低年収世帯では年収の1/4以上が在学費用に…子供にかかる在学費用の実情(最新)

2022/01/05 03:03

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2021-1221授業料だけでなく通学費や教科書代、学習塾の月謝、おけいこごとにかかる費用など、子供には多分の在学費用が必要となる。今回は日本政策金融公庫が2021年12月20日に発表した教育費に関する調査結果の内容から、その実情を実金額に加え、家計負担の実情の観点でも精査していくことにする(【教育費に関する調査結果一覧ページ】)。

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最新の実情


今調査の調査要項は先行記事の【新型コロナウイルスの流行で高卒以上の子供の進路にどのような影響が生じたか(最新)】を参照のこと。

最初に示すのは直近分となる2021年における、子供全員にかかる在学費用と、世帯年収に占める子供全員にかかる在学費用の割合。在学費用は小学校以上の学校における授業料、通学費、教科書や教材費、学用品の購入費、学習塾や家庭教師の月謝、参考書などの購入費、さらにおけいこごとにかかる費用も該当する。子供が二人以上いる場合は、それぞれにかかる費用の合算となる。また世帯年収の区分だが調査時点では200万円未満の世帯も対象となっているものの、回答者数が少なく統計上のぶれが生じるためか、報告書には具体的な値は掲載されていない。

↑ 子供全員にかかる在学費用と世帯年収に占める子供全員にかかる在学費用の割合(2021年)
↑ 子供全員にかかる在学費用と世帯年収に占める子供全員にかかる在学費用の割合(2021年)

子供全体にかかる在学費用だが、世帯年収が低い世帯ほど額は少なく、200-400万円未満の世帯では90.6万円にとどまっている(今調査対象母集団では子供がいない世帯はいないため、在学費用がゼロの世帯が平均値を押し下げるということはない)。一方で世帯年収が800万円以上の世帯では151.0万円となり、約1.7倍に跳ね上がる。

他方、世帯年収に占める在学費用の割合だが、在学費用そのものとは逆に、世帯年収が低いほど高い値となる。これは世帯年収の増加度合いが、在学費用を上回っているからに他ならない。世帯年収が200-400万円未満の世帯では実に26.7%もの割合となっているが、800万円以上の世帯ではわずか11.6%にとどまっている。単純な金額面ではなく、世帯年収の割合で見ると、低世帯年収の世帯における在学費用の負担の大きさが改めて実感できる。

経年推移


続いて子供全員にかかる在学費用と世帯年収に占める子供全員にかかる在学費用の割合について、経年推移を見ていくことにする。なお今調査は2013年以前からも実施されているが、調査方法が2014年以降と2013年以前とでは大きく変わっており、データの連続性が望めないため、2014年以降に絞って検証している。

まずは子供全員にかかる在学費用について。

↑ 子供全員にかかる在学費用(世帯年収階層別、万円)
↑ 子供全員にかかる在学費用(世帯年収階層別、万円)

家計調査などからも分かる通り世帯平均人数は漸減しているため、当然世帯にいる子供全員にかかる在学費用も、対象となる子供の人数が減ることから、漸減してもおかしくはない。実情としては低世帯年収層ではほぼ変わりはなく、高世帯年収層ではやや減っているように見えるぐらいの変化が生じている。ただしここ1、2年では低世帯年収層で大きな減少が生じているのが気になるところ。

一方で家計負担はどうだろうか。

↑ 世帯年収に占める子供全員にかかる在学費用の割合(世帯年収階層別)
↑ 世帯年収に占める子供全員にかかる在学費用の割合(世帯年収階層別)

こちらは子供全員にかかる在学費用とは逆で、高世帯年収の世帯では大きな変化はなく、低世帯年収の世帯では減少しているような動きが見受けられる。特に200-400万円未満の世帯では(2019年でイレギュラーが生じているものの)顕著な形での減少ぶりが生じている。特に2020年からの減少ぶりが大きく、金額そのものの減少が、割合の減少で生じていることがうかがえる。もっとも高世帯年収の世帯でも最古年と直近年の値を単純比較すれば分かる通り、減少しているとの解釈もできるのだが。

2014年の時点で世帯年収が200-400万円未満の世帯において、世帯年収の4割近くが在学費用に充てられていたというのも驚くべき値だが(調査対象は64歳未満のため、年金生活者による世帯年収の減少傾向という可能性はまず無い)、直近年の2021年でも1/4以上が充てられている計算になる。金額の観点からの子育ての大変さ、見方を変えれば子育てにはお金の観点が大いに重要であることが、改めて認識できる次第ではある。


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