【転送】マスコミ自らがあおる「風評」の被害を景気ウォッチャー調査から調べてみる(3)……「なぜか」を考え、「何を示しているのか」を推測してみる

2009/01/19 08:31

考えるイメージ内閣府が毎月発表している、一般市民の景気判断を統計調査する「景気ウォッチャー調査」の最新データにおける具体的コメント「景気判断理由集」で、マスコミの「風表被害」を訴える声が多すぎるとの話を耳にし、調べたところ「直近の2008年12月では38件にも達していた」「この数か月で不景気扇動報道への反発が高まっている傾向がある」などが判明した。ここではまとめとして、なぜこのような事態が起きているのか、そしてこのデータは何を示しているのかを推測してみることにした。

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「なぜか?」
まず最初に、景気が後退しているのは事実であるし、それを指し示すような出来事が次々生じているのも疑いようがない。しかしそれを過不足無く、不公平感、偏(かたよ)り無く伝えているものであれば、これほどまでに一般市民、特にBtoC(企業対顧客ビジネス)従事者からの反発は受けないはずだ。

先のグラフでは省略したが、直近の金融危機に該当する2003年前後において株価が最安値で7000円台をつけた、2003年3月から5月における「景気判断理由集」を調べたところ、次のような結果が出ている。

■景気ウォッチャー調査・景気判断理由集における、キーワードとしての「マスコミ」登場回数(ネガティブな使われ方のみ)

2003年3月……現状1回/先行き2回
2003年4月……現状0回/先行き0回
2003年5月……現状0回/先行き1回

「報道」イメージほとんど無きに等しい。2008年12月の数字と比べたら数十分の一に過ぎない。つまり先の金融危機とは明らかに状況(マスコミの報道姿勢と、それを受け取る視聴者、今件では特にBtoCに従事する人たちの受け止め方)が異なっていることが分かる。

今調査のきっかけになった意見は「マスコミによる派遣社員きりの風評被害を訴えるもの多すぎる。例えばNHKは先月、連日10分以上かけて念入りに報じていた」というものだった。確かに起きている事態は世情を反映するものに違いはなく、重要な事件の一つではある。しかし、それでも他の出来事と相対的な位置づけ、あるいは全体的な「報じるべきこと」と比較した場合、それほど重要視すべき事項だったのだろうか。

もちろん、報じる側が「その通りだ」と主張すれば、それまでである。

一方、以前【最近ストップ安が目立つのはなぜだろう】【ステルスマーケティングが×なワケ……プラスがマイナスに転化する時のエネルギー・2(発覚時)】でも触れているが、「行動ファイナンス理論」をはじめとした心理学的分野において、人は「ポジティブな情報よりネガティブな情報の方に注目し、強い反応を示す」。「1000円拾った」より「1000円落とした」方が心に与える影響が大きいことを考えれば、容易に理解できるはずだ。

視聴者はネガティブな情報に
強い関心を示す

景気の悪い話の方が
注目・関心を集めやすい
さらに分かりやすく解説すると、「ポジティブな情報はいくら影響を及ぼしても自分の資産や命に傷をつけることはないが、ネガティブな情報は生存権すら奪いかねない内容を含んでいる。言葉通り生死に関わるため」、人は大きなインパクトを受け、真剣になって耳を傾ける。いわば、人間の「生存本能」が「ネガティブな情報には注意」というシグナルを出しており、そのシグナルに従い過敏に反応していることになる。

この理論(、むしろ人間の生物としての本能)を頭に入れてから考え直すと、「不景気関連の報道ほど視聴者の注目を集めるから、では?」という推論が成り立つ。例として芸能ニュースやお昼のワイドショーの内容をチェックすれば、さほどその推論が筋違いのものではないことも理解できよう。

元々景気悪化を報じる材料は揃いすぎるほど用意されている。が、それをことさらに報じる現況の理由の一つもここにあると見て間違いないだろう。ただでさえ、インターネットや携帯電話の登場と普及、趣味趣向の多様化で、既存マスコミの求心力は(若年層を中心に)弱まりつつある。強いインパクトを与えるシグナルを発しなければ、現状維持すら難しいと判断するかもしれない。そのような立ち位置に置かれたなら、確実に目を向けさせる手段を多用したくなるのもうなづける。

「何を示しているのか?」
ここ数か月の間に急速に増えている、世間全般からの声ともいえる「景気判断理由集」内における、マスコミの不景気報道に対する反発の声。不景気報道の(過剰なまでの)多用化の理由は上記に示した通りだが、一般市民からの反発の声の高まりが何を示しているのかを考えてみる。

