【更新】【転送】若年層の正社員・非正規社員、派遣社員などの割合

2009/01/13 12:00

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派遣社員イメージ先に【職種別有効求人倍率】で求人倍率やいわゆる「派遣村」など、雇用、特に非正規労働者の問題について触れた。その際、調査資料(というよりブログや新聞社の記事)上などで、「若年層の3割は派遣社員」という言い回しを目にした。全年齢層においては【「仕事場は正社員2人に非正社員1人」、派遣労働者の割合は4年間で2倍強に増加】にもあるように「3割強が非正規社員」で間違いない。だが、派遣社員は5%未満。若年層の割合が多少大きいことは推定できるが、何か勘違いをしているのではないか。ということで今回資料を縦横し、色々と調べてみることにした。


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「若者の教育とキャリア形成に関する調査について」から

まず行き着いたのは[若者の教育とキャリア形成に関する調査について]。2008年10月に首都大学東京から発表された論文。こちらは独自調査の結果によるもので、それによると20歳の回答者のうち正社員は5割強。残りのうち3割が臨時雇用やアルバイト。派遣社員は合わせて5%強、契約社員の7.3%も合わせれば12.9%となる。恐らくはこのデータを勘違いして「派遣社員は3割」としてしまったのではないだろうか。

回答者の現状の立ち位置
回答者の現状の立ち位置

20歳で現在就労中の人の就労タイプ(学生によるアルバイトは含まず)
20歳で現在就労中の人の就労タイプ(学生によるアルバイトは含まず)

ただしこのデータを読むにはいくつか注意が必要になる。まずは独自調査のため、サンプル数は沖縄を除く全国で1361、沖縄で330(20歳人口の分布比による調整はしてある)と、後述のものと比べるとやや母数が少ないこと。また、下の「20歳で現在就労中の人の就労タイプ」、つまり今記事のテーマに該当するデータは、「20歳時点で就労している人”のみ”」を対象としていること。つまり、「20歳時点で高等教育を受けている人」「家事見習いをしている人」などは含まれていないデータ。すなわち基本的に「中卒・高卒」あるいは「大学中退」の人たちを対象としたものと認識する必要がある。

後述する「平成19年就業構造基本調査」の内部でも語られているが、学歴が高いほど正規社員の割合は高まる傾向にある。ところが今データでは高等教育課程の人たちは(20歳時点で学生のため)当然ながら含まれていない。にも関わらず「若年層全体の割合」と誤認してしまう可能性があるため、気をつけねばならない(やや余談だが、【25歳未満の非正規雇用率は72%に急増中、ただし……】にもあるように、高等教育機関に入学している人の割合は2008年で76.8%それと比較して約20ポイントも低い母体データは、どうしたものだろうか)。

「雇用の多様化の変遷:1994-2003」から

続いて参考にしたのは、独立行政法人 労働政策研究・研修機構が2006年に作成した資料【雇用の多様化の変遷:1994-2003】。厚生労働省が作成した「就業形態の多様化に関する総合実態調査」の1994年、99年、2003年のデータを元に分析したものである。具体的には【第5章 若者の就業選択と非正社員就業の増加要因(PDF)】から。

15-34歳(学生除く)の就業形態
15-34歳(学生除く)の就業形態

こちらは直近データが2003年とやや古いものの、10年間の変遷がある程度分かるようになっている。これによると契約社員は1.4%から5.4%に4ポイント増加しているのが確認できる。その一方正社員の割合は15ポイントほど減っており、契約社員の増加が一因ではあるものの、それがすべてではないことも確認できる(むしろパートタイムの増加の方が大きく寄与している)。

就業構造基本調査(2007年版)から

最後は総務省統計局が発表している【就業構造基本調査】から。このデータのうち、【統計表一覧】から「e-Statの結果表(全国編)」を選び、「平成19年就業構造基本調査」から「全国編「9月末1週間の就業状態に関する表」、さらに「233:年齢,従業上の地位,雇用形態,男女,9月末1週間の就業状態別有業者数」を抽出して作ったのが次の図。なお概要は【結果の概要(PDF)】でも取得可能。色々と参考になるデータが収められているので、時間のある人は目を通しておくとよいだろう。

なおこちらの調査は2007年10月1日時点のデータで、45万世帯の15歳以上の世帯員約100万人を対象としている。また、現在就学中の人も何らかの形で勤めていれば統計上に含まれる。

年齢階層・雇用形態別雇用者数の割合(役員を除く、2007年)
年齢階層・雇用形態別雇用者数の割合(役員を除く、2007年)

20歳-24歳までは高等教育に就学中の人が8割近くを占めているため、彼らによるパート・アルバイト(今データでは単に就労先での呼び名の違いでしかない)が3割強に達しているのが分かる。

一方、高等教育を卒した直後と思われる25-29歳において、もっとも派遣社員の割合が大きいが、これで5.1%。以下年齢を重ねるごとにその割合は小さくなっていく(パートの割合が逆に増加するが、これは主に主婦によるもの)。



最後の総務省統計局のデータで明らかなように、高等教育就学者が卒業をする25歳前後を境に、正社員の比率がグンと跳ね上がっているのが分かる。これは就学中の学生がアルバイトをしている数が非正規社員としてカウントされているのもあるが、それと同時に学歴が高くない若年層が正社員として雇用されにくい実情が現れている。

これについては(今回はテーマ外なのでグラフ化は省くが)先の「2.雇用の多様化の変遷:1994-2003」でも具体的な数字として現れており、例えば2003年時点で高卒が25.1%なのに対し大学・大学院卒は14.6%にとどまっている。ただし非正規社員率の上昇率は後者の方がはるかに上であることにも注意されたい。つまりそれだけ(2003年時点で)雇用情勢そのものが厳しくなっているわけだ。

また、統計局のデータを精査すると、(すでに現状から把握している人も多いだろうが)派遣社員の割合・人数は男性よりも女性の方が多い。人数で見ると2007年時点で男性が82万1000人なのに対し、女性は199万5000人に達している。世間一般に伝えられている派遣問題で登場する人たちの男女比を見るにつけ、「そこに現れない」より多くの女性の該当者のことを考えると、むしろそちらの方が心配になるのは当方だけだろうか。


■関連記事:
【「正社員として採用されないから……」派遣社員が派遣社員である理由】


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