2023年2月度外食産業売上プラス23.5%…15か月連続の前年比プラス
2023/03/27 14:00

日本フードサービス協会は2023年3月27日付で、同協会の会員会社で構成される外食産業の市場動向調査における最新値となる、2023年2月度の調査結果を公開した。それによると同月の総合売上は前年同月比でプラス23.5%を示した。新型コロナウイルス流行の収束傾向や気温の上昇、マスク緩和などによる人の流れの増加と、原材料費などの高騰により行われた商品価格の値上げが原因(【日本フードサービス協会:発表リリースページ】)。
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今調査はファストフードやファミレス、パブレストランや居酒屋、ディナーレストラン、喫茶店などを対象としている。対象数は事業者数が230、店舗数は3万6690店舗。今回月は前回月と比較すると事業社数は減少、店舗数も減少している。
全業態すべてを合わせた2023年2月度売上状況は、前年同月比で123.5%となり、23.5%の増加を記録した。これは前回月から継続する形で15か月連続の増加。前年同月と比べると日取り(休日や土曜日の日数)の上では休日は変わらず・土曜日は1日少なく、売上の観点ではマイナス。気象環境では雨天日は東京は少なく・大阪は多い、平均気温は東京・大阪ともに高めで、客足への影響判断は足し引きでプラスと判断できる。
新型コロナウイルスの流行第8波が収束に向かいつつあり、気温の上昇やマスク着用緩和などの動きから人の流れは増加し、これが売上増につながっている。一方で、原材料費をはじめとしたコストの急騰により、商品価格の値上げを余儀なくされたパターンが相次ぎ、それが売上を底上げした感は否めない。結果として客数は全体では前年同月比でプラス12.4%を示した。一方で客単価はプラス9.8%となり、結果として総合売上はプラス23.5%に。
業態別に詳しく動向を見ると、ファストフードは全体では前回月から継続する形で24か月連続のプラス(プラス10.2%)。ハンバーガーチェーン店がメインの洋風だが、そのメイン企業となるマクドナルドは、ファストフード全体をけん引するかのような好調さを示している。今回月では「価格改定が相次ぐ中で、バリューキャンペーンが好評」と説明されており、2023年1月16日からマクドナルドで行われた商品価格の引き上げがセールスに貢献したようだ。
なおマクドナルド単体の2023年2月における営業成績はプラス3.0%(売上、既存店、前年同月比)とプラスを示している。客数はマイナス2.2%、客単価はプラス5.3%と堅調な伸び。
牛丼チェーン店を含む和風は、客数はプラス7.0%、客単価はプラス5.1%となり、売上はプラス12.4%。麺類は客数プラス19.1%、客単価はプラス8.8%となり、売上はプラス29.6%。和風は「朝食クーポンの配布などで固定客獲得に努め」とある。持ち帰り米飯/回転寿司は売上がプラス8.1%。「複数の回転寿司店をターゲットにした迷惑動画が一部店舗の客足に影響したが、値上げによる客単価の上昇(が貢献)」とある。例の迷惑動画は実売上にもネガティブな影響を与えたようだ。
ファミリーレストラン部門は客数ではプラス27.8%、客単価はプラス8.8%、売上はプラス39.6%。新型コロナウイルス流行前との比較となる3年前同月比では失速を示している(売上マイナス4.9%)。
パブ/居酒屋部門では、パブ・ビアホールの売上はプラス181.9%、居酒屋の売上はプラス184.8%。部門全体では売上はプラス183.9%を示した。「昨年のような営業規制がとれ客足の戻りが回復基調」「個人客やインバウンド需要の回復傾向に加え、企業等の大きめの宴会も少しずつ増えている」と久々にポジティブな表現が並ぶ。
ディナーレストラン(高級レストランに代表されるリッチスタイルな専門飲食店)は客数はプラス54.9%、客単価はプラス9.3%で売上はプラス69.4%を示した。「大企業の大規模な宴会は戻らないものの、個人客に加え、国内旅行の団体客やインバウンド客などが少しずつ戻り」との説明がある。
今回月で72回目となるプレミアムフライデーの影響だが、解説コメントでは一切そのフレーズは確認できなかった。新型コロナウイルスの流行でそれどころではない、そもそも在宅勤務が増えているため実施する機会もないのが実情だろう。

↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2023年2月分)

↑ 外食産業売上前年同月比(業態別)(2023年2月)

↑ 外食産業売上3年前同月比(業態別)(2023年2月)
制限無く年始需要恩恵。
2015年7月からは軟調化開始から1年が経過することもあり、該当事業の「前年同月比における」マイナス幅は縮小。そして昨今ではヒット作も相次ぎ、数字の上でも明らかに復調している。現在はかつて自他ともに認められていた「洋風、そしてファストフード全体のけん引役」の立場に戻り、月次で毎月のように売上高の前年同月比1割前後のアップを示している。今後どこまで良好な数字を見せ、さらには外食全体の機関車的役割を果たすのか楽しみではある。
ファストフード内の和風のメインとなる牛丼チェーン店だが、吉野家を中心にこれまでの廉価店の店舗イメージから少しずつ、そして確実に、ワンステップ上の価格帯における商品展開を行う業務スタイルにシフトしている。客数の減退と客単価の上昇が連動して起きる状況が継続し、中期的戦略転換が数字となって表れている。
ファミレスは2016年以降は、雰囲気的にそれまでのような好調さとは異なる様相が見えつつある。中食に多分に客を奪われている感はあるが、もう少し状況を眺めたいところ。客数の伸び悩みが顕著ではある。報告書でも「客足が伸びない最近の傾向」との表記があるほど。しかし焼き肉だけは例外で、客数が伸び続けており、ファミレス部門におけるトレンドが変化しているのだろう。チェーンストアでも精肉部門は堅調なことから、食生活の変化の波に乗っているようだ。

牛丼業界の動きやディナーレストランの動向を併せ見ると、外食産業でも消費の二極化が進んでおり、中庸的なポジションの市場が縮小している感は否めない。また消費者の中食志向の拡大や高齢化により、客の一部が奪われている・遠のいている雰囲気も見受けられる(特に持ち帰りができないファミリーレストラン)。吉野家やマクドナルドが夕食メニューに力を入れているのも、高齢化に合わせた動きの可能性も否定できない。さらにこれらの動きは総じて、客単価の引き上げという戦略目標にもつながっているとの解釈もできる。客単価の引き上げはファミリーレストランにも生じており、こちらも結果としては売上維持、さらには売上増につながる成果を示している。

特にその店舗スタイルや就業者向けのビジネスの色合いが強いパブや居酒屋は大きな痛手が継続している。コロナ禍前の3年前同月比では燦燦たる状況である。特にここ数か月の報告書でははっきりとした形で、人々の生活習慣が変わり夜間の外食忌避傾向や法人の居酒屋離れが強いままとなっている、と表記されているのは注目すべきところだ。
次回月の2023年3月分では、行動制限などは無く、例年と比べても暖かい日が続いており、客足の戻りは期待できる。他方、今回月の報告書にも言及があったが、原材料価格の高騰などは継続中であり、売上そのものはともかく、ビジネスの上では大変な状態が続くに違いない。
↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである
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