オリンピック効果生じるもコロナ禍による厳しさ根強く…2021年7月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き下落

2021/08/10 15:00

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内閣府は2021年8月10日付で2021年7月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で上昇し48.4を示したが、基準値の50.0を下回る状態は継続する形となった。先行き判断DIは前回月比で下落して48.4となり、基準値の50.0を下回ることとなった。結果として、現状上昇・先行き下落の傾向となり、基調判断は「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しさは残るものの、持ち直している。先行きについては、感染症の動向を懸念しつつも、ワクチン接種の進展等によって持ち直しが続くとみている」と示された。ちなみに2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和3年7月調査(令和3年8月10日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きは下落


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2021年7月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比プラス0.8ポイントの48.4。
 →原数値では「ややよくなっている」「変わらない」が増加、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少、「よくなっている」が変わらず。原数値DIは47.7。
 →詳細項目は「住宅関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」が下落。「製造業」のマイナス3.7ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「製造業」「雇用関連」。

・先行き判断DIは前回月比でマイナス4.0ポイントの48.4。
 →原数値では「変わらない」「やや悪くなる」「悪くなる」が増加、「よくなる」「ややよくなる」が減少。原数値DIは47.1。
 →詳細項目は「住宅関連」のみ上昇。その「住宅関連」のプラス0.7ポイントが最大の上げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「製造業」「雇用関連」。

冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が行われている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。2020年10月では新型コロナウイルスの流行による落ち込みから持ち直しを続け、ついに基準値を超える値を示したものの、流行第三波の影響を受けて11月では再び失速し基準値割れし、以降2021年1月までは下落を継続していた。直近月となる2021年7月ではコロナ禍による影響は厳しいものの、オリンピックの盛り上がりや連休効果、猛暑による消費拡大などを受け、上昇を示している。

先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直しを見せて10月では基準値までもう少しのところまで戻していた。ところが現状判断DI同様に11月は大きく下落。直近の2021年7月では新型コロナウイルスに対するワクチン接種の進展による期待はあるものの、デルタ変異株による感染者数が増加し事態が悪化する状況が今後も続くとの見通しから、前回月から転じる形で下落を示している。

現状判断DI・先行き判断DIの実情


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(〜2021年7月)
↑ 景気の現状判断DI(〜2021年7月)

昨今では新型コロナウイルスの影響による景況感の悪化からの回復期待で少しずつ盛り返しを示していたが、流行の第三波到来が数字の上で明確化されるに従い景況感は大幅に悪化。今回月の2021年7月はコロナ禍の影響は続くものの、景況感の回復の兆しが見えてきたことから、全体では前回月比でプラスを示している。

なお今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は「製造業」「雇用関連」。

続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(〜2021年7月)
↑ 景気の先行き判断DI(〜2021年7月)

今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は「製造業」「雇用関連」。多くの項目で前回月から下落を示している。新型コロナウイルスに対抗するワクチン接種の進展への期待があるものの、現状で猛威を振るっているデルタ変異株による状況悪化への懸念が強いようだ。

すべては新型コロナウイルス流行の状況次第


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・依然新型コロナウイルスの影響が大きいものの、イベントを実施したオリンピック4連休が好天に恵まれて、前年を上回り、単月ながらコロナ禍以前のレベルとなった(遊園地)。
・気温の上昇とともに、ドリンクなどの売上や来客数も増えている。また、東京オリンピック効果で、在宅でテレビ鑑賞するためのまとめ買いも増えている(コンビニ)。
・ワクチン接種が進み来店客は増えてきたが、外出自粛で新しい服を必要としないため、購入せずに店を出る人が多い(衣料品専門店)。
・飲食店では、緊急事態宣言中は酒を出せない。酒が出せない限り、売上は全く上がらず、厳しい状態が続いている(一般レストラン)。

