増強3割、今の程度6割、縮小5%足らず…自衛隊の防衛力への要望
2018/03/14 05:00

国際社会情勢の変化、兵器技術の向上、近隣周辺諸国の外交姿勢の変貌・圧力の増加などを受け、自衛隊に対する期待はこれまで以上の高まりを受けている。それではその期待の基板となる防衛力そのものに対する要望は、いかなる状況にあるのだろうか。今回は内閣府が2018年3月12日付で発表した自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査から、その実情を探ることにする(【自衛隊・防衛問題に関する世論調査(平成30年1月調査)】)。
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今調査に関する調査要項は先行記事【自衛隊への好印象度89.8%(最新)】を参照のこと。
「全般的に見て」というただし書き付きの上で、自衛隊の防衛力について回答者の意見として「増強」「縮小」「今の程度」のいずれの状態(変化)を望むかを尋ねたところ、「増強」を望む人は29.1%と3割近くに上った。現状維持を望む「今の程度」は約6割で最大多数の回答率。一方「縮小」回答者は4.5%に留まっている。

↑ 自衛隊の防衛力について(2018年)
男女別では男性の方が「増強」を望む声が強い。年齢階層別では意外にも大きな差異は無い。「今の程度」がやや高齢層で少なめだが、これは「分からない」の増加で圧迫されている形。
その「分からない」は女性や60代以上の人で多いが、女性は「判断にいたるだけの情報・知識を習得していない」、60代以上は戦争体験(見聞も含む)のことを考えると判断が付きにくい結果によるものと思われる。いずれにせよ、「縮小」を望む声は少数派には違いない。
これを前回調査となる2015年当時の回答状況と照らし合わせ、その変移を算出したのが次のグラフ。プラス値が大きいほどその意見が増加した、マイナスほど減少したことを意味する。ただし年齢階層別でもっとも若い層は前回調査が20代だったのに対し、今回では18-29歳となっており、厳密な変移結果とはならない。

↑ 自衛隊の防衛力について(各回答選択肢、2015年から2018年への変移)
30-40代では「増強」が大きく増え、「今の程度」「縮小」「分からない」が減っている。20代(18-29歳)と70歳以上では「増強」が減り「今の程度」「縮小」が増加。50代では「今の程度」が大きく増えて「増強」「縮小」が減少。それぞれの年齢階層における自衛隊の防衛力に対する思惑の違いがよく表れる結果が出ている。他方、男女別ではほとんど差異が出ていないのは興味深い傾向ではある。
これを経年推移で見ると、2009年にややイレギュラーな動きがあったものの、ほぼ少しずつ「増強」意見が増加、「縮小」意見が減少し、「今の程度」がそのままの値を維持している動向が確認できる。

↑ 自衛隊の防衛力について・回答率推移
2009年から2012年にかけては「増強」意見が10%ポイント以上も増加しており、これまでの「割合上では縮小派の分が増強派に移行し、現状維持派はほぼ変わらず」の傾向に変化が生じてきた可能性が見て取れる(同時に「今の程度」も減っており、こちらからも増強派にシフトした人がいるのだろう)。さらに2012年から2015年にかけても同じように「縮小派の減少」「増強派の増加」が同時に起きている。
なお原文では「防衛力」「自衛隊は増強・縮小」との表現のみ。「防衛力」(≒戦力)との表現では戦車や戦闘機、護衛艦など「直接の正面戦力」のみをイメージしがちだが、実際には、特に「防衛力」という言葉からは正面戦力だけで無く、各種支援体制、情報・補給システム、整備能力、柔軟性に富んだ「決まり」の整備、果ては各隊員の士気維持・向上のための仕組みまで含まれる。
2012年以降の「増強派」の増加は震災での活躍ぶり、そして昨今の国際情勢を受けてのものであることは容易に想像できる。しかし正面装備だけで無くそれ以外の「普段は眼に留まることの無い、自衛隊の『力』の一側面」も防衛力を担う大切な要素であることを認識し、全般的・包括的な観点における「防衛力」の整備を果たして欲しいものである。
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