総広告費は7兆1021億円・4マスはラジオのみプラス、インターネットは14.3%の伸び…過去30年あまりの媒体別広告費動向

2023/02/26 03:00

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電通は2023年2月24日、日本の広告費に関する調査報告書「2022年 日本の広告費」を発表した。それによると、電通推定による2022年の日本の総広告費は前年比4.4%増の7兆1021億円であることが明らかにされた。社会のデジタル化を背景に好調なインターネット広告費にけん引される形で市場全体が支えられ、2年連続しての前年比プラスの値となった。今報告書は広告業界に関する多様なレポート・データもあわせて掲載されており、業界の動向を知るのには適した資料である。今回は1985年以降の主要メディア毎の広告費の移り変わりに関して、グラフを作成した上で概況の精査を行う(【発表リリース:2022年 日本の広告費】)。

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新型コロナでの落ち込みから回復する広告業界、突出したインターネット広告費


今回発表された資料によれば、2022年の広告費は前回年から継続する形で前年比でプラスとなるプラス4.4%の7兆1021億円を示した。大きく区分した媒体別ではラジオとインターネット広告費のみが前年比プラスで、それ以外はすべてマイナス。インターネット広告費の3860億円のプラスが一番大きなプラス幅となる。

↑ 媒体別広告費(電通推定、億円)(2018-2022年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、億円)(2018-2022年)

↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2022年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2022年)

2022年は2021年同様に新型コロナウイルス流行の影響、しかも感染の再拡大のために経済活動に大きなダメージが生じているだけでなく、ロシアによるウクライナへの侵略戦争やそれに大きな影響を受けた物価高騰など、広告市場にはネガティブな材料が多かったものの、社会のデジタル化を背景に「インターネット広告費」の成長が好調さを見せ、市場全体が支えられる形となった。総広告費の前年比はプラス4.4%に。新型コロナウイルス流行前直前の2019年における6兆9381億円を超えた金額となる7兆1021億円を示した。

媒体別ではデジタルへのシフトが進み、雑誌はマイナス6.9%、新聞はマイナス3.1%の下げ幅に。テレビメディアはマイナス2.0%、ラジオは4マスでは唯一のプラスとなるプラス2.1%。一方でインターネット広告費はプラス14.3%と大きな成長を示している。プロモーションメディア広告はマイナス1.7%。

2022年の動向としては、全体的には新型コロナウイルスの流行再拡大に加えて、ロシアによるウクライナへの侵略戦争や物価高騰のような大きなマイナス要因があったにもかかわらず、総広告費はプラスを示した。これはインターネット広告費の貢献によるところが多いと解釈できよう。昨年今件記事での文言「インターネット広告費の一人勝ち的構造が、さらに加速した感は否めない」の繰り返しで十分かもしれない。

伸びるメディアと減退するメディアと…1985年以降の動向を確認する


今資料では1985年以降の主要媒体別の広告費一覧(あくまでも電通の推定によるものだが)も掲載されている。その値をグラフ化したのが次の図。なお2014年分から既存の地上波テレビと衛星メディアが統合されテレビメディアとして扱われることになったため、過去の値も再計算した上で反映させている。

↑ 媒体別広告費と名目GDPの移り変わり(電通推定、左軸:GDP・右軸:総広告費、億円)
↑ 媒体別広告費と名目GDPの移り変わり(電通推定、左軸:GDP・右軸:総広告費、億円)

計測基準の変更により、2004年と2005年との間では厳密には連続性は無い(雑誌、インターネット広告、プロモーションメディア広告の3項目で差異が生じ得る)。特にプロモーションメディア広告では変更年前後に大きな差異が生じている。突然、該当広告部門に大規模な変化が生じたわけではないので注意が必要。また2019年からインターネット広告には物販系ECプラットフォーム広告が、プロモーションメディア広告には(展示・映像ほかの区分に)イベントが追加されているため、厳密には連続性は無い。両部門とも大きな上昇が生じているのは、この追加区分によるところが大きい。

中長期の動向をグラフ化すると、(連続性を欠いた部分は別にしても)オーソドックスなプロモーションメディア広告はそれなりに順調な伸びを示していたが、2007年の金融危機勃発以降は下降傾向にあったことが分かる。そして今世紀に入ってから順調に成長を見せているのはインターネット広告のみとなる。テレビメディアは横ばいの動きに見えるし、プロモーションメディア広告は緩やかな下落の動きを示している。

雑誌は2005年に少々ふくらんだようにも見えるが、これは上記で触れたように連続性の寸断によるもので、むしろその差分が生じたあとは下げ幅を拡大している。2011年あたりからは2500億円内外を推移し、ようやく底を打ったところかと思いきや、2015年では再び大きく下げてしまい、その後も失速中。新聞は多少の起伏はあるが1990年代前半にピークを迎えた以降は横ばい、震災でイレギュラーな下げ方を見せたあとやや戻したが、2000年以降は概して継続した減少のさなかにある。テレビメディアは1990年代後半にピークを迎えたあとに横ばい、2009年から2010年にようやく底打ち感があり、その後回復の動きを示したものの、早くも天井感。ここ数年は緩やかな下落過程にある。

