが正しく運用されていれば状況の改善が見られるはず。ところが全体的に見て意見そのものが増加する傾向にあること「など」を見ても、「自主規制機関」としての機能が働いていない(要するに形骸化、言い換えれば張子の虎)、という結論に達する。

果たして「BPOの時点で『現状は正すべき』と判断していない」のか、「BPOが判断してテレビ放送局に助言をしているが、放送局側が(強制力がない・自浄能力がないので)それに従おうとしない」のか、それとも「視聴者の意見が的外れであり、テレビ放送局側の現状の姿勢が正しい」のか。それぞれの立場によってどれが正しいのかの見極めは違ってくるだろう(もちろんオール・オア・ナッシングではない)。

一つ注意しなければならないのは、BPO・テレビ放送局・視聴者はそれぞれどこを向いているのか、そしてどこを向く自由を持っているのか・いないのかを、それぞれがしっかりと見極める必要があること。よく言われる話ではあるが、「注意をされるうちが華」なのだから。


トリガー意見:O.W.様。Thanks!

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