海外情勢や消費税率引き上げへの不安…2019年6月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き上昇

2019/07/08 15:00

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内閣府は2019年7月8日付で2019年6月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で下落し44.0を示し、基準値の50.0を下回る状態は継続。先行き判断DIは前回月比で上昇して45.8となったが、基準値の50.0を下回る状態は維持されている。結果として、現状下落・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「このところ回復に弱さがみられる。先行きについては、海外情勢等に対する懸念がみられる」と示された(3か月連続同じ)。2019年2月分までは「緩やかな回復基調が続いている」で始まる文言だったことから、景況感のネガティブさが4か月連続する形となっている。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成31年6月調査(令和元年7月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は下落、先行きは上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2019年6月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比マイナス0.1ポイントの44.0。
 →原数値では「変わらない」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加、「よくなっている」「ややよくなっている」が減少。原数値DIは43.3。
 →詳細項目は「サービス関連」「非製造業」が下落。「サービス関連」のマイナス3.5ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は皆無。

・先行き判断DIは前回月比でプラス0.2ポイントの45.8。
 →原数値では「ややよくなる」「やや悪くなる」「悪くなる」が増加、「よくなる」「変わらない」が減少。原数値DIは46.3。
 →詳細項目は「サービス関連」「非製造業」が下落。「サービス関連」のマイナス1.0ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている項目は皆無。

冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

昨今では現状判断DI・先行き判断DIともにやや低迷状態と表現できよう。特にここ数か月はDIのさらなる低下傾向、つまり景況感の悪化が確認でき、報告書のコメントもそれを裏付けるようなものに変わっている。また冒頭でも触れている概況のフレーズの変化は注目に値すべきもの。景況感の回復の弱さどころか後ずさり感すら覚えるところがある。

現状・先行き判断DIともに全部の項目で基準値を割り込む


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2019年6月)
↑ 景気の現状判断DI(-2019年6月)

消費税率(2014年4月)改定からは5年が経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。昨今では米中貿易摩擦の激化のあおりを受ける形で、対外取引を中心に事業への不安が大きくなっている。その上2019年10月に実施予定の消費税率引き上げを前に、景況感への不安は強まるばかりである(本来生じうる駆け込み需要の気配もほとんど見られない)。

今回月の現状判断DIは合計で前回月から0.1ポイントのマイナス。詳細項目では「小売関連」「飲食関連」「住宅関連」「製造業」が上昇。もっとも大きな上げ幅は「雇用関連」の3.2ポイント。

景気の先行き判断DIでは詳細項目のうち「小売関連」「飲食関連」「住宅関連」「製造業」「雇用関連」が上昇。上げ幅は「住宅関連」の1.9ポイントが最大。

↑ 景気の先行き判断DI(-2019年6月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2019年6月)

今回月で基準値を超えている詳細項目は皆無。

国際情勢や消費税への不安


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・気温上昇により、エアコンや冷蔵庫、洗濯機などの商材が好調に推移したため、前年比で2けた伸びている(家電量販店)。
・梅雨入りが遅れており、天候もよいため、夏物商材の動きが伸びている。特に、飲料関連がアップしており、生鮮関連でも野菜は安価であるため、販売点数が増えている(スーパー)。
・大型連休の反動もあり、個人の客足が非常に鈍い。また、企業も団体旅行など足踏み状態であり、様子見である。受注状況も含め、景気低迷に変わりはない(旅行代理店)。
・ファッションや衣料関連のカテゴリーで需要が縮小しており、動きも鈍くなっている。父の日ギフトの動向をみても盛り上がりに欠けており、ギフト市場もモノ離れが進んでいる(百貨店)。

■先行き
・長過ぎたゴールデンウィークの影響で、消費が悪くなっていたが、ようやく落ち着いている(一般レストラン)。
・今後2-3か月先となると、消費税増税のタイミングが近づくことから、ある程度の駆け込み需要が見込めるため、食品や化粧品などの消耗品がけん引し、ややよくなる(百貨店)。
・ここ数か月、バス、電車の利用が増えている。バス停や駅のバス乗り場での列が目立つ。交通費を控えた利用が増えているようで、消費税増税になれば今まで以上にタクシー利用は減る(タクシー運転手)。
・軽減税率もあり、消費税引上げ前の駆け込み需要はなく、消費税引上げ後は消費が落ち込む(スーパー)。

ゴールデンウィークの10連休は前後の休日需要を多分に吸収したようで、6月に入ってようやくその影響が薄れてきたというところもあれば、いまだに影響が生じているところもある。均して通常の年と同じような影響ならばよいのだが、マイナスの影響が多いとなれば、「過ぎたるは及ばざるが如し」を思い起こさせる。コメントでも「ゴールデンウィークが絶好調だった業界では、夏、お盆の需要を先食いしただけのケースも多くみられる」なるものもあるほど。

天候要因で大きな成果を挙げたところも複数見受けられる一方で、景況感の悪化を覚えさせる動きもいくつか確認できる。単なる杞憂、あるいは回答者だけの話で汎用的なもので無ければよいのだが。

