業界規模は3兆2975億円・お菓子の売れゆき具合
2022/04/07 04:00

羊かんやおまんじゅうのような伝統的な和菓子、ロールケーキやシュークリームのような洋菓子、さらにはガムやチョコレート、アイスクリームにいたるまで、お菓子は食生活にメリハリを与え、心を和ませ、憩いのひとときを演出してくれる。それらお菓子を開発・生産・販売するお菓子業界の動向を記した年次レポートとして、全国菓子卸商業組合連合会と全日本菓子協会が共同で設立したe-お菓子ねっと製販代表会議運営による「e-お菓子ねっと」では2022年3月31日に、2021年分の菓子統計データを公開した。今回はその値を基に、2021年のお菓子業界の動向を精査する(【発表リリース一覧ページ】)。
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2021年の概況
元来お菓子は景気動向の影響をあまり受けない商品として知られている。単価が安く手頃に購入できる嗜好品であること、創意工夫がしやすく、時節に合わせた新商品を臨機応変に創れること、他商品との組み合わせが比較的容易に行えることなどがその理由。昨今ではコンビニによる独自ブランドでのデザート系菓子の展開、高齢層のコンビニ・スーパーの多用化に伴うそれら店舗での積極的な和菓子をはじめとした懐かし系のお菓子の導入、さらには健康を意識した素材や製法に通常品よりも配慮したことをうたった健康志向的なお菓子など、多様な業界内の動きも確認できる。一方、世界全体で見れば景気がよくなるほど甘味の材料とされる砂糖の消費量が多くなる傾向もあり、好景気ほどさらに売上を伸ばせることには違いない。
直近の2021年の動向としては、全体では新型コロナウイルスの流行を受けて大幅に売上が減少した前年2020年と比べれば持ち直しを見せ、生産数量、生産金額、小売金額ともに、前年を上回る形となった。
今件リリースで取り上げられている、お菓子の品目区分の具体例は次の通り。
キャンディ類、キャラメル、ドロップ、グミ、錠菓、ゼリー、清涼菓子、マシュマロ
・チョコレート
チョコレートI(チョコレート生地100%、板チョコ、粒チョコなど)、チョコレートII(同60-100%未満、ナッツチョコなど)、チョコレート菓子(同20-60%未満、被覆チョコなど)
・チューインガム
板ガム、粒ガム、風船ガム、シュガーレスガム
・せんべい
小麦粉せんべい
・ビスケット
ビスケット、クッキー、クラッカー、プレッツエル、乾パン、パイ、サンドビスケット、その他
・米菓
あられ(もち米製のもの)、せんべい(うるち米製のもの)
・和生菓子
ようかん、まんじゅう、その他
・洋生菓子
ケーキ、カステラ、ドーナツ、その他
・スナック菓子
ポテト系、コーン系、小麦粉系、米粉系のもの
・油菓子
かりんとうなど
・その他
豆菓子、甘納豆、玩具菓子、おこし、砂糖漬菓子など
※半生菓子(一般的には、水分が10-30%のものをいう)
小物ようかん、小最中、小まんじゅう、カステラ、カップケーキ、バウムクーヘンなど
目立つ動向を示したいくつかの品目区分について、概要を確認すると次の通りとなる。
新型コロナウイルス流行による外出自粛やマスク着用の常態化の影響を受け、観光地の土産店や都市部コンビニ、イベントなどでの販売が減少したことで大きく減少。一方でグミやマシュマロなどの新商品開発が好調だったことや、飴菓子の輸出が伸びたことで、減少幅は最小限にとどめられる。
・チョコレート
チョコレート製品Iは健康志向などが継続して売上に貢献して前年並み、チョコレート製品IIも健康志向の影響で売上などは伸びる。チョコレート菓子は前年の巣ごもり需要の反動で前年を下回る。全体としては前年並み。
・チューインガム
新型コロナウイルス流行による外出自粛などの影響から、板ガムは苦戦。「風船ガム」はキャラクター商品などが好評を博して前年比でプラスの売上を記録。粒ガムは前年比でほぼ変わらず。
・せんべい(小麦粉)
新型コロナウイルス流行による外出自粛などの影響から、土産菓子の需要が大きく減る状況は前年から変わらず。
・和生菓子
家庭内消費は堅調なものの、彼岸の仏教催事や入卒業時の謝恩会、各種会合などでの和菓子需要が大きく減少。交通機関の利用客減少による販売機会の喪失も需要減少の原因に。ただし秋以降には感染者数の減少に伴い各種需要が伸びて一部で活況を示し、全体としては前年を上回る売上に。
・スナック菓子
巣ごもり化により家庭向け商品は大きな売上増。土産用やインバウンド、イベント用、オフィス向け需要は減少した。ウエイトの大きなポテト系スナックは、国産ばれいしょの不作や海上輸送コンテナのひっ迫による原料調達上の問題、通年での安定供給確保のための出荷量調整によって、売上が落ち込んだ。全体としてはほぼ前年並みに。
2011年の震災をきっかけに生じた乾パンなどの防災・備蓄用菓子への特別需要は2013年で終息を迎え、その影はもはや無い。消費者の健康志向の強い意志、原材料価格の上昇、誘因要素となるキャラクタの有無、天候などの自然の動向など、さまざまな要因がお菓子の売上を左右していることが分かる。特に2020年以降は新型コロナウイルスの流行で社会様式が大きく変化し、その影響を多様な方面で受けている。
一方でお菓子そのものの品質や内容、種類とは別に、中小規模の店舗における後継者不足、廃業問題も今後さらに大きな問題となりそうな感はある。書籍同様販売プラットフォームが減ればそれだけ市場は縮小しうる(もっとも業界全体の商域カバーとしてはコンビニがその分をカバーして余りあるのも否定はできない)。
またそれとは別に、チューインガムの中期的な減退傾向が目にとまる。特に幼児を含む若年層に対するアピール不足が懸念されている。業界側でも多様な新商品の開発を続け、奇抜さ、目新しさで新たなユーザーの開拓を模索しているが、消費者側のハートをつかむまでには至っていない。
グラフで分かるお菓子業界
さて肝心の区分別の小売における売上だが、チョコレートがトップで5520億円。次いでスナック菓子が4570億円。和生菓子がそれに続き、合計は3兆2975億円(小売ベース)。前年比733億円増(プラス2.27%)。

