2023年1月度外食産業売上プラス15.3%…14か月連続の前年比プラス

2023/02/27 15:00

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日本フードサービス協会は2023年2月27日付で、同協会の会員会社で構成される外食産業の市場動向調査における最新値となる、2023年1月度の調査結果を公開した。それによると同月の総合売上は前年同月比でプラス15.3%を示した。新型コロナウイルス流行の第8波は1月上旬にピークを迎えたが外食への影響はひかえめで、年始需要が売上を底上げした。一方で原料高や光熱費の高騰に伴う商品価格の上昇が客単価アップを引き起こし、売上に多分な影響を与えた可能性が指摘されている(【日本フードサービス協会:発表リリースページ】)。

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今調査はファストフードやファミレス、パブレストランや居酒屋、ディナーレストラン、喫茶店などを対象としている。対象数は事業者数が236、店舗数は3万6919店舗。今回月は前回月と比較すると事業社数は増加、店舗数も増加している。

全業態すべてを合わせた2023年1月度売上状況は、前年同月比で115.3%となり、15.3%の増加を記録した。これは前回月から継続する形で14か月連続の増加。前年同月と比べると日取り(休日や土曜日の日数)の上では休日は変わらず・土曜日も変わらずで、売上の観点ではプラスマイナスゼロ。気象環境では雨天日は東京は多く・大阪も多い、平均気温は東京・大阪ともに高めで、客足への影響判断は足し引きでプラスマイナスゼロと判断できる。

新型コロナウイルスの流行第8波が事実上到来し1月上旬にピークを迎えたものの、行動制限は無く、年始需要を中心に客足の回復が生じている。結果として客数は全体では前年同月比でプラス6.7%を示した。一方で客単価はプラス8.1%となり、結果として総合売上はプラス15.3%に。

業態別に詳しく動向を見ると、ファストフードは全体では前回月から継続する形で23か月連続のプラス(プラス10.2%)。ハンバーガーチェーン店がメインの洋風だが、そのメイン企業となるマクドナルドは、ファストフード全体をけん引するかのような好調さを示している。今回月では「期間限定商品、季節商品などのフェアメニューが好評」と説明されており、「サムライマック」シリーズや年始イベント向けのアイテムがセールスに貢献したようだ。

なおマクドナルド単体の2023年1月における営業成績はプラス14.6%(売上、既存店、前年同月比)とプラスを示している。客数はプラス4.1%、客単価はプラス10.1%と堅調な伸び。

牛丼チェーン店を含む和風は、客数はプラス3.6%、客単価はプラス5.8%となり、売上はプラス9.6%。麺類は客数プラス5.8%、客単価はプラス10.9%となり、売上はプラス17.4%。和風は「引き続きテイクアウト・デリバリーの堅調」とある。持ち帰り米飯/回転寿司は売上がプラス5.1%。「「回転寿司」の年始のテイクアウトが好調で、また、主力メニューの価格据え置きが奏功したところもあり」とある。

ファミリーレストラン部門は客数ではプラス12.6%、客単価はプラス6.2%、売上はプラス19.6%。新型コロナウイルス流行前との比較となる3年前同月比では失速を示している(売上マイナス3.7%)。

パブ/居酒屋部門では、パブ・ビアホールの売上はプラス78.9%、居酒屋の売上はプラス50.9%。部門全体では売上はプラス59.0%を示した。「酒類の提供制限があった昨年との対比」「売上の回復に頭打ち感」「コロナを気にしない個人客の来店は増えたが、企業・団体等の宴会自粛の傾向は続いており、飲酒業態の復調を難しくしている」と表面上の数字の堅調さとは裏腹の厳しい実情が説明されている。

ディナーレストラン(高級レストランに代表されるリッチスタイルな専門飲食店)は客数はプラス27.3%、客単価はプラス5.2%で売上はプラス34.0%を示した。「個人客の宴席は引き続き回復傾向にあり、全国旅行支援やインバウンドの増加で需要が回復した店舗も見られ」との説明がある。一方で「法人宴会や夜間の集客は戻らず」との話も。

今回月で71回目となるプレミアムフライデーの影響だが、解説コメントでは一切そのフレーズは確認できなかった。新型コロナウイルスの流行でそれどころではない、そもそも在宅勤務が増えているため実施する機会もないのが実情だろう。

↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2023年1月分)
↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2023年1月分)

↑ 外食産業売上前年同月比(業態別)(2023年1月)
↑ 外食産業売上前年同月比(業態別)(2023年1月)

↑ 外食産業売上3年前同月比(業態別)(2023年1月)
↑ 外食産業売上3年前同月比(業態別)(2023年1月)

