首都圏で広めの物件が上昇傾向…賃貸住宅の成約家賃動向(2021年6月発表分)
2021/08/07 03:00

賃貸住宅の管理会社で構成される協会「日本賃貸住宅管理協会」では半年ごとに同協会公式サイトにて、【賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)】を更新・公開している。その最新版「賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)・2020年度下期(2020年10月-2021年3月)」が2021年6月付で公開された。今回はこの公開値などを基に、賃貸住宅管理会社が管理する物件で賃貸契約が成約した際の、家賃の動向について状況の確認をしていくことにする。
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各種調査要項などに関しては先行する記事【メディア別賃貸住宅業者への反応の変化】にて記載済み。そちらで確認してほしい。
賃貸物件を間取りで「1R(ワンルーム)-1DK(1部屋+ダイニング+台所)」「1L(リビング)DK-2DK」「2LDK-」の3タイプ、要は小型・中型・大型に区分。それぞれの物件で個々の管理会社における成約時の家賃が「前期」(今回ならば2020年度上期)と比べてどのように変化したかを尋ねた結果が次のグラフ。全体的には減少よりも増加回答者が多い結果が出ている。

↑ 賃貸住宅管理会社における物件の成約賃料の変化(全国、前期比)(2020年度下期)
個々の管理会社で賃料が増加、つまり上がった状態で契約した事例が前期と比べて多数を占めたとの回答は24.3%。減少回答は18.1%を占め、流れとしては家賃の上昇現象が見受けられる。「変化無しが6割近く」と安定感があるとの解釈もできるが、後述するDI値がプラス圏にあることも併せ、需給の観点では賃貸住宅の引き合いの強さによる値上げ傾向が生じていることが分かる。見方を変えれば「売り手優勢市場」。
間取り別では大型が一番増加回答が少ないく、中型が一番増加回答が多い。小型は増加も減少も多め。
これを首都圏、関西圏、首都圏・関西圏以外の地域に対象領域を区分し、それぞれの圏限定で値を確認したのが次のグラフ。

↑ 賃貸住宅管理会社における物件の成約賃料の変化(首都圏、前期比)(2020年度下期)

↑ 賃貸住宅管理会社における物件の成約賃料の変化(関西圏、前期比)(2020年度下期)

↑ 賃貸住宅管理会社における物件の成約賃料の変化(首都圏・関西圏以外、前期比)(2020年度下期)
首都圏では小型のみ減少の方が多く、中型・小型は増加の方が多く減少はわずかとなっている。他方関西圏では小型のみ増加が多く、中型・大型は減少の方が多く、特に大型は増加がわずかな値にとどまっている。首都圏と関西圏で物件の成約家賃の変化傾向が逆の方向にあるようで興味深い。一方で首都圏・関西圏以外では大きさにかかわらず増加の方が多くなっており、首都圏や関西圏とはまた違った成約賃料の動きが生じているのが確認できる。
これらの動きを分かりやすくするため、DI値(増加から減少を差し引いた値)を算出したのが次のグラフ。

↑ 賃貸住宅管理会社における物件の成約賃料の変化(DI値、前期比)(2020年度下期)
マイナスなのは首都圏の小型と、関西圏の中型・大型のみ。それ以外はすべてプラスで、全般的に成約賃料が増加傾向にある実情が分かる。また、首都圏では中型・大型のDI値が大きく、増加事例が多数に上っていることが推測できる。この動きについて短観では「首都圏は、成約件数ベースにおいては減少しているものの、立地・設備など商品力において競争力のある物件、特にファミリー層を対象とした広めの物件の賃料は堅調に推移あるいは上昇していると思われる」と説明している。需要に合わせて高品質の物件を積極的に展開したということだろうか。
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