そして2020年における総広告費の前年比での下げ幅がリーマンショックに次ぐ大きなものとなった実情も、このグラフから読み取ることができる。特にプロモーションメディア広告の下げ方が著しく、特異な動きとなっているのが分かる。直近の2022年ではラジオとインターネット広告費以外は前年比でマイナスを示してしまっているが、ラジオは低迷状態が継続した中でのわずかな盛り上がりでしかなく、実質的にインターネット広告費以外は低迷感が強く、新型コロナウイルス流行前の水準にまですら届いていない実情が把握できる。

伸び悩んでいる媒体に共通しているのは、1990年代後半(媒体によっては前半)にピークを迎えたあと(広告費の)成長が止まっており、 2002年から2003年あたりから下げ基調を見せていること。この下げ基調の時期は携帯電話やインターネットの普及など、新メディアが世間一般に浸透し始めた時期と一致する。利用者のメディア移行に伴い、広告出稿側も注力・広告費配分のバランス調整を行い、その結果が出たと見るのが無難ではある。

前年比を算出し勢いを確認する


次の図は、各メディア毎の広告費の前年比推移。1枚目に示すのは全項目を対象としたものだが、あまりにも起伏が激しいインターネット広告のために、他の項目がほとんど確認できなくなってしまった。そこでインターネット広告を除いて再構築したのが2枚目のグラフ。後者には名目GDPの動向も追加している。さらに計測基準の変更に関する影響がおよばない、かつインターネット広告の大きな値によるグラフのゆがみも生じない2006年分以降も併せて掲載する。なおインターネット広告とプロモーションメディア広告は2019年から追加された区分込みで計算しているため、少々イレギュラーな形となっている。

↑ 媒体別広告費の移り変わり(電通推定、前年比)
↑ 媒体別広告費の移り変わり(電通推定、前年比)

↑ 媒体別広告費の移り変わり(電通推定、インターネット除く、前年比)
↑ 媒体別広告費の移り変わり(電通推定、インターネット除く、前年比)

↑ 媒体別広告費の移り変わり(電通推定、前年比)(2006年以降)
↑ 媒体別広告費の移り変わり(電通推定、前年比)(2006年以降)

2004-2005年の間で連続性を欠いているため、その部分の起伏がイレギュラーな形(突出する形で大きなプラス)をしているが、それをのぞけば前世紀(20世紀)まで各広告費は名目GDPの変化とほぼ連動する形をとっていたのが分かる。

しかし21世紀に入ってからは主要4マスにおいては「上昇時期における」連動性を失い、一貫して下げ基調にあることが分かる。これは民放連側が指摘していたのと同じ結果・動向である。しかもその一方、2007年に始まる直近の金融危機に伴う名目GDP下落傾向時にはともに落ちており、主要4マスの広告費は「上げる時には伴わず、下げる時には一緒に下がる」状況にある。

他方インターネット広告は2012年以降おおよそ前年比の幅が増加している。これは実金額が加速度的に増加していることを意味する。もっとも、2020年は新型コロナウイル流行の影響で、直近の2022年は新型コロナウイル流行に加え。ロシアによるウクライナへの侵略戦争や物価高騰の影響で、前年比の幅は減少してしまった。とはいえ、前年比そのものがプラスであることに変わりはない。



「広告費全体が削られているから4マス、既存メディアの広告費も減っている」との主張がある。しかしそれはさほど筋が通らない。発表資料には総広告費も掲載されており、それによれば総広告費は名目GDPの伸びにほぼ連動する形(起伏率は名目GDPより総広告費の方が大きい)で上昇。1985年と比べると2022年のそれは約2.03倍の増加を示している。

↑ 総広告費と名目GDPの移り変わり(電通推定、左軸:GDP・右軸:総広告費、億円)
↑ 総広告費と名目GDPの移り変わり(電通推定、左軸:GDP・右軸:総広告費、億円)

また、この数年の動きをよく見直すと、冒頭でも言及している通り、新メディアの伸長に伴い、広告を出稿する側の企業による各広告メディアに対するバランス調整が行われているのが確認できる。詳しくは別の機会に譲ることにするが、新メディアとして成長を続けるメディアと、相対的・絶対的広告力が漸減するメディアとの間で、各企業による広告費のウェイトが明らかに変化しつつある(経済産業省の特定サービス産業動態統計調査からもその動きは確認できる)。昨今の金融危機や震災、そして新型コロナウイルス流行やロシアによるウクライナへの侵略戦争を起因とする物価高騰の影響もまた、それらの動きを加速する一つの出来事に過ぎないと考えれば、この動きも容易に理解できよう。


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