アルバイトの時給動向をグラフ化してみる

2020/10/22 10:00

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雇用市場における需給関係の変化は建設業やパート・アルバイト界隈で特に活発化しており、単なる人手不足の動向に留まらず、その状況を起因としたさまざまな方面への影響が話題に上り、ニュースとして配信される。その一面は【建設業界の人手不足状況を長期的にグラフ化してみる】でお伝えしている通りだが、今回は非正規雇用の中でもメインとなるパート・アルバイトの時給の推移を通し、市場動向をかいま見ることにする。

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パートやアルバイトの時給動向に係わる定点観測データは、公的機関では残念ながら見当たらない。国税局では正規・非正規別の賃金動向を収録しているものの、こちらは2012年分以降のもののみで、中期的な変化の動向を推し量ることはできない。今回はリクルートグループが展開している求人情報メディア「TOWNWORK」「TOWNWORK社員」「fromA navi」に掲載された求人情報をベースとして、同社が2007年1月以降毎月の状況を公開しているデータを用い、その動向を確認していくことにする(【リクルートホールディングス・プレスリリース】)。

直近データとなる2020年9月分では、業種別は大分類で販売・サービス系、フード系、製造・物流・清掃系、事務系、営業系、専門職系に区分されている。また地域別では主要エリア別、三大都市圏(首都圏・東海・関西)、全国の平均額などが確認できる。このうち長期時系列のデータ取得が容易な三大都市圏の分について、全体額、さらには日常生活で見聞きすることが多くしばしば話題にも上る販売・サービス系(例:レジ、販売、コンビニスタッフ、チラシやパンフ配布など)とフード系(飲食店のホールスタッフ、ファストフードなど)、そして専門職系のうち介護スタッフに焦点を絞り、値を抽出していくことにする。

なおデータの上で2011年10月までと11月以降とでは細かい業態部分の再整理における平均額算出に関して、再計算が行われた・いないの違いが生じているため、厳密にはデータの連続性は無い。もっともその影響は最小限に留められているため、大きな差異は生じていないと見ても実質的には問題は無い。

まずは全体的なパート・アルバイトの募集時における平均時給の推移を確認する。各グラフには直近月の値に加え、描写範囲内の最高額・最低額の月の具体的な額などを示しておく。

↑ パート・アルバイト募集時平均時給(三大都市圏、全体、円)(リクルートジョブズ)
↑ パート・アルバイト募集時平均時給(三大都市圏、全体、円)(リクルートジョブズ)

最低額は意外にも金融危機ぼっ発前の2007年4月における928円。以降900円台後半にまで上昇し、ほぼ一定額のボックス圏内で推移する。なお毎年特定の時期に大きく跳ねるようすが見られるが、これは年末(12月)におけるかきいれどきの求人で、相場が上昇するようすが表れている。

金融危機やリーマンショック(2008年9月)の影響もほとんど受けておらず、意外な感はある。ただしよく見ると、リーマンショックよりはむしろその後の震災、極度の円高による不況の影響をいくぶん受けているような雰囲気を覚える。また2013年以降は年末のピークの後の下げ方も限定的なものとなり、2014年に限れば夏以降高止まりしているのが分かる。そして2015年は踊り場から上昇再開の動き。

2015年までは最高額は同年12月における986円だった。毎年12月は繁忙期の真っただ中で高い値をつける傾向があるため、一段と大きな額ではあった。ところが2016年に入って同年6月には、その額すら超えた988円を示し、記録の限りでは過去最高額を更新する形となった。そして同年12月には当時で過去最高額の1006円を示す。その後も上下を繰り返しながらも全般的には上昇を続け、今回月はこれまでの最高額だった2019年12月の1089円を上回る1091円となり最高額を更新。前年同月は1063円なので28円のプラス、2.6%の上昇。

続いて販売・サービス系。

↑ パート・アルバイト募集時平均時給(三大都市圏、販売・サービス系、円)(リクルートジョブズ)
↑ パート・アルバイト募集時平均時給(三大都市圏、販売・サービス系、円)(リクルートジョブズ)

最低額を示した時期が金融危機ぼっ発前であることは全体額動向と変わりは無し。またリーマンショックの影響を大きく受けていることもよく分かる。一方で2014年までは最高額は震災がおきた2011年の年末につけており、それ以降はむしろ安定の流れにあった。また毎年12月がピークとなる動きも同じ。ただしリーマンショック後の数年はその定石が崩れたパターンを示しており、いかにアルバイト市場に大きな打撃を与えていたかが分かる形となっている。

だが2015年に入ってからは毎年ピークになる12月に向けて上昇の動きが加速し、2017年では11月から12月にかけてそれまでの最高額となる1012円に。その後も上下を繰り返しながら上昇傾向は継続したが、今回月は2019年12月に記録したこれまでの最高額の1072円を下回る1062円。前年同月は1052円なので10円のプラス、1.0%の上昇。

続いてフード系。パート・アルバイトの時給が景気動向に連動するか否かの視点で見ると、もっとも典型的な動きを示している。

↑ パート・アルバイト募集時平均時給(三大都市圏、フード系、円)(リクルートジョブズ)
↑ パート・アルバイト募集時平均時給(三大都市圏、フード系、円)(リクルートジョブズ)

最低額を示したのは震災直後の2011年4月で893円。それ以前は金融危機ぼっ発後もあまり変わらず、リーマンショック以降じりじりと下げている。そして震災以降は一様に上昇…にも見えるがよく精査し直すと2012年夏から2013年夏ぐらいまではほぼ横ばい、それ以降は再び上昇カーブを強めながら推移している。

今回月は過去最高額を示した2019年11月の1043円よりは低い1018円。前年同月の1027円からは9円のマイナス、0.9%の下落となる。

最後は介護スタッフ。今項目は2012年7月から調査対象として採用されたため、グラフの作成期間もそれに従っている。

↑ パート・アルバイト募集時平均時給(三大都市圏、介護スタッフ、円)(リクルートジョブズ)
↑ パート・アルバイト募集時平均時給(三大都市圏、介護スタッフ、円)(リクルートジョブズ)

ややばらつきが大きいものの、2014年末まではほぼ960円から980円のボックス圏で推移している。それが2015年に入ってから大きな上昇を見せ始め、2015年5月には初めて1000円の大台を突破した。その後少々値を落として再び3ケタ台に戻してしまったが、2015年11月ではこれまで最高額だった同年9月の1016円をさらに超え、最高額の1023円を記録。その後はしばらく値を落とし、再び上昇に。

今回月は過去最高額となる2020年4月の1116円は下回る1107円。前年同月は1085円だったため、プラス22円、2.0%の上昇となる。



販売・サービス系や介護スタッフではいくぶん異なる動向だが、全体的にパートやアルバイトの時給は少しずつ上昇傾向にある。需給の関係から考察すれば、求職者以上に求人が増え、賃金を引き上げることで求人を充足させようとする動きの中にあると見てよいだろう。他の記事で触れている「非正規雇用の就業者が増加している」実態と併せると、少なくともパートやアルバイトの雇用市場では、就業する立場にある人から見て、情勢は好転していると判断して問題は無い。

ただし昨今では一部業態で天井感の気配も見られるため、より大きな留意が必要である。これが現状の労働市場における単なる時給の上限なのか、雇用する側の出し渋りによるものか、あるいは雇用形態においてより正社員への雇用が促進されたため、相対的に非正規雇用の需給に変化が生じてきたのか、多方面からの精査が求められよう。

また2020年2月あたりからは新型コロナウイルスの流行による営業自粛の影響と思われる下落、あるいは上昇スピードの鈍化の動きが確認できる。この動きはしばらく継続することになるだろう。今回取り上げた中では特にフード系の落ち込みが著しい。販売・サービス系は早くも持ち直しの動きが見られるのは喜ばしいが。

ちなみに同じくリクルートジョブズによる定期公開データから、派遣スタッフ募集時の平均時給動向を見た結果が次のグラフ(こちらも2020年9月分が最新データとなっている)。

↑ 派遣スタッフ募集時平均時給(三大都市圏・全体、円)(リクルートジョブズ)
↑ 派遣スタッフ募集時平均時給(三大都市圏・全体、円)(リクルートジョブズ)

金融危機ぼっ発後の下落、リーマンショックによる加速、その後の復調、震災や円高不況による低迷、そして回復基調。これまでの最高額は2020年7月における1720円。今回月はそれを下回る1690円で、前年同月比はプラス3.5%。2020年5月以降、イレギュラーのようにも見える上昇ぶりから下落することなく、高い値を維持し、前年同月比も数%と高い割合の上昇幅を示している。分類別では営業・販売・サービス系やIT・技術系、医療介護・教育系で大きな上昇が確認できる。集計対象件数も以前の50万件前後から今回月では26万3328件と大幅に減っていることも合わせ、新型コロナウイルス流行の影響で求人全体は減ったものの特異環境下での就労を求める求人が逆に増え、人員確保のために時給を大幅に引き上げたことが想定される。あるいは低い時給水準の求人が大きく減ったため、平均値が上がっただけかもしれない。

派遣スタッフは天井に達した、むしろ下落の流れを見せていただけに、2020年5月から続く変動は大いに気になるところ。新型コロナウイルスの流行という特異環境下に合わせ、労働市場相場が大きく動いたと見るべきなのだろう。


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