基調判断に底打ち感?…2009年2月景気動向指数は2か月連続の上昇、先行きも2か月連続の上昇

2009/03/10 08:00

内閣府は2009年3月9日、2009年2月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はないものの、現状・先行き共に二か月連続しての上昇傾向を見せた。基調判断は先月よりはやや緩やかではあるが、相変わらず厳しい表現の「景気の現状は極めて厳しい」ではあるが、同時に「このところ悪化のテンポが緩やかになっている」という表現が加わっており、底打ち観がかいま見れるような状況にあることが分かる(【発表ページ】)。

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買い物には依然慎重姿勢が続く消費者。ただし環境対応自動車への購入意欲など「最悪ではない」との考えも
文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値についてはまとめページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】上ので解説済みなので、そちらで確認してほしい。

2009年2月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス2.3ポイントの19.4。
 →2か月連続上昇。「悪化」判断が減り、「変わらない」「やや悪化」が増えた。
 →家計は購買意欲は慎重で変わらず。ただし円高による商品価格の低下や、環境対応自動車に対する購買意欲が見られる傾向も。企業・雇用とも「周辺環境が先月と比べると多少は改善している」との判断。
・先行き判断DIは先月比プラス4.4ポイントの26.5。
 →2か月連続してのプラス。
 →景気や雇用の先行き不安、所得の減少見込みなどは続く。定額給付金、各種特別減税、高速道路料金の値下げに対する期待がプラスに。企業の思惑も在庫調整の進展が一部で期待されていることなどが好判断の予想に。また、全般的に「昨月のような状況よりさらに下落することはないだろう」という考えが。
2001年パターン踏襲なるか!?
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
景気の現状判断DI

上でも触れているが、畳み掛けるような景気悪化の報道の影響もあり、消費マインドがどん底になった2008年12月と比べると、「底での安心感」、さらには身の回りで生じている状況の改善・今後の期待感などが功を奏し、すべての項目でプラス(飲食はプラスマイナスゼロ)を見せているのが分かる。多くの項目では誤差の範囲でしかない上げだが、サービス関連では比較的高い伸びを見せていること、企業動向ではもっとも数値が下落していた製造業が(他と比べて)大きな上昇を見せている点に注目したい。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

「現時点ですでにITバブル崩壊後の不景気時期にあたる2002年-2003年(日経平均株価が7000円台を記録)の時期の水準に近い状態が続いている」とは去年後半以降の傾向。昨年末にはそのラインを底抜けし、2008年12月では大底の状態となり、理論値上の下限であるゼロに達しかねない勢いとなっいた。しかしそれを底と見るかのごとく1月には横ばい、多少の上昇を見せ、今月2月ではさらに上向く傾向にある。いまだに前回の不景気時より水準は下だが、反発を始めた状態そのものは好感すべきだろう。

・加速度的下落傾向は
一時小休止、反転のきざし。
・「雇用と全体の下落逆転」は
いまだに継続中。
・合計のDIは現状でも2002-03年の
不景気時代水準以下に。
→状況は前回不況時より悪化。
注意すべきは繰り返し指摘しているように「前回(2001年-2002年)の急落時には、家計や企業、雇用動向DIにぶれがあったのに対し、今回の下落では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」こと。景気状況が世界規模で、互いの項目の関連性云々が反映される以前のスピードで悪化したことを表しているが、これは2007年後半の「サブプライムローンショック」「8.17.ショック」と呼ばれるサブプライムローン問題関連、資源高、さらには「リーマンブラザーズショック」などの連鎖的市場不況がそれぞれのポイントにおける引き金。どの項目がどれほどの影響を与えたのか、どれがどれの引き金になったのかは後に歴史家・経済専門家によって研究されることになるだろうが、ここまで連鎖が続くのも珍しい。

需要の高まりから資源高そのものは一連の金融危機以前から、緩やかながらも兆候が見られていたことが確認されている。需給のバランス崩壊に伴う(商品・素材先物)市場の大幅下落が、景気後退の引き金の一因となったのは間違いあるまい。たとえその商品価格の下落が「当初は」実体経済を伴っていないものだったとしても、実体経済とのリンクがされており、その部面でのお金の周りが悪くなるのだから当然の話。