■先行き
・ワクチン接種が高齢者を中心に完了し、若者の接種も始まっている。それにより客の購買意欲も増してくるとみられる。今のところマスクをした状態で買物していただくといった環境は変わらないが、今後、客の楽観的な購買意欲が増してくると思われる(家電量販店)。
・ワクチン接種が大分行き渡るとは思われるが、景気の回復にはまだ時間が掛かりそうである(商店街)。
・今後も新型コロナウイルスの感染拡大が続くとみられ、それに伴い緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの対策が行われることになれば、来客数が減少することになる(タクシー運転手)。
・新型コロナウイルスの新規感染者数が増加傾向にあり、飲食業への販売制限が更に厳しくなる。ワクチンの接種が進み、感染者数に変化が出るまでは、厳しさが増すと予想される(一般レストラン)。

現状ではオリンピックの開催やそれに伴う連休、さらには猛暑で需要が拡大し、売上がアップしたとの声が複数確認できる。一方で厳しい規制で売上が伸びない、さらには消費様式の変化で商品が売れなくなっているとのケースも見受けられる。先行きでは規制による業務への締め付けの厳しさに頭を抱える声が確認できる。またワクチン接種が進んでも景況感の回復は別の問題で、時間がかかるだろうとの意見が目にとまる。

企業動向でも新型コロナウイルス流行の影響が多々見受けられる。

■現状
・国内のファッション衣料は依然として厳しいものの、自動車用途やアウトドア関連は受注が回復している。海外ファッション衣料についても回復の兆しが出てきている(繊維工業)。
・ワクチン接種の遅れにより、例年のイベントなども依然として多くが中止になっている(広告代理店)。

■先行き
・既存客の新規輸出案件が来月から始まる予定である。出荷量についても、現在の増加傾向が継続すると予想する(輸送業)。
・受注見込みは上向きではあるものの、半導体供給が不透明であり、見込みどおりの受注となるかが不透明である(一般機械器具製造業)。

コロナ禍による厳しさが和らぐ兆しが生じているとの意見がある一方で、相変わらず厳しさは継続中との嘆きの声もある。他方、間接的には一部コロナ禍も影響しているのだが、半導体不足によるビジネスへの影響を懸念する意見が確認できる。

雇用関連でも新型コロナウイルスの影響がうかがえる。

■現状
・今年に入ってから求人数が増加傾向にあり、特に営業、IT系の求人が目立つ。一方、飲食店、ホテル、アパレルなどからの求人はほとんどみられない状況にあり、コロナ禍の影響を受けていることが分かる(人材派遣会社)。

■先行き
・新型コロナウイルスの感染再拡大もあり、飲食、宿泊、関連する卸売業の回復が見込めない(職業安定所)。

コロナ禍で社会様式が大きく変化し、労働市場にも影響を与えているためか、人材需要に変化が生じていることがうかがえる。大きなマイナスの影響を受けている業界は、今後も厳しそうとの認識を示しているようだ(だからこそ将来に向けて人手を確保する動きをしにくいのだろう)。

今件のコメントで新型コロナウイルスに関しては現状で461件(前回月394件)、先行きで777件(前回月691件)。凄まじいまでの言及数で前回月から大きく増加しているが、これはコメントの編集上デルタ変異株についての言及もすべて新型コロナウイルスでまとめているからだと思われる。一方で「ワクチン」に関しては現状で119件(前回月110件)、先行きで464件(前回月576件)の言及がある。今後の状況好転の鍵として大いに期待されているようだ。実際、現状におけるワクチン関連のコメントを見るに、接種を終えたと思われる高齢者の動きが複数確認できる。また、接種が進んでいることによる心理的な安心感を指摘する声もある。先行きで多少減っているのは、その分デルタ変異株に関するものと思われる言及が増えているからだと考えられる。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスだが、結局のところ警戒すべき流行の沈静化とならない限り、経済そのもの、そして景況感に大きな足かせとなり続けるのには違いない。恐らくは通常のインフルエンザと同等の扱われ方がされるレベルの環境に落ち着くのが終息点として判断されるのだろう。あるいは社会様式そのものを大きく変えたまま、強引な形で鎮静化という様式を取ることになるかもしれない。世界的な規模の疫病なだけに、ワクチンなどによる平常化への動きを願いたいものだが。


↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである



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