コロナ禍による厳しさ残るもワクチン接種進展の期待…2021年6月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇

2021/07/08 14:00

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内閣府は2021年7月8日付で2021年6月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で上昇し47.6を示したが、基準値の50.0を下回る状態は継続する形となった。先行き判断DIは前回月比で上昇して52.4となり、基準値の50.0を上回ることとなった。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しさは残るものの、持ち直している。先行きについては、感染症の動向を懸念しつつも、ワクチン接種の進展等によって持ち直しが続くとみている」と示された。ちなみに2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和3年5月調査(令和3年7月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きも上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2021年6月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比プラス9.5ポイントの47.6。
 →原数値では「よくなっている」「ややよくなっている」「変わらない」が増加、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。原数値DIは45.4。
 →詳細項目は「住宅関連」のみが下落。その「住宅関連」のマイナス1.7ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

・先行き判断DIは前回月比でプラス4.8ポイントの52.4。
 →原数値では「よくなる」「ややよくなる」が増加、「変わらない」「やや悪くなる」「悪くなる」が減少。原数値DIは52.6。
 →詳細項目はすべての項目が上昇。「サービス関連」のプラス9.8ポイントが最大の上げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「飲食関連」「サービス関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が行われている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。2020年10月では新型コロナウイルスの流行による落ち込みから持ち直しを続け、ついに基準値を超える値を示したものの、流行第三波の影響を受けて11月では再び失速し基準値割れし、以降2021年1月までは下落を継続していた。直近月となる2021年6月ではコロナ禍による影響は厳しいものの、持ち直しの感を覚える向きがあるようで、上昇を示している。

先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直しを見せて10月では基準値までもう少しのところまで戻していた。ところが現状判断DI同様に11月は大きく下落。直近の2021年6月では新型コロナウイルスに対するワクチン接種の進展による期待を受け、前回月から続く形で上昇を示した。

現状判断DI・先行き判断DIの実情


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(〜2021年6月)
↑ 景気の現状判断DI(〜2021年6月)

昨今では新型コロナウイルスの影響による景況感の悪化からの回復期待で少しずつ盛り返しを示していたが、流行の第三波到来が数字の上で明確化されるに従い景況感は大幅に悪化。今回月の2021年6月はコロナ禍の影響は続くものの、景況感の回復の兆しが見えてきたことから、全体では前回月比でプラスを示している。

なお今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(〜2021年6月)
↑ 景気の先行き判断DI(〜2021年6月)

今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は「飲食関連」「サービス関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」。全項目で前回月から上昇を示している。新型コロナウイルスに対抗するワクチン接種の進展に大きな期待が寄せられているようだ。

すべては新型コロナウイルス流行の状況次第


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・半導体の不足により納期は少し延びているが、個人客への販売が少し伸びてきている(乗用車販売店)。
・今月は緊急事態宣言の解除により、営業時間が延長されたため、客も外出して買物や食事などを楽しんでいる状況で、売上の増加につながっている(百貨店)。
・県独自の緊急事態宣言が解除され、徐々にではあるが来客数が回復傾向にある。ワクチン接種の影響もあり、感染対策を徹底した上で、イベントなどもにぎわいを見せている(一般レストラン)。
・緊急事態宣言の延長により、宿泊や宴会のキャンセルが増えている。前年同期よりも来客数は少なく売上も悪い(観光型ホテル)。

■先行き
・ワクチン接種の広がりにより、消費者の安心感が醸成されることで、来客数が増加することを期待している。また、東京オリンピック開催によりテレビを中心に販売量の増加も期待できる(家電量販店)。
・東京オリンピック、ワクチン接種の効果が雰囲気を変えることを期待する。ビジネスはまだまだ回復には程遠いが、先の予約は増えてくると思われる(都市型ホテル)。
・新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、新型コロナウイルス感染症の終息の見通しが立てば、客の購買意欲が高まり、景気の上昇につながってくる(百貨店)。
・新型コロナウイルスのワクチン接種の状況にもよるが、夏休みやお盆期間に人の移動による新型コロナウイルス感染者数の増加が見込まれ、再び自粛の政策が発動される可能性がある(テーマパーク)。

