ウクライナ情勢への不安はあるが新型コロナウイルスの影響からの持ち直し期待…2022年4月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇

2022/05/22 14:00

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内閣府は2022年5月12日付で2022年4月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で上昇し50.4を示し、基準値の50.0を上回る状態となった。先行き判断DIは前回月比で上昇して50.3となり、基準値の50.0は上回ることに。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響は残るものの、持ち直しの動きがみられる。先行きについては、感染症の動向への懸念が和らぐ中、持ち直しへの期待がある一方、ウクライナ情勢による影響も含め、コスト上昇等に対する懸念がみられる」と示された。ちなみに2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和4年3月調査(令和4年5月12日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きも上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2022年4月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比プラス2.6ポイントの50.4。
 →原数値では「よくなっている」「ややよくなっている」「やや悪くなっている」が増加、「変わらない」「悪くなっている」が減少。原数値DIは50.7。
 →詳細項目は全項目が上昇。「サービス関連」のプラス6.0ポイントが最大の上げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「飲食関連」「サービス関連」「雇用関連」。

・先行き判断DIは前回月比でプラス0.2ポイントの50.3。
 →原数値では「よくなる」「変わらない」「やや悪くなる」が増加、「ややよくなる」「悪くなる」が減少。原数値DIは48.0。
 →詳細項目は「飲食関連」「サービス関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」が上昇。「非製造業」のプラス4.1ポイントが最大の上げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「飲食関連」「サービス関連」「雇用関連」。

冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が行われている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。2020年10月では新型コロナウイルスの流行による落ち込みから持ち直しを続け、ついに基準値を超える値を示したものの、再流行の影響を受けて11月では再び失速し基準値割れし、以降2021年1月までは下落を継続していた。直近月となる2022年4月では新型コロナウイルス流行への懸念について、ワクチン接種の進展で和らぎを見せつつあることなどから、景況感は上向いている。

先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直しを見せて10月では基準値までもう少しのところまで戻していた。ところが現状判断DI同様に11月は大きく下落。

直近の2022年4月では新型コロナウイルスのオミクロン変異株にかかわる国内外情勢への懸念は和らぎを見せる一方で、原油価格の高騰、半導体をはじめとする原材料や部品の供給不足、ロシアによるウクライナへの侵略戦争に対する不安はあることから、景況感の上向き方は限定的なものとなっている。

現状判断DI・先行き判断DIの実情


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(〜2022年4月)
↑ 景気の現状判断DI(〜2022年4月)

昨今では新型コロナウイルスの影響による景況感の悪化からの回復期待で少しずつ盛り返しを示していたが、再流行が数字の上で明確化されるに従い景況感は大幅に悪化。今回月の2022年4月は新型コロナウイルスのオミクロン変異株の影響による新規感染者数はワクチン接種の進展などで減少を示していることで、全体では前回月比でプラスを示している。なお今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は「飲食関連」「サービス関連」「雇用関連」。

続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(〜2022年4月)
↑ 景気の先行き判断DI(〜2022年4月)

今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は「飲食関連」「サービス関連」「雇用関連」。新型コロナウイルスのオミクロン変異株の猛威への不安は和らぎを見せており、とりわけ「飲食関連」「サービス関連」では強い期待が数字となって表れている。他方、半導体を中心とした部品や原材料の不足、原油価格の高騰、そしてウクライナ情勢への懸念が「住宅関連」や「製造業」「非製造業」を中心に、足を引っ張っている。

現状の安心感の高まりと先行きへの不安と


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・新型コロナウイルス新規感染者数が一定数で下げ止まっている状況にもかかわらず、県民割はゴールデンウィークに向けて大きな伸びを示しており、ゴールデンウィーク期間に絞れば7割以上も戻っている。世界情勢は不安定で物価上昇も続いているが、国内宿泊マーケットは底を脱した印象が強い(旅行代理店)。
・3月にまん延防止等重点措置が解除されて以降、人の動きは戻ってきている。通勤通学客の増加により、販売量、来客数共に前年を上回る店舗が大多数を占めている(コンビニ)。
・半導体不足の影響で新車の納期がかなり延びてきており、新車の購入を諦める人が増えてきている(乗用車販売店)。
・原油や原材料相場の上昇、円安やウクライナ危機による影響が、確実に食品全体の価格上昇につながっている。単価がアップした分、購買点数が減り、割安な商品に需要が向かう傾向にある。物価上昇が続くという考えが浸透し始め、確実に財布のひもが固くなり始めている(スーパー)。