新型コロナ第八波ピークも
制限無く年始需要恩恵。
2014年4月の消費税率改定に伴う消費性向の減退影響も直接的にはあまり生じなかった外食産業だが(今件各種公開値は税抜比較で行っているため、消費税率引き上げに伴う「税込の」売上上昇は、公開される業績動向には直接は影響を与えない)、2014年夏における天候の悪化、そして中国産鶏肉食材問題と2つのイレギュラー的なマイナス要素が足を引っ張り、むしろ状況は2014年夏以降は低迷感をぬぐえない状態が続いていた。特に後者は食材問題自身の影響に加え、それをきっかけとして業界の一部部門(ファストフード・洋食)における根本的な問題が露呈する形となった。大きな社会問題化した異物混入事件まで加わり、2014年夏以降大きなシェアを有するマクドナルドに相次いでいる状況に、ファストフード部門、さらには外食産業全体が多分に振り回されている感はあった。

2015年7月からは軟調化開始から1年が経過することもあり、該当事業の「前年同月比における」マイナス幅は縮小。そして昨今ではヒット作も相次ぎ、数字の上でも明らかに復調している。現在はかつて自他ともに認められていた「洋風、そしてファストフード全体のけん引役」の立場に戻り、月次で毎月のように売上高の前年同月比1割前後のアップを示している。今後どこまで良好な数字を見せ、さらには外食全体の機関車的役割を果たすのか楽しみではある。

ファストフード内の和風のメインとなる牛丼チェーン店だが、吉野家を中心にこれまでの廉価店の店舗イメージから少しずつ、そして確実に、ワンステップ上の価格帯における商品展開を行う業務スタイルにシフトしている。客数の減退と客単価の上昇が連動して起きる状況が継続し、中期的戦略転換が数字となって表れている。

ファミレスは2016年以降は、雰囲気的にそれまでのような好調さとは異なる様相が見えつつある。中食に多分に客を奪われている感はあるが、もう少し状況を眺めたいところ。客数の伸び悩みが顕著ではある。報告書でも「客足が伸びない最近の傾向」との表記があるほど。しかし焼き肉だけは例外で、客数が伸び続けており、ファミレス部門におけるトレンドが変化しているのだろう。チェーンストアでも精肉部門は堅調なことから、食生活の変化の波に乗っているようだ。

吉呑み現在は可処分所得の減少、中食へのシフト、お酒を飲む機会の変化など、居酒屋にはマイナスとなる環境の変化の真っただ中にある。もっとも居酒屋の業態そのものが時代に取り残されたわけではない。牛丼チェーン店の吉野家が展開している「吉呑み」が堅調さを示し、適用店舗数を続々と増やしている。

牛丼業界の動きやディナーレストランの動向を併せ見ると、外食産業でも消費の二極化が進んでおり、中庸的なポジションの市場が縮小している感は否めない。また消費者の中食志向の拡大や高齢化により、客の一部が奪われている・遠のいている雰囲気も見受けられる(特に持ち帰りができないファミリーレストラン)。吉野家やマクドナルドが夕食メニューに力を入れているのも、高齢化に合わせた動きの可能性も否定できない。さらにこれらの動きは総じて、客単価の引き上げという戦略目標にもつながっているとの解釈もできる。客単価の引き上げはファミリーレストランにも生じており、こちらも結果としては売上維持、さらには売上増につながる成果を示している。

テーブルにもソーシャルディスタンス新型コロナウイルスの影響だが、そもそも論として店舗が自主休業していれば客が来るはずもなく、営業しても(場合によっては自治体からの要請に従う形で)時短や販売品の制限を行うところも多く、イートインは客同士の距離を取るために収容効率が悪化、さらに来店客数そのものが三密忌避気運で少ないことから、客数は激減する形となった。企業も従業員のリスク回避で集団での外食をひかえたり、リモートワークの浸透で出社する人が少ないため催しで外食を使う機会が無くなり、これも大きなマイナスの影響を与えている。疫病の影響である以上、仕方がないとはいえ、衝撃的な値には違いない。

特にその店舗スタイルや就業者向けのビジネスの色合いが強いパブや居酒屋は大きな痛手が継続している。コロナ禍前の3年前同月比では燦燦たる状況である。特にここ数か月の報告書でははっきりとした形で、人々の生活習慣が変わり夜間の外食忌避傾向や法人の居酒屋離れが強いままとなっている、と表記されているのは注目すべきところだ。

次回月の2023年2月分では、行動制限などは無いものの、寒さが厳しさを見せており、さらにインフルエンザの流行の懸念もある。客足がどのような動きを見せるのかは不透明な状況。また今回月の報告書にも言及があったが、原材料価格の高騰などは継続中であり、売上そのものはともかく、ビジネスの上では大変な状態が続くに違いない。


↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである



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