太陽光発電機器導入住宅はまだ4.1%(最新)

2020/02/23 05:20

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2020-0212先の震災以降住宅設備の中でも特に注目を集めるようになったのが、太陽光を利用した発電機器。発電効率は現在の技術では高いとはいえず、住宅内で使うすべての電力を恒久的にまかなうには至らず、また初期導入費用の高さや耐久年数との兼ね合わせを考慮した上でのコストパフォーマンス、生産状況まで考慮した場合の環境負荷など、多様な問題提起がされているが、利用時における電力の節約ができるとの魅力は大きく、新築住宅を中心にこぞって導入が進めれられている。この太陽光発電機器の導入状況について、総務省統計局が2019年4月26日に発表した、2018年時点における住宅・土地統計調査の速報集計結果から確認をしていくことにする(【発表ページ:平成30年住宅・土地統計調査】)。

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太陽光発電機器の住宅への導入率は4.1%


今調査の調査要項は先行記事【住宅の空き家率は13.6%で過去最高に(最新)】を参考のこと。

太陽エネルギーを活用して住宅内に取り入れる仕組みとしては、以前は費用対効果・技術上の面から温水機器が主流を占めていた。しかし昨今の技術革新により、太陽光発電の電力変換効率と低価格化が進み、補助金制度も整備されることで、太陽光発電機器の設置の意義・有効性が高まりつつある。特に震災以降は電力需給問題も絡み、世帯ベースでも積極的な導入が推し進められ、住宅供給側でもセールスポイントの一つとして重要視している。

それでは実際に、太陽光発電機器が導入された住宅はどれぐらい存在しているのだろうか。他の省エネ設備も合わせた値が次のグラフ。戸数でカウントすると2018年時点で219.0万戸。全体(居住者が常時いる住宅に限る。別荘のような一時的住宅や空き家は除く)に占める比率では4.1%との状態である。

↑ 省エネ設備導入状況(住宅種類別、万戸)(2018年)
↑ 省エネ設備導入状況(住宅種類別、万戸)(2018年)

↑ 省エネ設備導入状況(住宅種類別、割合)(2018年)
↑ 省エネ設備導入状況(住宅種類別、割合)(2018年)

太陽熱を利用した温水機器は186.5万戸、3.5%。一方で二重以上のサッシまたは複層ガラスの窓を(全部、あるいは一部で)導入している住宅は1728.2万戸、32.2%と3割を超える。導入ハードルが低く、維持も容易であり、住宅の新設時に合わせて導入してしまう、あるいは住宅業者側がセールスポイントとして導入しているのだろう。

太陽光発電機器は一部では「一度取り付ければフリーメンテナンスで永久に電力が低コストで沸いてくる」と誤解されがちだが、そのような領域に達するまでにはまだまだ技術の進歩が足りない。加えて「フリーメンテナンス」なる設備が存在するのはゲームの中だけの話。導入率が1割にも満たないのもしかたがない。

住宅種類別に見ると、いずれの設備も持家の導入率は高め。居住者自身で導入を決定することができるからだろう。特に二重以上のサッシまたは複層ガラスの窓は4割近くにまで達している。他方、公営借家などの借家では導入率は低く、特に都市再生機構・公社の借家では太陽光発電機器は0.1%に留まっている。

省エネ設備の導入状況の変化


住宅・土地統計調査では2003年分以降について、省エネ設備の導入率が調査・公開されている。そこで3種類の省エネ設備それぞれにおける、住宅種類別の導入率の変化を見ていく。

まずは太陽熱を利用した温水機器。

↑ 省エネ設備導入状況(太陽熱を利用した温水機器、住宅種類別、割合)
↑ 省エネ設備導入状況(太陽熱を利用した温水機器、住宅種類別、割合)

太陽光発電機器に取って代われていることもあり、導入率は漸減状態。2003年時点では6.6%あった導入率も2018年では3.5%と半分近くに減っている。特に持家での減少が著しいことから、新規に建築される住宅では導入されない事例が増えているものと考えられる。

続いて太陽光発電機器。

↑ 省エネ設備導入状況(太陽光を利用した発電機器、住宅種類別、割合)
↑ 省エネ設備導入状況(太陽光を利用した発電機器、住宅種類別、割合)

太陽熱を利用した温水機器とは真逆で、導入率は漸増状態。持家での増加が著しいが、民営借家でも大きく伸びている。2013年で増加に弾みがついたように見えるのは、やはり震災が影響しているのだろう。逆に都市再生機構・公社の借家で漸減の動きが見えるのは意外ではある。

最後に二重以上のサッシまたは複層ガラスの窓。

↑ 省エネ設備導入状況(二重以上のサッシまたは複層ガラスの窓、住宅種類別、割合)
↑ 省エネ設備導入状況(二重以上のサッシまたは複層ガラスの窓、住宅種類別、割合)

太陽光発電機器ほどの増加スピードではないが、二重以上のサッシまたは複層ガラスの窓も漸増状況。しかも元々昔からある程度導入されていたこともあり、導入率そのものは高い状態となっている。

持家では導入率の増加度合いの大きさが目に留まるが、民営借家や給与借家でも順調な増加を見せている。他方公営借家や都市再生機構・公社の借家では今一つの動きに留まっている。



今回取り上げた3種類の設備すべてにおいて、持家に比べて公営や民営などの借家での導入率は押しなべて低い。貸し手(大家など)にとっては「余計な費用がかかる設備をつけると、空き家状態におけるリスクが高まる」とのデメリットがあるからなのだろう。しかし借り手の視点で考えると、エネルギーの節約≒光熱費の節約は、それだけ賃貸住宅としての魅力は高いものとなる。

現状において賃貸住宅の客取り合戦が激化している状況を鑑みるに、賃貸住宅でも省エネ部門の充実について、十分以上に検討する必要があるに違いない。


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