2023年3月度外食産業売上プラス18.8%…16か月連続の前年比プラス
2023/04/25 14:00

日本フードサービス協会は2023年4月25日付で、同協会の会員会社で構成される外食産業の市場動向調査における最新値となる、2023年3月度の調査結果を公開した。それによると同月の総合売上は前年同月比でプラス18.8%を示した。新型コロナウイルス流行の収束傾向や気温の上昇、マスク緩和などによる人の流れの増加と、原材料費などの高騰により行われた商品価格の値上げが原因(【日本フードサービス協会:発表リリースページ】)。
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今調査はファストフードやファミレス、パブレストランや居酒屋、ディナーレストラン、喫茶店などを対象としている。対象数は事業者数が223、店舗数は3万6589店舗。今回月は前回月と比較すると事業社数は減少、店舗数も減少している。
全業態すべてを合わせた2023年3月度売上状況は、前年同月比で118.8%となり、18.8%の増加を記録した。これは前回月から継続する形で16か月連続の増加。前年同月と比べると日取り(休日や土曜日の日数)の上では休日は変わらず・土曜日も変わらずで、売上の観点では差し引きゼロ。気象環境では雨天日は東京は多く・大阪は少ない、平均気温は東京・大阪ともに高めで、客足への影響判断は足し引きでプラスと判断できる。
気温の上昇や3月13日からのマスク着用の個人判断化などの動きから人の流れは増加し、これが売上増につながっている。さらに行楽需要や宴会需要なども大きな底上げ要因に。結果として客数は全体では前年同月比でプラス8.0%を示した。一方で客単価はプラス10.0%となり、結果として総合売上はプラス18.8%に。
業態別に詳しく動向を見ると、ファストフードは全体では前回月から継続する形で25か月連続のプラス(プラス10.9%)。ハンバーガーチェーン店がメインの洋風だが、そのメイン企業となるマクドナルドは、ファストフード全体をけん引するかのような好調さを示している。今回月では「コロナ全盛期ほどの伸び率ではないが引き続き堅調に推移」と説明されている。
なおマクドナルド単体の2023年3月における営業成績はプラス6.4%(売上、既存店、前年同月比)とプラスを示している。客数はマイナス1.6%、客単価はプラス8.2%と堅調な伸び。
牛丼チェーン店を含む和風は、客数はプラス7.5%、客単価はプラス4.9%となり、売上はプラス12.8%。麺類は客数プラス7.8%、客単価はプラス10.5%となり、売上はプラス19.2%。和風は「消費意欲の高まりが売上を押し上げ」とある。持ち帰り米飯/回転寿司は売上がプラス8.4%。「年度の変わり目の歓送迎やWBC観戦などでテイクアウト需要が増え」とある。
ファミリーレストラン部門は客数ではプラス14.2%、客単価はプラス10.5%、売上はプラス26.2%。新型コロナウイルス流行前との比較となる3年前同月比では失速を示している(売上マイナス6.7%)。
パブ/居酒屋部門では、パブ・ビアホールの売上はプラス104.5%、居酒屋の売上はプラス82.6%。部門全体では売上はプラス89.4%を示した。「酒類の提供制限という“足かせ”がはずれて以来、個人客やインバウンド需要の堅調が続き、送迎会シーズンの中小宴会が回復傾向」とポジティブな表現がある一方で「コロナ前のような大規模宴会は戻りが鈍く、二次会需要もほぼ見られず」との話もある。
ディナーレストラン(高級レストランに代表されるリッチスタイルな専門飲食店)は客数はプラス25.6%、客単価はプラス8.4%で売上はプラス36.2%を示した。「中規模の歓送迎会およびインバウンド客と個人客の増加が売上と客単価を下支え」との説明がある。
今回月で73回目となるプレミアムフライデーの影響だが、解説コメントでは一切そのフレーズは確認できなかった。新型コロナウイルスの流行でそれどころではない、そもそも在宅勤務が増えているため実施する機会もないのが実情だろう。

↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2023年3月分)

↑ 外食産業売上前年同月比(業態別)(2023年3月)

↑ 外食産業売上3年前同月比(業態別)(2023年3月)
行楽・宴会需要恩恵。
2015年7月からは軟調化開始から1年が経過することもあり、該当事業の「前年同月比における」マイナス幅は縮小。そして昨今ではヒット作も相次ぎ、数字の上でも明らかに復調している。現在はかつて自他ともに認められていた「洋風、そしてファストフード全体のけん引役」の立場に戻り、月次で毎月のように売上高の前年同月比1割前後のアップを示している。今後どこまで良好な数字を見せ、さらには外食全体の機関車的役割を果たすのか楽しみではある。
ファストフード内の和風のメインとなる牛丼チェーン店だが、吉野家を中心にこれまでの廉価店の店舗イメージから少しずつ、そして確実に、ワンステップ上の価格帯における商品展開を行う業務スタイルにシフトしている。客数の減退と客単価の上昇が連動して起きる状況が継続し、中期的戦略転換が数字となって表れている。
ファミレスは2016年以降は、雰囲気的にそれまでのような好調さとは異なる様相が見えつつある。中食に多分に客を奪われている感はあるが、もう少し状況を眺めたいところ。客数の伸び悩みが顕著ではある。報告書でも「客足が伸びない最近の傾向」との表記があるほど。しかし焼き肉だけは例外で、客数が伸び続けており、ファミレス部門におけるトレンドが変化しているのだろう。チェーンストアでも精肉部門は堅調なことから、食生活の変化の波に乗っているようだ。

牛丼業界の動きやディナーレストランの動向を併せ見ると、外食産業でも消費の二極化が進んでおり、中庸的なポジションの市場が縮小している感は否めない。また消費者の中食志向の拡大や高齢化により、客の一部が奪われている・遠のいている雰囲気も見受けられる(特に持ち帰りができないファミリーレストラン)。吉野家やマクドナルドが夕食メニューに力を入れているのも、高齢化に合わせた動きの可能性も否定できない。さらにこれらの動きは総じて、客単価の引き上げという戦略目標にもつながっているとの解釈もできる。客単価の引き上げはファミリーレストランにも生じており、こちらも結果としては売上維持、さらには売上増につながる成果を示している。

特にその店舗スタイルや就業者向けのビジネスの色合いが強いパブや居酒屋は大きな痛手が継続している。コロナ禍前の3年前同月比では燦燦たる状況である。特にここ数か月の報告書でははっきりとした形で、人々の生活習慣が変わり夜間の外食忌避傾向や法人の居酒屋離れが強いままとなっている、と表記されているのは注目すべきところだ。また宴会需要は中小規模のものは戻りを見せているが、大規模なものや夜遅い時間帯、そして二次会需要はからきしとのこと。
次回月の2023年4月分では、今回月に続き行動制限などは無く、例年と比べても暖かい日が続いており、客足の戻りは期待できる。他方、原材料価格の高騰などは継続中であり、売上そのものはともかく、ビジネスの上では大変な状態が続くに違いない。
また報告書では今の時点で「5月8日にコロナが「5類」に引き下げられ、規制の無い社会・経済活動を取り戻せるように期待したい」との表記があり、大規模な宴会や深夜帯の需要回復に期待を寄せていることがうかがえる次第ではある。
↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである
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