2022年10月度外食産業売上プラス14.8%…11か月連続の前年比プラス
2022/11/25 15:00

日本フードサービス協会は2022年11月25日付で、同協会の会員会社で構成される外食産業の市場動向調査における最新値となる、2022年10月度の調査結果を公開した。それによると同月の総合売上は前年同月比でプラス14.8%を示した。全国旅行支援や水際対策の緩和措置などから客足に回復の動きがあり、商品価格引き上げによる客単価増ともあいまって売上は大きく伸びた。新型コロナ流行前の2019年同月との比較でもプラスを示している(【日本フードサービス協会:発表リリースページ】)。
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今調査はファストフードやファミレス、パブレストランや居酒屋、ディナーレストラン、喫茶店などを対象としている。対象数は事業者数が230、店舗数は3万6996店舗。今回月は前回月と比較すると事業社数は減少、店舗数は増加している。
全業態すべてを合わせた2022年10月度売上状況は、前年同月比で114.8%となり、14.8%の増加を記録した。これは前回月から継続する形で11か月連続の増加。前年同月と比べると日取り(休日や土曜日の日数)の上では土曜日は同数だが休日は1日多く、売上の観点ではプラス。気象環境では雨天日は東京・大阪ともに多く、平均気温は東京・大阪ともに低めで、客足への影響判断はマイナスと解釈できる。
新型コロナウイルスの流行による外出自粛や多人数が集まる場所への忌避感は強いものの、行動制限や営業制限が解除されたことで、客足は戻りを見せている。さらに全国旅行支援や水際対策の緩和措置も客足の回復に大きな貢献を果たしている。
結果として客数は全体では前年同月比でプラス6.3%を示した。一方で客単価はプラス8.0%となり、結果として総合売上はプラス14.8%に。
業態別に詳しく動向を見ると、ファストフードは全体では前回月から継続する形で20か月連続のプラス(プラス9.9%)。ハンバーガーチェーン店がメインの洋風だが、そのメイン企業となるマクドナルドは、ファストフード全体をけん引するかのような好調さを示している。今回月では「秋の定番メニューと新商品の好調に、宣伝効果もあり」と説明されており、月見バーガーシリーズが好評を博したようだ。結果として売上はプラス10.8%とプラスに。ちなみに3年前同月比、つまり新型コロナウイルス流行前となる2019年10月との比較では、プラス35.9%を示している。
なおマクドナルド単体の2022年10月における営業成績はプラス9.0%(売上、既存店、前年同月比)とプラスを示している。客数はプラス1.4%、客単価はプラス7.5%と堅調な伸び。
牛丼チェーン店を含む和風は、客数はプラス1.8%、客単価はプラス9.1%となり、売上はプラス11.0%。麺類は客数プラス5.5%、客単価はプラス7.1%となり、売上はプラス13.0%。和風は「朝食の販売促進とデリバリーの増加」とある。持ち帰り米飯/回転寿司は売上がプラス5.1%。「「持ち帰り米飯」でのサイドメニューの増加や価格改定による客単価上昇」とある。
ファミリーレストラン部門は客数ではプラス13.4%、客単価はプラス6.0%、売上はプラス20.3%。新型コロナウイルス流行前との比較となる3年前同月比では失速を示している(売上マイナス3.3%)。
パブ/居酒屋部門では、パブ・ビアホールの売上はプラス54.1%、居酒屋の売上はプラス47.6%。部門全体では売上はプラス49.7%を示した。「小人数の個人客中心に回復基調が続いているが、夜間の二次会需要や法人の宴会需要などは戻りが非常に鈍い」と説明されている。
ディナーレストラン(高級レストランに代表されるリッチスタイルな専門飲食店)は客数はプラス17.4%、客単価はプラス6.3%で売上はプラス24.8%を示した。「コロナへの警戒感が薄れたせいか店内需要が戻りはじめ」「観光地などの立地によっては、訪日外国人客も戻りはじめ」との説明がある。一方で「人手不足で営業時間を増やせない」との話も。
今回月で68回目となるプレミアムフライデーの影響だが、解説コメントでは一切そのフレーズは確認できなかった。新型コロナウイルスの流行でそれどころではない、そもそも在宅勤務が増えているため実施する機会もないのが実情だろう。

↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2022年10月分)

↑ 外食産業売上前年同月比(業態別)(2022年10月)

↑ 外食産業売上3年前同月比(業態別)(2022年10月)
コロナ禍前と比べても
ファストフードはプラス。
2015年7月からは軟調化開始から1年が経過することもあり、該当事業の「前年同月比における」マイナス幅は縮小。そして昨今ではヒット作も相次ぎ、数字の上でも明らかに復調している。現在はかつて自他ともに認められていた「洋風、そしてファストフード全体のけん引役」の立場に戻り、月次で毎月のように売上高の前年同月比1割前後のアップを示している。今後どこまで良好な数字を見せ、さらには外食全体の機関車的役割を果たすのか楽しみではある。
ファストフード内の和風のメインとなる牛丼チェーン店だが、吉野家を中心にこれまでの廉価店の店舗イメージから少しずつ、そして確実に、ワンステップ上の価格帯における商品展開を行う業務スタイルにシフトしている。客数の減退と客単価の上昇が連動して起きる状況が継続し、中期的戦略転換が数字となって表れている。
ファミレスは2016年以降は、雰囲気的にそれまでのような好調さとは異なる様相が見えつつある。中食に多分に客を奪われている感はあるが、もう少し状況を眺めたいところ。客数の伸び悩みが顕著ではある。報告書でも「客足が伸びない最近の傾向」との表記があるほど。しかし焼き肉だけは例外で、客数が伸び続けており、ファミレス部門におけるトレンドが変化しているのだろう。チェーンストアでも精肉部門は堅調なことから、食生活の変化の波に乗っているようだ。

牛丼業界の動きやディナーレストランの動向を併せ見ると、外食産業でも消費の二極化が進んでおり、中庸的なポジションの市場が縮小している感は否めない。また消費者の中食志向の拡大や高齢化により、客の一部が奪われている・遠のいている雰囲気も見受けられる(特に持ち帰りができないファミリーレストラン)。吉野家やマクドナルドが夕食メニューに力を入れているのも、高齢化に合わせた動きの可能性も否定できない。さらにこれらの動きは総じて、客単価の引き上げという戦略目標にもつながっているとの解釈もできる。客単価の引き上げはファミリーレストランにも生じており、こちらも結果としては売上維持、さらには売上増につながる成果を示している。

特にその店舗スタイルや就業者向けのビジネスの色合いが強いパブや居酒屋は大きな痛手が継続している。コロナ禍前の3年前同月比では燦燦たる状況である。特にここ数か月の報告書でははっきりとした形で、人々の生活習慣が変わり夜間の外食忌避傾向や法人の居酒屋離れが強いままとなっていると表記されているのは注目すべきところだ。
次回月の2022年11月分では、新型コロナウイルスの新規感染者数は漸増の気配を見せ、第8波の到来が正式に発表されている。またインフルエンザの流行の懸念もある。年末に向けて客足がどのような動きを見せるのかは不透明な状況。また今回月の報告書にも言及があったが、人手不足や円安などによる原材料価格の高騰などは継続中であり、ビジネスの上では大変な状態が続くに違いない。
↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである
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