声の多くは「不景気なのは分かっている」「でもあおり過ぎている。必要以上に喧伝しているから、余計に景気が悪くなる」であり、いわば「マスコミの過剰報道が景気悪化の一端を担っている」とするものだ。言い換えれば「もっとその立ち位置からするべきことがあるだろう」というもの。報道姿勢に対する反発、さらにはそのものへの不信感の意見も多い。

マスコミの報道姿勢への不信感がこのまま高まれば、不景気悪化の「悪玉」のひとつとして、一般市民から明確にカウントされてしまう可能性も低くない。特に消費者の心境に大きく左右される対顧客ビジネスを担う人たちの中には、そのように考える人も増えていることが確認できたのが、今回の「景気判断理由集」の再点検。

雨と傘イメージこのような話はよほどのことが無い限り、マスコミ自身に報じられることはない。自らの「現状における」運用方針を否定し、果ては自己批判につながるからだ。だから現状では「景気判断理由集」の中でもばらばらに声が上がっているだけに過ぎない(集約し、「そういえばそうだよね」と気づかせるきっかけが無いからだ)。しかしにわか雨のような「ぽつりぽつり」だった自然発生的な「これはおかしいぞ」という声が次第に増え、「ばしゃばしゃ」「ざーざー」と五月雨、そして普通の雨に変わりかねない状況が現状であるともいえる。

このままの状況が継続するのか、それとも一時的なもので来月発表分以降は減少するのか、あるいはさらに増加するのか。今後の動向を注意深く見守りたい。



フランクに、しかもきわめて個人的な考えを述べると、「テレビ局や雑誌媒体も景気後退や媒体力の低下で経営が厳しくなったので、どんな手段を使ってでも客足を引き止める必要がある。だからスルーされるハッピーなニュースよりも、注意を留めるアンハッピーなニュースを好む傾向があるのでは」という推論が成り立つ。放送業界や雑誌業界の苦戦振りを見ると、容易に仮説の裏づけも出来る。しかしこれはいわば「劇薬」だ。

また、【作家 三橋貴明氏の意見】にもあるような、「既存メディアが立ち位置を死守するために、ネットユーザーに『日本はダメっぽいから既存メディアを叩いても意味が無いや』とあきらめさせる」という考え方も一理はあるのかな、という気はする(注意を他に向けさせたり、戦意を失わせる方法は軍略としても常套手段だからだ)。もっとも後者は、現状では「あるのかな?」程度のものでしかないことも付け加えておく。そこまで考えるほどの知恵者がいるのなら、もっと賢い「生き延び方」も考えるはずだからだ。多分。

「狼が出たぞ」イメージ不景気報道は報道の一部として主張すべきであるし、あえてそれから目をそらす・そらさせたのでは戦中の「報道管制」に他ならない。ただし、過剰な、あるいはより分け過ぎるものも、場合によってはそれに等しいものになるのではないだろうか。

過剰報道による注意の引きつけは、いわば「猫だまし」と同じ。相手は驚き、ひるみ、そして無防備状態になってしまい、技をかけた側の言いなりになる。しかし同時に相手にはそれなりの不信感・疑心暗鬼が残る。何度も続けば慣れて来るので、より強い「猫だまし」が必要になるし、受けた側の反発も強いものになる。

ここ数か月における急速な「景気判断理由集」内におけるマスコミへの反発の声の高まりは、その過程が表面化した可能性は否定できない。それが「インターネット傾注者」に限らない、全体に広まりつつある。不景気の中で、財務的な問題以外の面で(きっかけはそれそのものだが)、大きな動きが生じるかもしれない。

(終わり)

■一連の記事:
【マスコミ自らがあおる「風評」の被害を景気ウォッチャー調査から調べてみる(1)……最新データの抽出】
【マスコミ自らがあおる「風評」の被害を景気ウォッチャー調査から調べてみる(2)……過去2年間の登場件数をグラフ化する】
【マスコミ自らがあおる「風評」の被害を景気ウォッチャー調査から調べてみる(3)……「なぜか」を考え、「何を示しているのか」を推測してみる】

■関連記事:
【「『報道しないこと』これがマスコミ最強の力だよ」-あるマンガに見る、情報統制と世論誘導】


トリガー意見:投象ボウイ様。Thanks!

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