新型コロナウイルス流行の影響で商売に制限がかかり、売上が落ち込んでいる業界もあれば、規制の解除で人の流れが戻り始め、経済の復調を実感する業界もある。半導体不足が具体的にビジネスに影響を与えている事例も確認できる。他方、先行きではワクチン接種の進展による状況回復への期待は極めて大きいように見受けられる。一方で夏季休暇時の人の動きで再び流行状況が悪化するのではないかとの懸念も。

企業動向でも新型コロナウイルス流行の影響が多々見受けられる。

■現状
・緊急事態宣言の対象地域となったため、インターネット通販の需要がかなり増加している。新型コロナウイルス禍で外出を自粛した消費者が、あらためて電子商取引の利便性に気づいてきている(輸送業)。
・少し景気がよくなると予想したが、緊急事態宣言が延長され、相変わらず業務用商品の動きが停滞している。家庭用もこれまでの伸びがなくなり、例年並みに戻りつつある(食料品製造業)。

■先行き
・主要取引先からの更なる増産に対応するために、設備や人材の増強要請を受けている(電気機械器具製造業)。
・木造住宅の輸入材料不足により、資材価格の高騰が建築価格を押し上げ始めた。新築案件の先延ばしの動きが心配である(建設業)。

コロナ禍で大きく変わった生活様式に対応するために、インターネット関連や電気機械などの需要は大きく伸び、関連業界は活況な状態。他方、いわゆるウッドショック(新型コロナウイルスの流行で北米をはじめとした木材供給地域の伐採量が減り、さらにアメリカ合衆国内で低金利政策を受けて住宅需要が拡大していることから、輸入木材の高騰が生じている)によって建設業の足が引っ張られていることが確認できる。

雇用関連でも新型コロナウイルスの影響がうかがえる。

■現状
・2022年卒業の求人は、例年どおりに動いており、企業の採用活動も活発である。内定報告の連絡も前月より増えているように見受けられる(学校[大学])。

■先行き
・高齢者のワクチン接種が予定どおり7月末で終わることになれば、病床のひっ迫もなくなり、飲食店への規制もなくなるとみられる。飲食、宿泊に活気が戻るのは間近とみられるため、今後の景気はややよくなる(求人情報誌製作会社)。

雇用市場は景況感を先読みする傾向があるため、「企業の採用活動も活発」のような表現は、雇用市場の動向に関して安心感を覚えさせるものではある。一方で雇用市場においても、新型コロナウイルスのワクチン接種進展がキーであることがうかがえる表現が確認できる。

今件のコメントで消費税率引き上げに関するコメントを「消費税」のキーワードで確認すると、現状のコメントでゼロ件(前回月ゼロ件)、先行きのコメントで1件(前回月ゼロ件)の言及がある。新型コロナウイルス流行の影響が気になり、消費税の話など二の次になっている感はある。

他方新型コロナウイルスに関しては現状で394件(前回月397件)、先行きで691件(前回月697件)。凄まじいまでの言及数だが、現状・先行きともに前回月からはわずかに減っている。一方で「ワクチン」に関しては現状で110件(前回月44件)、先行きで576件(前回月506件)の言及がある。今後の状況好転の鍵として大いに期待されているようだ。実際、現状におけるワクチン関連のコメントを見るに、接種を終えたと思われる高齢者の動きが複数確認できる。また、接種が進んでいることによる心理的な安心感を指摘する声もある。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスだが、結局のところ警戒すべき流行の沈静化とならない限り、経済そのもの、そして景況感に大きな足かせとなり続けるのには違いない。恐らくは通常のインフルエンザと同等の扱われ方がされるレベルの環境に落ち着くのが終息点として判断されるのだろう。あるいは社会様式そのものを大きく変えたまま、強引な形で鎮静化という様式を取ることになるかもしれない。世界的な規模の疫病なだけに、十分な効力が確認できたワクチンの接種浸透による平常化への動きを願いたいものだが。


↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである



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