日本のテレビニュースやジャーナリストの選挙における報道姿勢の実情(2017-2020年)(最新)

2021/02/08 05:15

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2021-0127選挙は民主主義を維持するために必要不可欠な仕組みの一つだが、その選挙における投票を健全なものにするのに欠かせないのが、正しい情報を有権者が受け取り、正しい判断ができるような環境。その環境作りための要素となるテレビニュースやジャーナリストは、果たして社会が求めている仕事をしていると国民から認識されているのだろうか。世界規模で国単位の価値観を定点観測している【World Values Survey(世界価値観調査)】の公開データを基に、日本における実情を確認していく。

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今調査「World Values Survey(世界価値観調査)」に関する概要、調査要項などは先行記事の【世界各国の「新聞・雑誌」や「テレビ」への信頼度】を参照のこと。

最初に示すのは「自国の選挙においてテレビニュースは政権政党を支持する形で報じる」との設問に対し、どのような認識を示しているか。ほぼ常になら+2、おおよそなら+1、あまりそうではないなら−1、まったくそうではないなら−2でウェイトをつけ、回答者における平均値を算出した結果を年齢階層別で示している。この値でプラス幅が大きいほどテレビニュースは政権政党を支持する形で報じていると思っており、マイナス幅が大きいほどそのようなことはなく公明正大に、さらには野党を支持する形で報じていると認識している。

なお世界価値観調査そのものは2017-2020年に実施されたものだが、日本に限れば2019年に行われたものであることから、グラフ上の表記などは2019年としている。

↑ 自国の選挙においてテレビニュースは政権政党を支持する形で報じる(ほぼ常に=+2、おおよそ=+1、あまりそうではない=−1、まったくそうではない=−2での平均値、日本、年齢階層別)(2019年)
↑ 自国の選挙においてテレビニュースは政権政党を支持する形で報じる(ほぼ常に=+2、おおよそ=+1、あまりそうではない=−1、まったくそうではない=−2での平均値、日本、年齢階層別)(2019年)

他国、特にアメリカ合衆国はともかく日本では放送法で政治的中立が義務付けられていることから、本来ならばこの値はプラスに振れてはいけないはずだが、実際には若年層から中年層においてわずかながらもプラスに振れている。テレビニュースの実情を見る限り、2019年当時の政権政党を支持する形での放送との認識そのものが首を傾げるものだとの意見もあるだろうが、少なくとも若年層から中年層ではこのような認識となっている。もっとも「おおよそ政権政党を支持する形で」ですらプラス1.000なのだから、プラス0.125などは誤差の範囲と見てもよい程度のものかもしれない。

一方、45歳以上はマイナス。45-64歳は16-44歳までのプラス幅と同程度のマイナス幅なので誤差の範囲とも解釈できるが、65歳以上はマイナス0.434と大きめのマイナス幅となっており、「テレビニュースは政権政党を支持する形では報じていない」との認識が強いことになる。中立姿勢として受け止めているのか、それとも野党の後押し的に見えるのかはまた別の話になるが。先行記事【「明日国政選挙が実施されるのならどの党に投票するか」(2017-2020年)(最新)】でこの年齢階層の政党別支持率を見ると、野党の立憲民主党の値が異様に高い(16.7%。全年齢階層では9.2%)とあるので、色々と納得できる値ではある。

次いでジャーナリストの選挙に対する姿勢への認識。ジャーナリストが公正に報道をしているとの設問に対し、ほぼ常になら+2、おおよそなら+1、あまりそうではないなら−1、まったくそうではないなら−2でウェイトをつけ、回答者における平均値を算出した結果を年齢階層別で示している。プラス幅が大きいほど公正である、マイナス幅が大きいほど公正ではない、さらには不公平な報道姿勢を示しているとの認識。

↑ 自国の選挙においてジャーナリストは公正に報道している(ほぼ常に=+2、おおよそ=+1、あまりそうではない=−1、まったくそうではない=−2での平均値、日本、年齢階層別)(2019年)
↑ 自国の選挙においてジャーナリストは公正に報道している(ほぼ常に=+2、おおよそ=+1、あまりそうではない=−1、まったくそうではない=−2での平均値、日本、年齢階層別)(2019年)

全体としてはプラス0.275でわずかながら公正な報道をしているとの評価。年齢階層別ではおおよそ高年齢になるに連れて公正さへの認識が強いものとなっていく。もっとも65歳以上でもプラス0.315とわずかなプラス幅でしかない(おおよそですらプラス1であることに注意)。日本のジャーナリストに対する選挙での姿勢は、公正中立という観点ではさほど評価はされていないようだ。



世界価値観調査はあくまでも世界規模の調査ではあるが、属性別区分の詳細なデータまで公開していることから、特定の国に絞った上での精査においても、興味深い実情をつかみ取ることができる。今件はその一例。データの完全版は2021年秋に公開予定とあるが、完全な形でのデータ公開が行われたら、是非とも色々と確認をしてほしいものである。


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