企業関連では米中貿易摩擦の激化に伴う世界経済の後退感への不安が確認できる一方で、人手不足の影響に関す言及も見受けられる。

■現状
・米中貿易摩擦の影響により、一部事業について中止ないし遅れが生じている。一方で、国内単独ビジネスや半導体では、車載関連の引き合いが依然として強い(電気機械器具製造業)。
・国内の物量に大きな変化はないが、日中間の輸出入の件数が10%ほど落ち込んでいる。米中貿易摩擦並びに中国の景気の影響と思われる(輸送業)。

■先行き
・消費税増税の影響で、印刷物の特需が発生すると予想している(出版・印刷・同関連産業)。
・最近は順調に受注できているが、配置人員の不足で受注が困難になると予想され、景気はやや悪くなる(建設業)。

米中貿易摩擦による具体的なマイナス影響の言及が複数見受けられる。他方、日本国内のビジネスの盛況ぶりが継続しているのは喜ばしいことである。

雇用関連では景気のよい話が見受けられる。

■現状
・外国人を中心に観光客が増加していることで、宿泊業とそれに付帯するビルメンテナンス(清掃)業の求人が堅調に推移している。小売業についても影響が生じており、前年と比べて求人掲載が増えている(求人情報誌製作会社)。

■先行き
・首都圏を始めとする県外、県内のいずれの企業も求人に対する意気込みが高いようである(学校[大学])。

観光客の増加で宿泊業が活性化するのは容易に理解できるが、それに伴いビルメンテナンス業も需要が伸びる連鎖反応が生じ、それが雇用拡大に結び付くのは思いもよらない話ではある。

雇用関連の話として人手不足はよく聞くところではあるが、この類の話には得てして「現在の雇用市場に合致した対価・条件を提示しているのか」との疑問が付きまとう。人材プールそのものが枯渇しているのなら話は別だが、現状は多分に「現状に見合った対価引き上げをしていないので人手が集まらない」状況に他ならない。一部で「人手不足だが賃金が上がらない」との意見もあるが、責任回避のための表現の差し替えに過ぎない。

今件のコメントで全国分を確認すると、「人手不足」「人材不足」の文言を多数見受けることができる(現状計31件、先行き計29件、合わせて60件)。ただし全国で景気の先行きに限定して雇用関連の印象を確認すると、良好12件、やや良好16件、不変87件、やや悪い38件 悪い12件となっており、イメージされているほど状況が悪いものでも無いことが統計からはうかがえる。

コメントには人手不足の現象が、多分に労働環境の改善が求められているとの労働市場のシグナルであるにもかかわらず、雇用市場の変化に対応しようとしない、できない企業において、人手不足感が強いとの印象を受けるものが少なからず見受けられる。上記で触れているが、「人材不足は賃金不足」である(環境の改善は賃金だけに限らないが、一番なのは言葉通り「現金」という次第)。他方、現状を見据えた上で問題意識を明確にし、状況改善へとかじ取りをする企業の動きや状況認識もある。

なお消費税増税に関しては先行きのコメントにおいて「消費税」だけで450件もの言及が確認できる。駆け込み需要や景況感対策の施策への期待の声もあるが、不安や懸念といったネガティブな内容が圧倒的に多く、景況感の悪化が危惧される。どこぞで主張されている「消費税の増税で財政再建が進むので社会保障への安心感が強まり、消費が活性化される」などとの意見は見受けられず、これが現状なのだろう。

また米中貿易摩擦に関しては先行きのコメントにおいて「中国」で27件、「米中」で53件が確認できる。こちらもネガティブな内容がほとんどで、景況感の足を引っ張っていることは間違いない。特に製造業で影響が顕著化しているのが目に留まる。もっとも「逆に米国によるイランへの経済制裁で、貴金属相場が上向きになっている」というタナぼた的な業界もあるようだが。さらに「中国で利用されている部品もある。今後、米中間の対立が受注量に影響することは十分に考えられる。業界全体で国内生産にシフトすることにより、仕事量の確保を進めている」といった、国内需要の喚起につながっているケースも見受けられる。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売上を伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

数か月先のことでは無く、数年、数十年先を見越した、長期にわたる展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。

昨今問題視されている、そして報道では得てして否定的に取り上げられている人手不足にしても、雇用市場の需給バランスの正常化、そして適切な労働対価が労働力とやり取りされる状態となるための移行プロセスに過ぎないと考えれば、むしろ肯定的に見るべき問題ではある。そもそも現状求められている労働環境は、本来正当なものとして就業者側に与えられているべきものでは無かったのか。皆がやっているから、昔からそうだったから、経営側にプラスとなるからという安易な理由での施策に過ぎないのであれば、それを正論化する裏付けは無い。

現在の社会環境が本来あるべき姿に変わるために、必要なコストの水準を求めており、それに応じたコストの算出ができないのであれば、ビジネスモデルそのものが現状に対応しきれていないか、そろばん勘定の上でどこかゆがみが生じているか、判断を間違っていたまでの話。昔と今とでは状況が異なること、昔がこうだったから今もこうだという判断は正しくないという現実を、認識すべきではある。


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