【更新】アメリカの景気刺激策の金額をグラフ化してみる

2009/02/24 19:50

アメリカの景気イメージ昨今の金融(工学)危機の震源地ともいえるアメリカでは、先日就任したばかりのオバマ大統領が2009年2月17日、総額で7870億ドル(74兆円相当)の景気刺激対策法案に署名、法案は可決された。署名後大統領は「今日は終わりの始まりである」と語ったそうだが、この言葉を真実のものならしめるため、各方面で必至の作業が行われている(努力を怠り予算をむさぼろうとする輩も出ているようだが)。さて、その「景気刺激対策」についてアメリカ政府では独自のサイト【RECOVERY.GOV】を設置し、その使い道について詳しい解説を行っている。曰く、使うのは国民から徴収した税金なのだから、巨額の緊急支出には説明責任がある、とするものだ。今回はそこに掲載されている、予算の使われ道のグラフなどを紹介することにしよう。

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RECOVERY.GOV
RECOVERY.GOV

RECOVERY.GOVのトップ左側に掲載されているのが、今回の景気刺激対策……というよ「American Recovery and Reinvestment Act」を訳すと「アメリカの復権と再投資方策」のあらまし。「刺激対策」の訳だと刺激してオシマイだが、「アメリカの復権と再投資方策」ならば「刺激して立ち直らせ、さらに成長のために投資を行う」という、アクティブで前向きなものとなる。その「方策」の内訳は次の通り。

「American Recovery and Reinvestment Act」の内訳
「American Recovery and Reinvestment Act」の内訳

単に減税をするだけでなく、さまざまな方面で経済の活性化を目論んでいるのが分かる。おせっかいかもしれないが、これを総予算に占める割合が分かりやすくなるように円グラフ化したのが次の図。

「American Recovery and Reinvestment Act」の内訳(全体に占める割合が分かりやすいように円グラフで)
「American Recovery and Reinvestment Act」の内訳(全体に占める割合が分かりやすいように円グラフで)

減税と財政救済だけで過半数を占めているあたり、いかに直接的な効果を狙っている……というより、あちこちに火が回っていることが分かる。「インフラと科学への投資」をはじめ各種対策費は直接関連する産業を助け(倒産や解雇のリスクを減らす)、中長期的に生産力に活力を与えるものだが、「減税」や「財政救済」ほどダイレクトな影響は期待しにくい。とはいえ、社会秩序の不安定化は「復権」にはまったく逆行するものだから、これはこれで当然の話。また、「経済弱者の救済」に810億ドルを費やすあたりはオバマ政権らしい政策ともいえる。

具体的な内容は[全文がこちら(PDF、要登録)]、概要が【こちら】に書かれているが、「効率のよいエネルギーの開発」「科学技術の進歩を促進させ、経済を活性化」「道路や橋、水路などを近代化」「教育制度の総見直し」「減税による雇用創出」「健康・医療方面の費用軽減」「景気後退で経済的に困難な状態に陥っている労働者の支援」「公務員職の確保による公共サービスの維持」などが挙げられている。

「アメリカの復権と再投資方策」予算は
国家予算全額と比較して27.1%にも
相当する巨額な対策費。
ちなみに7870億ドルとは、アメリカの2008年度の予算総額2兆9020億ドルと比べると実に27.1%に相当する。日本の一般会計予算が約80兆円だから、同じ比率で考えると21.7兆円の規模の景気刺激策を講じた計算。【「IMFへ1000億ドル」の意味と効力】で紹介した、中小企業に対する融資への政府保証枠拡大分21兆円(2008年8月までで6兆円、3兆円の枠がそれぞれ20兆円、10兆円まで拡大)と、額そのものは実は大して変わりがない。直接政府がキャッシュを切るのか、それとも金融機関が貸し出すかの違いくらいだ(これの効果がないとなれば、金融機関の怠慢によるもの、つまりなすべき仕事をしてないことになる。もちろん直接現金の方が効果は高いのだが)。



さて、7870億ドルという大盤振る舞いを行うことになったわけだが、問題はその財源。一応説明には「政府予算から」ということになってはいるが、元々景気後退のさなか、税収は落ち込むばかりで予算の3割近くを占める多額の出費を緊急予算として出せるはずがない。だからといって「お金が足りないからドル札を刷ります」では、金融体制が崩壊してしまう。

そこで行われているのが、間接的な「ドル札を刷ります」ことアメリカ国債の発行。詳細はすでに【アメリカ国債の引き受け先をグラフ化してみる(2009年1月更新版)】でも説明しているが、おねだりは毎日やってきて支出は増えるし税収はへこむばかりで、国家予算の勘定が合わなくなるため、アメリカ国債の増刷が相次いでいる。発行すればするだけ利子負担は増えるし、償還時の負担も懸念されるが「背に腹は変えられぬ」状態。とめどもない増刷に、市場の不安が広がるのも無理はない。

住宅ローンや自動車ローンと同じで「今必要なのは事実だし、後でしっかりと返せば良い」という考えも一理ある。ましてやこのような状況で景気刺激策を行うための「振るための袖」を用意するのは、国債に頼るしかないのも仕方の無い話。

方策が思い通りにうまく働き、半ば借金であるアメリカ国債をしっかりと償還してもらうためには、「アメリカの復権と再投資方策」が無駄使いされないよう、十分以上に注意を払う必要がある。例えば公的資金を受ける直前に役員に巨額のボーナスを支払うようなところには(事実上公的資金が役員の懐に移っただけとなる)、該当役員へのキツいペナルティを課すような対策も考える必要があるだろう。

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