■先行き
・客足は若干伸びつつあるが、コロナ禍前の水準と比較するとまだまだ遠く及ばない。今後については、ゴールデンウィークが今季最初のターニングポイントになる。新規感染者数が抑えられることが前提にはなるが、今後の観光業界全体の回復と利用者数の増加を期待している(観光名所)。
・直近の客の購買行動をみると、消費に対する前向きなマインドが戻りつつある。このまま新型コロナウイルスの感染状況が落ち着けば、夏休みシーズンのファッションや雑貨、旅行用品などへの需要は強まることが予想される(百貨店)。
・4月からの値上げによる買い控えの影響は少ないが、品薄や品切れが続いており、成約に結び付けることができない。以前からの半導体不足による影響に加えて、上海のロックダウンやウクライナ情勢などによる影響であり、悪い材料が重なっている(家電量販店)。
・ウクライナ情勢により木材が更に高騰するとの予測がある上、その他資材や建材の値上げも続いており、それを売価に転嫁せざるを得ず、販売価格のピークアウトがみえない。その結果、高額商品における消費の冷え込みは必至と考える(住宅販売会社)。

新型コロナウイルス流行の影響は感染者数の減少やまん延防止等重点措置の終了で和らぎを見せているようだ。ただしその回復度合いは業種によりけり。「ゴールデンウィークがターニングポイント」と考えたくなるのも分かる。他方、先行きを中心に原材料不足への懸念は強いままで、ロシアによるウクライナへの侵略戦争でさらに悪化するとの見通しも複数確認できる。

企業動向でも新型コロナウイルス流行や原材料不足への影響が多々見受けられる。

■現状
・3回目のワクチン接種を済ませた人が増えたこともあり、人の流れが増えている。新型コロナウイルスの感染対策を行いながら、営業する飲食店も増え、景気が少し良くなっている(食料品製造業)。
・海外からの原料入荷遅延と、船舶費用の高騰が続いている。原価の上昇を販売価格へ転嫁しているため受注量が減少気味である(輸送業)。

■先行き
・新型コロナウイルスの新規感染者数が減少傾向にあり、夏に向けてのイベント企画などが微増していくと思われる(広告代理店)。
・ロシアのウクライナ侵攻、円安等により、石油製品、原材料、輸送コストなどの値上げの要求が増えており、インフレが進んで今後の収益が悪化する可能性がある(木材木製品製造業)。

新型コロナウイルス流行に関する影響は和らいでいるものの、原材料費の高騰・不足が大きなマイナス要素となっている状況。インフレへの懸念の声も見受けられる。

雇用関連では興味深い動きが見られる。

■現状
・大手企業を中心に各企業の新卒採用が始まっており、多くの求人が届いている。初めての企業からのアプローチもあり、需要の高さを実感している(学校[専門学校])。

■先行き
・まん延防止等重点措置も解除され、通常の生活が戻ってきている。求人件数も前々年を超える状況であり、景気の回復が感じられる(人材派遣会社)。

家計動向関連や雇用関連では現状や先行きに関して不安視する向きも多々あるが、雇用関連に関しては楽観視する意見が圧倒的。企業の求人動向はその企業における先行きを見越した上で判断された結果であることを考えると、企業側では今後景況感がさらに改善されるという認識が支配的なのかもしれない。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスだが、結局のところ警戒すべき流行の沈静化とならない限り、経済そのもの、そして景況感に大きな足かせとなり続けるのには違いない。恐らくは通常のインフルエンザと同等の扱われ方がされるレベルの環境に落ち着くのが収束点として判断されるのだろう。あるいは社会様式そのものを大きく変えたまま、強引な形で鎮静化という様式を取ることになるかもしれない。世界的な規模の疫病なだけに、ワクチンなどによる平常化への動きを願いたいものだが。

さらにロシアによるウクライナへの侵略戦争は日本が直接手を出して状況を改善できる類のものではない。景況感の悪化を押しとどめ、改善へと向かわせる間接的な対応を、関係各方面に望みたいものである。


↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである



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