電子書籍の市場規模5510億円、前年から689億円もの増加…「電子書籍ビジネス調査報告書2022」発売

2022/08/07 02:00

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株式会社インプレスのシンクタンク部門であるインプレス総合研究所は2022年8月4日、電子書籍の動向、電子書籍に関する市場規模の推計結果を発表するとともに、その内容を詳細にまとめた出版物【「電子書籍ビジネス調査報告書2022」】を同年8月10日に発行すると発表した。今回はそのリリースで公開された、同調査における一部要項を基に、日本の電子書籍市場動向を確認していくことにする(【発表リリース:2021年度の市場規模は5510億円、2026年には8000億円市場に 『電子書籍ビジネス調査報告書2022』8月10日発売】)。

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今調査によれば直近2021年度(2021年4月1日から2022年3月31日まで)の日本国内における電子書籍市場は5510億円。2019年度発表分までは電子書籍と電子雑誌を別々に区分し、合わせて電子出版市場としていたが、2020年度発表分からは電子雑誌も電子書籍に含めるものとして、合わせて電子書籍と定義している。電子新聞、教科書、企業向け情報提供、ゲーム性の高いもの、さらには書籍や雑誌提供時の通信費、端末本体価格、各種制作費用、広告費などは該当しない。他方、定期購読や月額課金モデル、スマートフォンで読むことに特化した縦スクロールでの購読作品、月額定額制の読み放題の仕組みによる課金は含む。

↑ 電子書籍市場規模(確定分のみ、2014年度以降は電子書籍は機種別区分をせず一括、2020年度以降は電子雑誌を電子書籍に合算、億円)
↑ 電子書籍市場規模(確定分のみ、2014年度以降は電子書籍は機種別区分をせず一括、 2020年度以降は電子雑誌を電子書籍に合算、億円)

↑ 電子書籍市場規模(確定分のみ、電子書籍の内訳、億円)
↑ 電子書籍市場規模(確定分のみ、電子書籍の内訳、億円)

パソコン向け電子書籍市場は当初全体に占める比率も大きかった。当時の携帯電話(従来型携帯電話)では「携帯電話で書籍を購読する」との概念そのものがまだ受け入れがたいものがあったのも一因。しかし従来型携帯電話の普及と性能アップにつれ、パソコンは全体に占める比率を下げていく。さらに機動力の低さもあり、モバイル端末全般に押される形で、2007年度をピークに市場そのものも縮小する。無料化が進んだのも「(金額面換算の)市場」が縮小した原因の一つだろう。

モバイル端末では当初従来型携帯電話による市場拡大が続いていた。以前ブームとなり、若年層から絶大なる支持を受けた「ケータイ小説」を覚えている人も多いはず(中には自ら執筆した経験を有する人もいるに違いない)。ところが2009年度あたりからスマートフォンやタブレットなどの新世代の端末の普及に伴い電子出版への展開も進み、それとともに従来型携帯用の市場は縮小していく。2010年度がピークとなり、以後は急速にその規模を縮め、2012年度ではスマートフォンやタブレット型端末などの新世代プラットフォームに市場規模の上で逆転されてしまうことになる。

2014年度分からは電子書籍において公開資料の限りでは機種別区分が行われていない。これは従来型携帯電話による電子書籍の提供が縮小の一途をたどっているのに加え、機種限定の提供サービスが減ったことなど、機種別区分の必要性が薄れた、意味を成さない実情に対応したものと考えられる。

直近分となる2021年度分だが、電子書籍全体における前年比はプラス14.3%。2020年度ではプラス28.6%だったから、伸び方の勢いが弱まったことになる。これについてリリースでは「年度前半は新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う外出自粛による巣ごもり消費などにより前年度から引き続き追い風であったものの、年度後半は自粛要請が緩和され、外出やリアルの活動も戻り消費行動の変化も見られた(から)」と説明している。

次に示すのは電子書籍市場規模の前年度比成長率。2019年度分までのものは電子書籍と電子雑誌を合算したもので計算している。

↑ 電子書籍市場規模における前年度比成長率
↑ 電子書籍市場規模における前年度比成長率

2017年度までは成長度合いが減少傾向にあったが、2018年度以降は大体増加傾向に転じている。直近年度で成長度合いが減少したのは、上記にある通り新型コロナウイルスの流行による社会環境に変化が生じたからだろう。

今件発表資料ではこれまでの調査結果や業界動向を基にした、インプレス総合研究所による今後の市場動向予想も語られている。その予想を反映させたものが次のグラフ。

↑ 電子書籍市場規模(2020年度以降は電子雑誌を電子書籍に合算、2022年度以降は予想、億円)
↑ 電子書籍市場規模(2020年度以降は電子雑誌を電子書籍に合算、2022年度以降は予想、億円)

先の震災による流通網の混乱や紙・インクなどの素材不足による印刷冊数の減少をカバーするための電子書籍化による提供をきっかけにした、電子媒体化への加速、2011年度から2013年度にかけて急速に進んだ携帯電話市場におけるスマートフォンへのシフト化に伴うシェアの変化や市場規模そのもの拡大、そして新型コロナウイルスの流行による社会様式の大きな変化など、予想がつきにくい要因により、電子出版市場はこれまで何度も大きく様変わりしてきた。今後も類似の情勢変化で大きく様式が、スタイルが、方向性が変わる可能性がある。今件予想はそれらの「ゆらぎ」によるイレギュラーな変動は盛り込みようがなく、あくまでもこれまでの状況変化が今後も継続したらとの仮定に基づいたものだが、十分に参考になる値ではある。

他方、このグラフの限りでは、2021年度以降は電子出版市場規模の成長率が鈍化しており、その動きは継続するとの予想が立てられていることになる。リリース内では理由の説明は無く、気になるところだ。

法人、コミュニティサイトを問わず、ビジネスモデルの一環として、無料で電子書籍・電子雑誌を(一部)提供し、その上でプラスα版や完全版を紙媒体として発売する手法も増えている。電子媒体に紙媒体同様の対価を支払うことに抵抗感を覚える人もまだ多い。そこで電子媒体を試供版・プロモーション素材と割り切り、紙媒体を実対価が期待できる商材メディアとする手法である。この場合、コンテンツの量は確実に増えるが、電子出版「市場」規模はそれほどの伸びは見せなくなる。電子雑誌市場が縮小の動きを見せているのは、あるいはその「お試し版的な情報公開の場」として、電子雑誌を位置づけるとの認識が少なからず、特にコミック系にあるからなのかもしれない。

インターネット界隈は各種技術の発達や市場動向に伴い、大きく様変わりしていく。電子出版市場は周辺業界を巻き込む形で、出版物全体としての概念、様相も少しずつ、そして確実に変化を続け、従来の紙媒体における市場の概念を超え、領域拡大を遂げていくに違いない。


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