↑ 菓子小売金額・構成比率

↑ 菓子小売金額(億円)

↑ 菓子小売金額(億円)(2021年)
社会の高齢化を受けて米菓のシェア・売上は伸びを示している。またせんべいも下げ止まりを見せ、和風や柔らかい系統のお菓子が勢いを見せている雰囲気を感じられる。ただしせんべいはこの1、2年に限れば、新型コロナウイルスの流行による観光需要の減少の影響を受け、売上は大きく減っている。
洋系だが柔らかいとの観点では合致する、そして機能系商品で若年層にも受け入れられているチョコレートは急成長。飴菓子もこの数年でマイナス基調からプラス基調に転じている。ただし飴菓子もせんべい同様、新型コロナウイルスの流行による観光需要減少の影響を受け、売上は急減してしまっている。一方でチューインガムの厳しさがひときわ目立つ。元々小さめだったシェアがさらに縮小している。
スナック菓子やビスケットは順調な成長ぶり。新型コロナウイルスの流行という社会環境の変化の中でも、家庭内需要の増加の恩恵を受け、売上を伸ばしている。
最後は売上の前年比。グラフが読み難くならないよう、直近3年分に限定した。区分別のすう勢がよく分かるグラフに仕上がっている。

↑ 菓子小売金額(前年比)(2019-2021年)
2021年においては前年の2020年が新型コロナウイルスの流行で大きく売上を落としたこともあり、それとの比較となることから、前年比のマイナス幅も小さなものとなっている。毎年大きな減少を続けているチューインガムが、前年比でプラスマイナスゼロ%となったのが象徴的。ただしそのような中でも、せんべいや飴菓子、油菓子のような、観光需要の影響を受けているものは、2021年でも厳しい状況となっている。

他方、コンビニの日常生活への浸透や高齢化社会の到来による消費層の変化、機能性商品の需要増加、通販需要の拡大、さらに昨今では海外からの観光客の増加など、多様な変化が起きている。そして商品区分別のすう勢を見るに、全般的には和風、やわらか系、すぐに食べられる系統のお菓子が伸び(チョコレート、米菓、生菓子)、食べるのに時間を要するタイプの菓子(油菓子、チューインガム、飴菓子のうち堅い系。グミは伸びている)が敬遠される動きがあるようにも見える。「スナック感覚」との言葉ではないが、お手軽感がお菓子全体のトレンドの一環として浸透しているのだろうか。
シニア層が積極的に消費を行い、市場に影響を及ぼすようになったこともあり、機能性を重視した、あるいは健康志向の商品への需要がこれまで以上に高まりを見せているのも特徴の一つ。さらにそれと連動する形ではあるが、少人数世帯化や「チョイ食べ」需要の拡大に伴い、少量パッケージ化や個別包装商品の需要も増加している。同じ商品で需要に合わせた一工夫を凝らすことで、大きな飛躍を見せた商品も少なくない。
他方2020年で生じた新型コロナウイルス流行による社会様式の大きな変化は、2021年の現時点でもほぼ継続しており、売上にも大きな影響を与えている。そして今後もしばらくは同様の環境が続くものと考えられる。さらに新型コロナウイルス流行という事態が鎮静化しても、在宅勤務など変化の一部はそのまま継続され常態化する可能性もある。お菓子業界も社会の変化に合わせたかじ取りが求められよう。
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