10連休の影響と、海外情勢や消費税率引き上げへの不安強まる…2019年5月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き下落

2019/06/10 16:00

このエントリーをはてなブックマークに追加
内閣府は2019年6月10日付で2019年5月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で下落し44.1を示し、基準値の50.0を下回る状態は継続。先行き判断DIは前回月比で下落して45.6となり、基準値の50.0を下回る状態は維持されている。結果として、現状下落・先行き下落の傾向となり、基調判断は「このところ回復に弱さがみられる。先行きについては、海外情勢等に対する懸念がみられる」と示された(前回月と同じ)。2019年2月分までは「緩やかな回復基調が続いている」で始まる文言だったことから、景況感のネガティブさが3か月連続する形となっている。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成31年5月調査(令和元年6月10日公表):景気ウォッチャー調査】)。

スポンサードリンク


現状は下落、先行きも下落


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2019年5月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比マイナス1.2ポイントの44.1。
 →原数値では「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加、「よくなっている」「ややよくなっている」「変わらない」が減少。原数値DIは46.7。
 →詳細項目はすべてが下落。「住宅関連」のマイナス3.4ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は皆無。

・先行き判断DIは前回月比でマイナス2.8ポイントの45.6。
 →原数値では「よくなる」「変わらない」「やや悪くなる」「悪くなる」が増加、「ややよくなる」が減少。原数値DIは47.9。
 →詳細項目はすべてが下落。「製造業」のマイナス4.1ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている項目は皆無。

冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

昨今では現状判断DIにおいてやや低迷状態と表現できよう。特にここ数か月は現状判断DIのさらなる低下傾向、つまり景況感の悪化が確認でき、報告書のコメントもそれを裏付けるようなものに変わっている。また冒頭でも触れている概況のフレーズの変化は注目に値すべきもの。さらに今回月では先行き指数も急落してしまっており、景気の足踏み感どころか後ずさり感すら覚えるところがある。

現状・先行き判断DIともに全部の項目で基準値を割り込む


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2019年5月)
↑ 景気の現状判断DI(-2019年5月)

消費税率(2014年4月)改定からは5年が経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。昨今では米中貿易摩擦の激化のあおりを受ける形で、対外取引を中心に事業への不安が大きくなっている。

今回月の現状判断DIは合計で前回月から1.2ポイントのマイナス。詳細項目ではすべてが下落。もっとも大きな下げ幅は「住宅関連」による3.4ポイント。

景気の先行き判断DIでは詳細項目ですべてが下落。下げ幅は「製造業」の4.1ポイントが最大。

↑ 景気の先行き判断DI(-2019年5月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2019年5月)

今回月で基準値を超えている詳細項目は皆無。

大型連休の反動や悪影響と、国際情勢や消費税


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・令和への改元や、ゴールデンウィークの10連休などで、客の動きが良かった。先行きにも新たな希望を感じているのか、明るい雰囲気となっている(旅行代理店)。
・10連休では、周辺の観光施設や飲食店は景気が良かった。一方、商店街は来街者が少なく売上が上がらず、物販は非常に厳しい状況である(商店街)。
・10連休期間中は例年の110%ほどの集客があったが、7日以降は散々な集客となり、5月のトータルでは例年より若干の集客減となる(高級レストラン)。
・青果の価格が前年並みに戻ってきているが、加工食品の値上げが相次いでおり競合他社との兼ね合いで売価に転嫁できない状況であり、特売商品は動くが定番が動かない(スーパー)。

■先行き
・消費税の引上げ前の駆け込み需要は必ずあると期待しており、景気は一時的に盛り上がるとみている(家電量販店)。
・人件費負担の増加が経営の重荷になりつつある。特に当業界のような労働集約型の事業では、合理化もままならないなかで、直近の業績に多大な負荷がかかっている(その他飲食[給食・レストラン])。
・本格的に消費税増税を意識した買物が出てくる。高額品のほか、軽減税率などの情報を見極めた動きになるため、全体的には慎重になり、節約や倹約志向が強まる(百貨店)。
・夏の繁忙期の予約状況がよくない。10連休の反動もあるとみられるが、道内客、国内客、外国人観光客のいずれも予約の問合せが少ない(観光型ホテル)。

ゴールデンウィークの10連休はボーナスステージ的な盛況ぶりを見せたところもあれば、自分の売上には好影響が生じなかったとする意見もあり、すべてにプラスをもたらすイベントは難しい現実を再認識させられる。また連休があまりにも大型のものであったため、その反動が早くも連休直後に生じて5月のトータルではマイナスになるなど、興味深い動きも見受けられる。

さらに人件費や原材料の値上げに関して、売価に反映できないとの話も確認できる。もっとも競合との兼ね合いを理由に挙げるなど、解釈が難しい理由づけには違いない。

企業関連では10連休の影響の他、米中貿易摩擦の激化に伴う世界経済の後退感への不安が強く表れている。

■現状
・初めての10連休明けで、多少の取扱量があるものの、中旬以降は大きく減少し、半導体を中心に精密機械関係も大きく減少している(輸送業)。
・大型連休があったこともあり、稼働日数が少ないためか、販売が振るわない。その上、業界が米中貿易戦争の影響を少なからず受けているのではないかと思われる(電気機械器具製造業)。