現状は資源高は沈静化を見せ、一年ほど前と比べるとかなりの低位置で推移している(最近では多少戻しが見られるが)。そして景気そのものの後退で、各種消費・需要マインドは低いままで推移している。本来なら「資源高値で景気が悪化し需要が減り」その後資源が反転して安値をつければ、「安値で資源が買われて景気は回復に向かう」というのが筋道なのだが、昨今では「景気は回復せずに需給バランスは崩れたまま」という、妙な状況が続いている。

要は「物が高いから買わない」→「売れないから値が下がる」→「値が下がるので景気も後退する」→「値が下がっても景気後退のためやっぱり買われない」という悪循環にある。市場に出回る資金が不足しているのが一因だが、これは投資ファンド群が、需給バランスを調整すべき「資金」を市場から根こそぎ引き抜いてしまったため、需給の調整役を果たすバランサーがなくなったのが一因。さらに金融機関も株価低迷で自己資本比率を神経質なまでに気にするようになり、極力市場に流さなくなった(例えるなら心臓が体内に循環させる血液を極力減らしている状態)のも要素として無視できない。

今後経済全体がインフレ・デフレ・スタグフレーションいずれの道を歩むことになるのか、それともそれらとも別の道を歩むのか、専門家の間でも意見が大きく分かれており、予想がつきにくいのが現状。

一方これまでの傾向として見られた「直近の最底値の際には雇用関連の指数が全体指数より下側に大きくクロスして落ち込む傾向」が2008年4月以降継続していることを注目したい。2009年2月では1月のような、「全体指数以上の雇用指数の増加」は見られない。モメンタム的な見方としては判断に迷うところがあるが、もう数か月は動向を見極める必要がある。とはいえ、(データを見る限りにおいて)状況的には、決して最悪というわけではない。

景気の先行き判断DIについても、先月と比べて上昇した。

景気の先行き判断DI
景気の先行き判断DI

「現状」同様に全項目でプラスを見せ、しかもその上昇度は「現状」以上のものを見せている。とりわけ「飲食」、そして「現状」同様に「製造」、さらにはあれだけ報道であおられていた「雇用」も大きく伸びているのが頼もしい。

2000年以降の先行き判断DIの推移
2000年以降の先行き判断DIの推移(赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに昨年後半の時点で、2001年後半時期における最下方の値に達している。それ以降はやや横ばいかほんの少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。昨年10月におきた株安や景気の悪化(「リーマンブラザーズ・ショック」)が、いかに大きなインパクトを家計や企業の先行きの心境に与えたのかが分かる。

今月は現状同様に「この先、これ以上悪くなる事はないだろう」という思惑からか多少なりとも挙げているが、「これだけひどいのだから、今が底に違いない。そしてこれからは少しずつでも良くなる」という想いは現状よりも先行きの方が強い。同じDI値の上昇でも「現状」<「先行き」の結果をもたらしている。さらに今月は、「今が最悪で今後は……」という希望的観測以外に、具体的に周辺環境が改善されたことによるDI値の上向きも見られ、昨月より状況は確実に改善されていることが分かる。

残念ながら2003年以降よく見受けられるようになった上昇・安定時の傾向「雇用指数が全体指数を大きく上回る」がまだ確認できず、クロス・逆転も起きていない。前回の不景気と同じパターンを踏襲するのなら、きざしはみえるものの、「まだ今は底からの上昇開始時期」とは断定できない。

発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)に関して事例を挙げてみると、

・来場者数は増えていないものの、成約率が上がってきている。ただし、客の間には焦って購入するような動きは全くみられない(住宅販売会社)。
・円高、燃油サーチャージ低下の影響もあり、海外旅行は好調である。国内は企業出張が減り、航空券、新幹線・特急券を中心に大きく落ち込んでいる(旅行代理店)。
・来客数は微増が続いているものの、客単価は2か月連続で前年割れとなった。客は安い商品を購入する傾向が強まり、客単価は更に低下している(コンビニ)。
・バーゲンの前倒しの影響で割引セールのインパクトが薄れているのと、不要なものにお金を使わない消費マインドが重なり、衣料品を中心に苦戦している。ただし、円高還元セールやプライベートブランドの継続的値下げなどには反応がある(スーパー)。
・依然としてアパレル、服飾関連は厳しい。また、比較的堅調であった食品の売上も縮小傾向である。物産展等の食を切り口にした大型催事は集客を見込めるが、それ以外の商品の売上増加には至らない(百貨店)。
・日曜・祝日の来客数が非常に少なくなっている。特にファミリー層が外食を控えている(一般レストラン)。
など、消費者が冷静に現状を見据え、生活防衛に勤しんでいる様子、さらには賢い選択・買い物をしている様子が分かる。

