ワクチン接種の進展への期待強まる…2021年10月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇

2021/11/09 15:00

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内閣府は2021年11月9日付で2021年10月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で上昇し55.5を示し、基準値の50.0を上回る状態となった。先行き判断DIは前回月比で上昇して57.5となり、基準値の50.0を上回る状態が継続している。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響は残るものの、緩やかに持ち直している。先行きについては、コスト上昇等や内外の感染症の動向を懸念しつつも、ワクチン接種の進展等によって持ち直しが続くとみている」と示された。ちなみに2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和3年9月調査(令和3年11月9日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きも上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2021年10月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比プラス13.4ポイントの55.5。
 →原数値では「よくなっている」「ややよくなっている」が増加、「変わらない」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。原数値DIは56.2。
 →詳細項目はすべてが上昇。「住宅関連」のプラス0.7ポイントが最少の上げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「住宅関連」以外のすべて。

・先行き判断DIは前回月比でプラス0.9ポイントの57.5。
 →原数値では「よくなる」「ややよくなる」「やや悪くなる」が増加、「変わらない」「悪くなる」が減少。原数値DIは58.3。
 →詳細項目は「小売関連」「住宅関連」「非製造業」が上昇。「住宅関連」のプラス6.4ポイントが最大の上げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目はすべて。

冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が行われている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。2020年10月では新型コロナウイルスの流行による落ち込みから持ち直しを続け、ついに基準値を超える値を示したものの、流行第三波の影響を受けて11月では再び失速し基準値割れし、以降2021年1月までは下落を継続していた。直近月となる2021年10月では各種規制が解除され、新型コロナウイルスのワクチン接種の進展などによるものと思われる新規感染者数の減少を受けた、人や物の動きの復調を反映し、上昇を示している。

先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直しを見せて10月では基準値までもう少しのところまで戻していた。ところが現状判断DI同様に11月は大きく下落。直近の2021年10月では新型コロナウイルスのワクチン接種の進展による期待から、上昇を示している。

現状判断DI・先行き判断DIの実情


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(〜2021年10月)
↑ 景気の現状判断DI(〜2021年10月)

昨今では新型コロナウイルスの影響による景況感の悪化からの回復期待で少しずつ盛り返しを示していたが、流行の第三波到来が数字の上で明確化されるに従い景況感は大幅に悪化。今回月の2021年10月は新型コロナウイルスのワクチン接種の進展などによるものと思われる新規感染者数の減少やそれに連動して人や物が動き出した実情を反映する形で、全体では前回月比でプラスを示している。

なお今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は「住宅関連」以外のすべて。

続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(〜2021年10月)
↑ 景気の先行き判断DI(〜2021年10月)

今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目はすべての項目。新型コロナウイルスに対抗するワクチン接種の進展への強い期待があるようだ。一方で半導体を中心とした部品や原材料の不足、価格高騰による懸念が強まりを見せている。

すべては新型コロナウイルス流行の状況次第


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・10月1日より金沢市のまん延防止等重点措置が解除され、徐々に県民が外出するようになっている。併せて観光客や出張者も増えている(一般レストラン)。
・緊急事態宣言が解除されたことで、航空機利用の団体旅行が回復し始めた。また、観光需要喚起策として、北海道の新しい旅のスタイルや各市町村の支援策も再開され始めており、アフターコロナに向けた動きが拡大してきている(旅行代理店)。
・コロナ禍は収束してきているなかで、少しずつ来客数が増えつつあるが、まだ思ったほどの回復がみられない。消費者の行動様式自体が変わっており、すぐに急激な変化は起きにくいと思われる(百貨店)。
・メーカーの新車生産がコロナ禍と半導体不足により大幅な減産となっている。自動車販売店にとっては売る商品がない状況であり、極端な売上不足に陥っている。大変厳しい経営状況が続いている(乗用車販売店)。

