【転送】今年倒産した上場企業(2008年最終版)

2008/12/31 10:22

このエントリーをはてなブックマークに追加
倒産イメージ(2008年12月31日版)9月の7件、10月の8件をピークとし、今年は上場企業の倒産(破産・民事再生・会社更生)が相次ぐ年となった。これまでは2002年の29社が最高だったが、最終的に今年の上場企業の倒産件数は33件となり、戦後における記録更新が確定した(上場廃止後に倒産したエー・エス・アイを含めると34社)。不動産関連市場の軟調さに加え、さまざまなマイナス要因が重なった不運があるとはいえ、株価動向とあわせ常軌を逸していると表現せざるを得ない。そこで今回はこれまで何度か更新してきた「今年倒産した上場企業」記事の「今年における」締めとして、大晦日時点における2008年分のデータを反映させたグラフを作成し、現状を把握できるよう試みることにした。


スポンサードリンク


まずは今年に入ってから、12月31日時点の上場企業における倒産企業一覧。エー・エス・アイは上場廃止後なので取り入れておらず、合計で33社となる。

2008年における上場企業の倒産一覧(12月31日時点)
2008年における上場企業の倒産一覧(12月31日時点)

なお「不動産」には直接の不動産売買以外に不動産投資、不動産関連事業も含めてある。詳細に分類してもあまり意味をなさず、むしろまとめた方が状況を把握しやすいからである。

次に、セクター(業種)ごとに負債総額を累計し、負債総額全体に占める割合をグラフ化する。

2008年に倒産した上場企業の負債額区分(12月31日時点)
2008年に倒産した上場企業の負債額区分(12月31日時点)

不動産だけで7割強、建設も含めると9割超が「不動産・建設」という、不動産事業がらみの企業の倒産で生じている構造は昨今の状況から特に変わりがない。いかに今年の上場企業の破たんが、不動産業界と深い関係があるかがあらためて分かる。

負債総額の上位10位を並べてみても、不動産業界の苦境が見て取れる。

2008年における倒産上場企業負債総額上位10位と負債額(億円)(12月31日時点)
2008年における倒産上場企業負債総額上位10位と負債額(億円)(12月31日時点)

上位10位すべてが不動産か建設で占められるという異常事態のまま年を越すことになってしまった。それだけ不動産・建設の大型倒産が今年発生している現実が把握できる。さらに上位陣を見ると、アーバンコーポレーションや「理論的には絶対破たんするはずがない」Jリートのニューシティ・レジデンス投資法人の規模の大きさが再認識できる。もっともこの両社の破たんは主に経営陣の経営姿勢・判断によるところが大きく、一概に「不動産不況によるもの」とは言い切れないかもしれない。

また、上場企業の倒産は今年後半にかけてペースを上げ、秋口でピークを迎えた。これは元々改正建築基準法絡みで審査が通りにくくなり新規建設物件の量が少なくなったことに加え、去年秋以降の資源高によるコストの高騰、さらには不景気による需要縮小で需給バランスが大きく崩れたこと、その上今年春先以降顕著になった金融信用収縮で「資金の借り入れが難しくなった」どころか「貸しはがしを受ける」企業が相次いでいることが要因として挙げられる。11月以降は各種政策対応により延命が図られたことや、体力の少ないところの破たんにより「現時点での」アクが抜けたこともあり、幸いにもペースは減少している。

2008年における上場企業倒産件数(12月31日現在)
2008年における上場企業倒産件数(12月31日現在)

以前「10月がピークでした、ということになれば良いのだが」とコメントしたが、結果論としてその通りになったようだ。ただしこれは今年に限ったことであり、来年はどうなるかはまだ分からない。

最後に「市場から失われた資金」を計算してみる。これは上場廃止告知日におけるその企業の株価に、その企業が発行している株式総数(ヤフーファイナンスから取得)を乗じた、いわば「倒産告知時の時価総額」。倒産≒上場廃止となればその企業の株式の流動性はほとんど無くなり、破産ならほぼ資産価値はゼロ、民事再生や会社更生でも上場廃止後に何らかの資産価値を得られる可能性は極めて低い(まれな例外として、上場廃止に清算された分配金が、上場廃止時の株価を上回る場合もある)。

そこでここでは、上場廃止告知日のその企業における時価総額を、「株価がゼロ」=「時価総額がゼロ」になると仮定し、その資金が市場から失われてしまうと考え(少なくともそれに近い額がそれぞれの株主から失われるのは確かだ)、計算してみることにした。仮に倒産告知前に何らかの「気配」が感じられていれば、投資家はそれに気づき手持ちの株式を売り抜けようとするので、自然に時価総額も下がることになる。

2008年における倒産上場企業の倒産告知日における時価総額(≒市場から「失われた資金」)(12月31日現在)
2008年における倒産上場企業の倒産告知日における時価総額(≒市場から「失われた資金」)(12月31日現在)
・「不動産」が半数突破
・プロデュース「突然死」の
影響は大きいまま
相変わらず「その他」セクターの比率が異様に高いが、これは【プロデュース(6263)、民事再生法適用申請・10月27日に上場廃止】でもお伝えした、【プロデュース(6263)】に寄るところが大きい。株主が異変に気がつく、あるいは気がついても逃げ切る余裕なく倒産の告知がなされたため、株価が高い水準のまま破たんし、結果的に「時価総額」に大きく貢献することになってしまった。9月破たんの企業にも関わらず、いまだににここまでの影響を与えていることを考えると、いかに同社が多くの投資家の投資資金を奈落の底に「プロデュース」したかが分かる。

ちなみにプロデュースの倒産告知当時の時価総額は160.7億円。負債総額ではトップの位置にあるアーバンコーポレーションの140.8億円ですら上回る値。プロデュースの事例がいかに異様であるかがあらためて理解できよう。



以前上場企業の年間倒産件数が過去最高に達するのは、早くても11月末と想定していたが(月末が週末にもあたり、決済や告知上何かと危険な日にあたるため)、実際にはそれよりも前に同数ながらも「過去最高」をカウントする事態におちいってしまった。その後ペースは落ちたもののカウントは続き、最終的には33社に達してしまう。

東証の適時開示情報を見るに、綱渡り的なやり取りをしている企業や、赤ランプが点灯している企業を複数確認することができる(しかも、やはり建設・不動産業に多く見受けられる)。先日発表された【2008年11月の新設住宅戸数】のデータを見ると、一時期回復の兆しが見えていた新設住宅もやはり需要そのものが底で横ばいを続けているようで買い手がつかず、再び減少する兆しを見せている。また一歩下がった視点で見ても、世界的な景気後退がわざわいし、すべてのセクターにおいて安心できる材料はあまりない。冷静に考えれば、来年に入ってからも時期の節目(例えば正月のモチ代を出した直後の1月、年度末の3月など)で「カウントする」必要がある企業が登場しそうである。

とはいえ2009年版の「今年倒産した上場企業」を作るような事態(5-10社を超えた時点で検討)が起きないよう、祈らずにはいられない。


スポンサードリンク


関連記事


このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2024 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|Twitter|FacebookPage|Mail|RSS