■先行き
・取引量は現状維持の見込みであるが、燃料や原材料の値上げが実施される予定なので、利益が圧迫される(その他サービス業[廃棄物処理])。
・米中間の関税問題で、中国向けの出荷が減少傾向となる製品が多く、先行きが不安である(金属製品製造業)。

10連休の影響は企業、中でも製造業にとっては稼働日数が減ることによるマイナスの影響が生じる形となっている(あるいはこれも米中貿易摩擦の影響によるものかもしれないが)。他方、前回月から動きが確認できていたが、米中貿易摩擦の激化で世界的な景況感、特に中国における後退ぶりを受け、具体的な影響が生じ不安を覚える企業の動きが確認できる。

雇用関連でも米中貿易摩擦の激化によるものと思われるマイナスの影響らしきものが確認できる。

■現状
・人手不足の状態は続いているものの、ここにきて製造業の景気が少し低迷気味である。求人募集広告を掲載する企業が少なくなってきている(求人情報誌製作会社)。

■先行き
・企業からの受注はあるものの、人材確保の状況が改善する見通しは立たないため、変わらない(人材派遣会社)。

米中貿易摩擦の激化で大きな影響を受けているのは製造業だが、その製造業で求人動向が不安な状態になっているとの報告が見受けられる。景況感の後退のドミノ倒し状態が生じているようだ。

雇用関連の話として人手不足はよく聞くところではあるが、この類の話には得てして「現在の雇用市場に合致した対価・条件を提示しているのか」との疑問が付きまとう。人材プールそのものが枯渇しているのなら話は別だが、現状は多分に「現状に見合った対価引き上げをしていないので人手が集まらない」状況に他ならない。一部で「人手不足だが賃金が上がらない」との意見もあるが、責任回避のための表現の差し替えに過ぎない。

今件のコメントで全国分を確認すると、「人手不足」「人材不足」の文言を多数見受けることができる(現状計25件、先行き計45件、合わせて70件)。ただし全国で景気の先行きに限定して雇用関連の印象を確認すると、良好13件、やや良好19件、不変93件、やや悪い39件 悪い12件となっており、イメージされているほど状況が悪いものでも無いことが統計からはうかがえる。

コメントには人手不足の現象が、多分に労働環境の改善が求められているとの労働市場のシグナルであるにもかかわらず、雇用市場の変化に対応しようとしない、できない企業において、人手不足感が強いとの印象を受けるものが少なからず見受けられる。上記で触れているが、「人材不足は賃金不足」である(環境の改善は賃金だけに限らないが、一番なのは言葉通り「現金」という次第)。他方、現状を見据えた上で問題意識を明確にし、状況改善へとかじ取りをする企業の動きや状況認識もある。

なお消費税増税に関しては先行きのコメントにおいて「消費税」だけで338件もの言及が確認できる。駆け込み需要や景況感対策の施策への期待の声もあるが、不安や懸念といったネガティブな内容が圧倒的に多く、景況感の悪化が危惧される。どこぞで主張されている「消費税の増税で財政再建が進むので社会保障への安心感が強まり、消費が活性化される」などとの意見は見受けられず、これが現状なのだろう。

また米中貿易摩擦に関しては先行きのコメントにおいて「中国」で42件、「米中」で113件が確認できる。こちらもネガティブな内容がほとんどで、景況感の足を引っ張っていることは間違いない。特に製造業で影響が顕著化しているのが目に留まる。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売上を伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

数か月先のことでは無く、数年、数十年先を見越した、長期にわたる展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。

昨今問題視されている、そして報道では得てして否定的に取り上げられている人手不足にしても、雇用市場の需給バランスの正常化、そして適切な労働対価が労働力とやり取りされる状態となるための移行プロセスに過ぎないと考えれば、むしろ肯定的に見るべき問題ではある。そもそも現状求められている労働環境は、本来正当なものとして就業者側に与えられているべきものでは無かったのか。皆がやっているから、昔からそうだったから、経営側にプラスとなるからという安易な理由での施策に過ぎないのであれば、それを正論化する裏付けは無い。

現在の社会環境が本来あるべき姿に変わるために、必要なコストの水準を求めており、それに応じたコストの算出ができないのであれば、ビジネスモデルそのものが現状に対応しきれていないか、そろばん勘定の上でどこかゆがみが生じているか、判断を間違っていたまでの話。昔と今とでは状況が異なること、昔がこうだったから今もこうだという判断は正しくないという現実を、認識すべきではある。


■関連記事:
【人手不足というけれど、原材料不足とどこが違うのだろう】
【原油先物(WTI)価格の推移をグラフ化してみる(最新)】
【政府への要望、社会保障に景気対策、高齢社会対策(最新)】
【「税抜き価格表示」消費者の支持は2.3%のみ、一番人気は「税込価格・本体・消費税」の現行スタイル】
【消費税と税収の関係をグラフ化してみる(最新)】
【電気代・ガス代の出費動向をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編))(最新)】

スポンサードリンク


関連記事


このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2019 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー