凍死による死亡者の発生場所の動向をグラフ化してみる(人口動態調査版)(最新)

2020/09/17 05:32

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2020-0916先行記事【凍死による死亡者の動向をグラフ化してみる(人口動態調査版)(最新)】では厚生労働省が2019年11月28日付で2018年分の確定報を発表した、人口動態調査における人口動態統計の公開値を基に、同統計による凍死による死亡者数の推移を確認した。今回は関連公開値をたどり、その死亡者がどのような場所で死亡したのか、つまり凍死の発生場所の動向を確認していくことにする(【発表ページ:平成30年(2018)人口動態統計(確定数)の概況)】)。

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今回は人口動態統計における「凍死による死亡者」の定義に従った死亡者、つまりICD-10(国際疾病分類第10版)におけるX31(自然の過度の低温への暴露)を死因とするものが、どのような場所でその死因が発生したのかを確認する。

まずは直近分となる2018年分…だが、先の記事の通り、単年分では値が少なめで、各年の影響要素によるぶれが生じやすいため、該当年に加え過去2年分の値を合わせた平均値を用いる。また対象となる場所は「家(庭)」「居住施設」「学校、施設および公共の地域」「スポーツ施設および競技施設」「街路およびハイウェイ」「商業およびサービス施設」「工業用地域および建築現場」「農場」「その他の明示された場所」「詳細不明の場所」で区分されている。「家(庭)」なら自宅内や庭先の草刈りの過程などがよい例。部活動ならば「学校、施設および公共の地域」や「スポーツ施設および競技施設」、就業中ならば「街路およびハイウェイ」「商業およびサービス施設」「工業用地域および建築現場」、あるいは農家ならば「農場」が主な状況下となる。

↑ 年齢階層別・凍死による死亡者の発生場所(人口動態調査、該当年と過去2年を合わせた平均値、年齢階層別、人)(2018年)
↑ 年齢階層別・凍死による死亡者の発生場所(人口動態調査、該当年と過去2年を合わせた平均値、年齢階層別、人)(2018年)

凍死による死亡者の約8割が65歳以上の高齢者で占められていることは、すでに先行記事で言及した通り。その中でも多くが自宅内、あるいは詳細不明の場所であることが分かる。この「詳細不明の場所」について詳しい説明はない(具体例の記載が無い)が、凍死で死亡したこと自体はカウントされていることから、見方を変えれば発見時に詳しい状況が確認できない状態にある、あるいは死亡診断書を記載した医師が状況を把握し切れず・判断が難しいとして、「詳細不明の場所」に割り振った可能性は高い。さらに年齢が上になるに連れて生じている「詳細不明の場所」の増加傾向が、「家(庭)」とほぼ同じ傾向にあることから、多分に「詳細不明の場所」は「家(庭)」と近い状況による発生と見ても、的外れなものではないだろう。

「家(庭)」で凍死が多い理由は、人口動態調査の数字からだけでは分からない。日本救急医学会の【熱中症および低体温症に関する委員会】では

家族との同居であっても昼間や深夜は一人になりうる環境であれば、低体温症に陥る危険性があることへの理解が必要である。すなわち、冬季は基本的に室温を含め気温そのものが低いため、屋内であっても加齢、栄養状態の悪化や脱水、持病の悪化、体調不良を誘因として簡単に低体温症に陥り、重症化を招きやすいことがわかる。

と説明している。

他に多い場所としては「その他の明示された場所」「街路およびハイウェイ」が目に留まる。「その他の明示された場所」は具体的には海や森林、川、草原、遊園地、動物園、駐車場、公園などを指しており、「街路およびハイウェイ」と合わせ、無理な遊泳や山での遭難以外に酩酊した上で低体温症となり、死に至るパターンが多々あるものと考えられる。実際、少々古い報告書ではあるが【東京都における凍死症例の検討(日本生気象学会雑誌)】を見ると、酩酊状態による凍死者の事例が多々報告されている。また厚労省のe-ヘルスネットでも【飲酒と事故】に「アルコールには末梢血管拡張作用があるため、飲酒をすると体表の血流が増加します。従って飲酒後に寒い所に長時間いると血液が冷やされて低体温になりやすく、屋外で眠り込んでしまい凍死する事例が多数みられます」との説明がある。

これを男女別に見たのが次のグラフ。男女で縦軸の区分が異なることに注意。高齢層は人口そのものにおいて女性の方が多いため、リスク体現者も女性が多くなる傾向がある。

↑ 凍死による死亡者の発生場所(人口動態調査、該当年と過去2年を合わせた平均値、男性、年齢階層別、人)(2018年)
↑ 凍死による死亡者の発生場所(人口動態調査、該当年と過去2年を合わせた平均値、男性、年齢階層別、人)(2018年)

↑ 凍死による死亡者の発生場所(人口動態調査、該当年と過去2年を合わせた平均値、女性、年齢階層別、人)(2018年)
↑ 凍死による死亡者の発生場所(人口動態調査、該当年と過去2年を合わせた平均値、女性、年齢階層別、人)(2018年)

高齢層における「家(庭)」でのリスクの体現化が目立つ形となっている。特に男性では45歳から「家(庭)」での死亡者が増えており、注意を要する実情が見えてくる。また「その他の明示された場所」「街路およびハイウェイ」が男性でのみ多いのは、上記にある通り酩酊状態からの凍死が、男性に際立って多いことを推定させる。



やや余談となるが、先の凍死による死亡者数動向でも言及した、昔と比べて現在はリスク体現者数そのものが増えている件に関して、今回の区切りと同じように、年齢階層と発生場所別に試算をした結果が次のグラフ。

↑ 凍死による死亡者の発生場所(人口動態調査、該当年と過去2年を合わせた平均値と、2001年と過去2年を合わせた平均値の比較、年齢階層別、倍率)(2018年)
↑ 凍死による死亡者の発生場所(人口動態調査、該当年と過去2年を合わせた平均値と、2001年と過去2年を合わせた平均値の比較、年齢階層別、倍率)(2018年)

この値が1ならば2001年と2018年の凍死による死亡者数平均値に違いはないということになる。凍死による死亡者が、(人口そのものの増加率以上に)高齢者で増えていることは先の記事で解説した通りだが、その増加が主に「家(庭)」「詳細不明の場所」で増えていることがうかがえる。また「学校、施設および公共の地域」「商業およびサービス施設」での増加も目に留まる。さらに80歳以上において「居住施設」(老人ホームや寄宿舎など)で増加しているのは気になるところだ。


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