掲載は略するが企業関連では景気動向(特に外需周り)にあまり関係の無い企業(内需中心)が「状況は変わらず」との判断を示していたり、「月を追うごとに、受注量は減少傾向であるが、材料、特に鋼板類の価格が大幅に低下しており、収益的には大きく改善している」など金属製品製造業の興味深いコメントも見受けられる。やはり素材価格の下落が、製造業には大きくポジティブに働いているのだろう。一方で、雇用関係では「雇用保険の受給手続数、雇用調整助成金の申請数が増加しているほか、今月に入り求人数が急減している。さらに、これまで企業は不採用理由がなければ採用していたが、役割を確実に果たせる人でなければ採用しない姿勢に変化している」(職業安定所)など、状況がまだ回復に向かっていると判断するには難しい状況にあると同時に、企業側もこれまで以上に質の高い人材を求める傾向が強まっていることもうかがえる。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
実体経済への傷も深い。
海外の景気後退や
失策・不祥事が大きく作用し
外需中心の企業にも影響は
大きい。
現状は「(期待的)底打ち感」の
様相を呈しているが、
積極的上昇と見るには
材料があまりにも足りない。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているが、今回の景気悪化が2001年から2002年にわたった景気悪化とその回復のパターンを踏襲するのなら、全体の指数の底打ちと前後して「大幅な雇用関係指数の下落・他指数との乖離(かけはなれること)」現象が見られるはず。2009年2月のデータを見ると、2008年12月分が乖離のピークで今月分は底打ち後の反転が1月から継続しているようにも見えるが、12月のデータが「大幅な乖離」と表現するにはまだ足りない感もある。

元々前回の不景気と比べて底値が低いこともあり、これ以上の下げは算出方法上難しい。40から30の10ポイントの下げは容易だが、20から10の下げは同じ10ポイントでも大幅なマインド低下を必要とする。体重を100キロから10キロ落とすのは比較的容易だが、50キロから10キロ落とすのは並々ならぬ努力を必要とする、と例えれば分かりやすいだろう。

だから、前回の底値時における10ポイント近い乖離と、今回の2008年12月における「現状7ポイント強、先行き4ポイント強の乖離」(※先行きに限れば今回月の方が7ポイント強の乖離を見せている)は、数字そのものは半分前後でも、調査母体の心境的には近いものがあるのかもしれない。

ただし今回の景気後退は、前回と比べて外部的要因(海外景気情勢)に振り回される感が大きい。国内で手を打ったとしても、成果が現れるのには時間がかかるだけでなく、それらを台無しにされてしまう可能性もある。また、上記文中でも触れたが本来の経済原理・原則である需給バランスによる自然的な調整も、投資ファンドが中抜きをしたまま場を離れたのと、(株価低迷も一因だが)金融機関が「間接金融」という自らの社会的義務を怠っているため、自然回復には時間を要する可能性が高い。そして現況となった金融危機(「金融工学危機」)は引き続きくすぶりを見せており、加害者の少なからずは自責の念を持つどころか、さらに悪事を働く姿勢を見せている。

「今が底かな?」という希望的観測は「現状では」正しいのかもしれない。マインド的には海外的要因は不確かながら、国内的には大手企業の3月末決算を乗り越えたあたりが底になる可能性もある(いわゆる「材料出尽くし」)。いわゆる「節分天井、彼岸底」というものだ。もちろん現状では国内だけでなく世界中で同じような現象が起きているため、日本国内一国だけで手立てをしても、劇的な効果を求めるのは事実上不可能、という判断が正しい。いくら自分が無駄な出費を切り詰めても、兄弟姉妹が浪費を続けていては、家計は少しも改善されないのと同じである。

さらに悲しいことではあるが、先月も指摘したように、経済対策を妨害して状況の混乱を望み、国内政治・経済の現状における回復を嫌い、経済情勢をカードゲームの「大富豪」(一発逆転が狙える)のように考える者もいる。正しい情報を自らの手でつかんでそしゃくし、考える力を一人一人が持つように心がけたいものだ。

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