■先行き
・県民割引等の需要喚起策も開始され、また、感染状況が落ち着いてきている影響からか、予約も徐々に増加し始めている。2-3か月先に向けてやや良くなる傾向になるとみている(テーマパーク)。
・新型コロナウイルスの新規感染者数がこのまま減少すれば、外食や旅行に活気が戻ってくる。ただし、不安材料はまだまだ多く、原材料価格の高騰や海外客の回復時期など、まだまだ予断が許されない状況である(都市型ホテル)。
・新型コロナウイルスのワクチン接種率も上がり、今後規制解除に向かう飲食店や、観光客も増えるので期待している(一般小売店[酒])。
・新型コロナウイルスが終息してきているものの、ガソリンや電気料金、ガス料金、各種食品の値上がりなど、家計を圧迫するような要因が顕在化していることから、今冬にかけて消費者の節約ムードが強まることが懸念される(スーパー)。

新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、人や物の流れが回復しつつあることを実感する声が多い。一方でコロナ禍による半導体をはじめとした部品不足の悪影響や商品価格の値上がりへの言及が見られるのが気になるところ。

企業動向でも新型コロナウイルス流行の影響が多々見受けられる。

■現状
・緊急事態宣言解除によりイベント等の制限が緩和され、集客イベント等が少しずつ動いてきている。案件の引き合いが非常に増えている(出版・印刷・同関連産業)。
・コロナ禍による半導体不足、海外からの部品の入荷遅れなどで、自動車関連業界の工場稼働率が大幅に落ちている(金属製品製造業)。

■先行き
・今後も新規感染者数が減少していくと思われ、外出や遠出する人が徐々に増加すると予想している。売上は徐々に回復していき、前年を上回ると思われる(不動産業)。
・鉄だけでなく、原材料価格が軒並み高騰し、収益を大幅に圧迫している。前月に取引先に価格転嫁をお願いし、一部は認めてもらえたが、それ以降も原材料価格が上昇を続けているため、今後も非常に厳しい状況が続く(金属製品製造業)。

コロナ禍による厳しさは新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、また各種規制が解除されることで和らぐ、回復するとの期待が受けられる。他方、コロナ禍も影響している、半導体をはじめとする部品不足によるビジネスへの悪影響を受けている、さらに今後悪化するであろうとの懸念を持つところもある。

雇用関連では経済の新型コロナウイルスの流行による沈滞からの回復過程にある現状と、問題点が垣間見られる。

■現状
・求人数は製造業だけでなく、小売業、飲食業、宿泊業を含め全体的に増加傾向となっている。ただし、労働力の不足を訴える事業所が多くなっており、成長の阻害要因になっているとみられる(職業安定所)。

■先行き
・観光業、サービス業が回復してくれば、必ず求人が発生する傾向になるので、良い方向にいく(南関東=人材派遣会社)。

規制の解除や新型コロナウイルスのワクチン接種の進展による感染者数減少で生じる人の流れの回復と、それによって生じる経済の復調への期待が確認できる。他方、労働力の需給バランスが崩れているため、復調が一筋縄ではいかない事態も生じているようだ。

今件のコメントで新型コロナウイルスに関しては現状で387件(前回月390件)、先行きで672件(前回月579件)。凄まじいまでの言及数。一方で「ワクチン」に関しては現状で30件(前回月66件)、先行きで101件(前回月300件)の言及がある。現状におけるワクチン関連のコメントを見るに、接種を終えたと思われる人達の動きが多数確認できる。また、接種が進んでいることによる心理的な安心感を指摘する声もある。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスだが、結局のところ警戒すべき流行の沈静化とならない限り、経済そのもの、そして景況感に大きな足かせとなり続けるのには違いない。恐らくは通常のインフルエンザと同等の扱われ方がされるレベルの環境に落ち着くのが終息点として判断されるのだろう。あるいは社会様式そのものを大きく変えたまま、強引な形で鎮静化という様式を取ることになるかもしれない。世界的な規模の疫病なだけに、ワクチンなどによる平常化への動きを願いたいものだが。


↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである



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