全体ではプラス0.1%でごくわずかな不足感、型わく工(建築)がやや余剰…建設業界の人手不足状況(2021年7月分まで)

2021/08/25 16:00

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以前掲載した記事【建設業界の人手不足状況(2014年3月時点)】において、国土交通省の定点観測的調査「建設労働需給調査」の値を基に、建設業界の人材不足状況を当時の最新データ分について精査した。今回は2021年8月25日に発表された最新版となる2021年7月分までを含め、今データを用い、中長期的な同業界の人材不足感の推移を確認する。ここ数年の不足感の実情を、過去との比較で見ていくことになる(【発表リリース:建設労働需給調査結果】)。

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建設業界の人材過不足率を長期的に見ていく


「建設労働需給調査」の調査概要、および過不足率の算出方法は先行記事の「建設業界の人手不足状況をグラフ化してみる(2014年3月時点)」にある通り。まずは時系列データを容易に取得可能な1994年分以降について、月次の全体的な過不足率の推移を確認する。これは中長期的な変移を見ることから、季節調整を行った上での値を採用する。また、いわゆる金融危機が発生した2007年以降に限ったグラフも併記する。数字そのものはプラスの値が大きいほど不足感が強く、マイナスほど過剰感が強い。

↑ 建設技能労働者過不足率(季節調整済み、プラス:不足、8職種合計)
↑ 建設技能労働者過不足率(季節調整済み、プラス:不足、8職種合計)

↑ 建設技能労働者過不足率(季節調整済み、プラス:不足、8職種合計)(2007年1月以降)
↑ 建設技能労働者過不足率(季節調整済み、プラス:不足、8職種合計)(2007年1月以降)

大勢としては「景況感の好転による不足感」「金融危機で過剰感」「震災をきっかけにした復興需要や政情変化などによる不足感」「過度な不足感からの安定化への動き」「ここ数か月では失速」といった昨今の流れが見て取れる。

金融危機ぼっ発直前の2006年9月に一度不足感のピークを迎えるも、それ以降は不況化に伴い建設需要も低迷し、併せて人材も過剰気味となる。リーマンショックを経て2009年10月には最低値のマイナス2.0%を示し、以降は徐々に回復の兆しを見せる。

グラフの限りでは東日本大地震・震災の2011年3月が一つのトリガーに見える。震災直後は混乱状態にあったものの、数か月後から復興需要に併せる形で人材不足が顕著化し、過不足率は1%台を推移する。そして政情の変化(2012年冬)、東京オリンピック開催決定(2013年9月)、さらには消費税率改定に伴う個人向け住宅を中心とする駆け込み需要の発生(2013年後期に顕著化)など、建設市場の需要拡大と人材不足を後押しする事象が相次ぎ、それに伴い過不足率も上昇していく。

ここ数年に限れば、データをすぐに取得できる1993年以降では最大の値を示した2014年3月のプラス3.4%をピークとし、そこから低下する動きを示していた。その当時と比べると人材不足の声がトーンダウンしている現状も、数字の上で裏付けができる。

現時点で最新となる2021年7月の全体的な季節調整済みの過不足率はプラス0.1%。全体としてはごくわずかな不足感がある状態。前回月比ではマイナス0.1%ポイントを示し、不足感はやや後退。地域別の季節調整値で確認すると、北陸、中国、四国、九州で不足感が強いようだ。

業種別過不足率動向


続いて示すのは、震災直前の2010年12月以降における、8職種それぞれの過不足率動向。



↑ 建設労働需給過不足率(季節調整済み、職種別)(2010年12月以降)
↑ 建設労働需給過不足率(季節調整済み、職種別)(2010年12月以降)

↑ 建設労働需給過不足率(季節調整済み、職種別)(2021年7月)
↑ 建設労働需給過不足率(季節調整済み、職種別)(2021年7月)

建設業界全体での動向とはまた別に、業種別でもそれぞれ異なる動きを示していることが分かる。例えば電工は2014年初頭度に突然大きな不足感に見舞われたが、それも鎮静化したこと(ただし慢性的な不足感はほぼ継続している)、型わく工やとび工は2013年の春先から不足感が強まり(消費税率改定に伴う住宅需要の急増に伴うものだろう)、高止まりのまま推移していること(昨年末あたりに一時期不足感は解消されたが再び不足へと転じている)、鉄筋工(建設)は震災を機に不足感が強まり大きな不足感が生じていたが、昨今では2014年後半同様に過剰感が生じていた、そして2017年後半以降は再び大きな不足感に転じたが最近ようやく収束し、過剰感が生じていたものの、ここ数か月では不足感への動きを強くし、そして急速に過剰感へとシフトしている。

一方で、全体値の推移からも分かる通り、おおよその職種で不足感が蔓延していたが、ここ数か月で均衡状態に近づいている。最新分となる2021年7月では型わく工(建築)と鉄筋工(建築)以外で不足感があり、とび工、電工、配管工以外で前回月からの不足感の増加が確認できる。

「建設労働需給調査」の今後の予想項目では、困難さが和らぐ状況がしばらく続いていた。2021年9月の見通しでは前年同月比で「普通」「やや容易」「容易」が増え、「困難」「やや困難」が減っている。2021年10月の見通しでは「普通」「容易」が増え、「困難」が減っている。均衡状態から過剰感への動きなのだろうか。

他方、残業・休日作業を実施している現場数、いわゆる強化現場数の動向を確認すると、「前工程の工事遅延」の率が24.1%と高い値を示しており、工程そのものが押している感は強い。一方「無理な受注」は8.0%にとどまり、意外にも発注の無理な押し込みはさほど生じていないもよう。

昨今では新型コロナウイルスの影響で経済活動が沈滞していることから、建築計画も先延ばし、あるいは中止となり、新規の動きも鈍いようで、人手不足の動きは鎮静化の方向へとかじ取りをしつつある。あるいは次回月で過剰感の結果が出るかもしれない。

今件は景気ウォッチャーにおける雇用関連のDI値動向とともに、今後も逐次動きを確認していくことにしよう。


↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである



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