中国の電子商取引法の施行が影響を及ぼす…2019年1月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き上昇

2019/02/08 15:00

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内閣府は2019年2月8日付で2019年1月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で下落し45.6を計上、基準値の50.0を下回ることとなった。先行き判断DIは前回月比で上昇して49.4となったが、基準値の50.0を下回る状態は継続する形となった。結果として、現状下落・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる。先行きについては、海外情勢等に対する懸念もある一方、改元や大型連休などへの期待がみられる。」と示された。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成31年1月調査(平成31年2月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は下落、先行きは上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2019年1月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比マイナス1.2ポイントの45.6。
 →原数値では「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加、「よくなっている」「ややよくなっている」「変わらない」が減少。原数値DIは44.8。
 →詳細項目は「非製造業」「雇用関連」のみが上昇。「飲食関連」のマイナス3.0ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は無し。

・先行き判断DIは前回月比でプラス1.5ポイントの49.4。
 →原数値では「ややよくなる」「変わらない」が増加、「よくなる」「やや悪くなる」「悪くなる」が減少。原数値DIは50.0。
 →詳細項目では全項目が上昇。「飲食関連」のプラス5.3ポイントが最大の上げ幅。基準値の50.0を超えている項目は「サービス関連」「雇用関連」。

今回現状判断DIが下落した理由はいくつか考えられるが、例えば暖冬で冬物商品の売れ行きが伸び悩んだ、中国関連の売上が落ち込んでいるなどが挙げられる。

なお冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

昨今では現状判断DIにおいてやや低迷、ぬるま湯的な軟調さと表現できる。株価急落で値を落とした前回月から回復しない、それどころか続落してしまったのが気になるところではある。

現状判断DIは全項目で基準値を割り込んだまま


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2019年1月)
↑ 景気の現状判断DI(-2019年1月)

消費税率(2014年4月)改定からは間もなく5年が経過しようとしているが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。

今回月の現状判断DIは合計で前回月から1.2ポイントのマイナス、詳細項目では「非製造業」と「雇用関連」以外で下落。もっとも大きな下げ幅は「飲食関連」による3.0ポイント。

景気の先行き判断DIでは詳細項目で全項目が上昇。上げ幅は「飲食関連」の5.3ポイントが最大。

↑ 景気の先行き判断DI(-2019年1月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2019年1月)

今回月で基準値を超えている詳細項目は「サービ関連」と「雇用関連」のみ。

中国の情勢変化と暖冬、インフルエンザと連休と消費税と


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・前年12月から開始した新BS4K放送への関心が継続し、4K放送サービス契約が順調に推移するとともに、それに引っ張られる形で通信系サービスの契約も増加している(通信会社)。
・インフルエンザの流行で外出を控えるように促す報道を、恨みたくなるような客足である。例年以上に冷え込んでいる(一般レストラン)。
・中国の電子商取引法の施行などにより、インバウンド売上が化粧品などで軒並み苦戦している。初売りから健闘していた国内客向けの衣類や洋品、雑貨も中旬以降は厳しくなったほか、集客をけん引していた食品関連の催事も一息つき、月内のばん回は厳しい見通しである(百貨店)。
・来客数が前年の9割程度で、暖冬のため暖房器具の売上は伸びず、景気はよくない(家電量販店)。

■先行き
・消費税の引上げ前の駆け込み購入や東京オリンピックに向けての買換えで、テレビとパソコンが今後も売れる(家電量販店)。
・皇太子殿下の御即位に伴うゴールデンウィークの10連休が、そろそろ身近な話となる。駆け込み需要も含めて、この機会しか10連休はないといった雰囲気が出てくる(旅行代理店)。
・3か月先の予約も既にあり、先の問合せなども受けている(高級レストラン)。
・消費税の引上げに対する支援策が、思いの外、手厚いものとなったため、消費税の引上げ前の買い控えが起こっているように感じる(住宅販売会社)

今回月は前回月に続き暖冬により季節物の動きが厳しいのに加え、2019年1月1日から中国で施行された電子商取引法(電子商取引関連全般を適用対象としたもので、納税義務や販売禁止対象品の増加、営業許可証の取得義務など、大幅な規制強化が主な内容)によりインバウンドの売上が期待を大きく下回ったとの声が見受けられる。また、2019年10月に予定されている消費税率の引き上げに伴う駆け込み需要への期待がある一方、景況感の低迷対応策の内容を受け、逆に引き上げ前の買い控えが生じているという不思議な現象が起きている業界もあるようだ。

企業関連の景況感では人材不足への懸念もある一方で、状況の好転化の動きも確認できる。他方、中国の景況感の悪化の気配も見受けられる。

■現状
・輸送にかかる燃油費や人件費などの単価交渉において、景気の回復もあいまって、客側の受入れ感が前よりも増し、交渉の結果が好転する状況が増えている(輸送業)。
・中国向け電子材料薬品の需要が若干低迷している(化学工業)。

■先行き
・東京オリンピックや改元の周辺事業や広告受注が見込めそうである(広告代理店)。
・生産受注に関してはここ数年にないくらい込み合ってきている状況で、一部、生産キャパシティの不足で遅れが生じているものも出てきている(精密機械器具製造業)

原材料費や燃料費、人件費の上昇は企業側からすれば頭の痛い話ではあるが、それらの要素もよい動きが出てきているのは注目に値する。他方、広告代理店という業種柄ではあるが、東京オリンピックはともかく改元関連で仕事の増加が見込めるとの話は興味深い。

雇用関連では人手不足の状況の雰囲気が変わって来た感を覚えさせる意見が見受けられる。

■現状
・長年契約社員採用をしていた企業が、正社員雇用へと形態を変えてきている。求職者にとってはよい状況になってきている(学校[専門学校])。

■先行き
・人手不足は継続しており、採用の広報予算は増える。ダイレクトメールが目につくようになっている(民間職業紹介機関)

契約社員から正社員へと雇用形態を変える企業が出ているとの話は要注目。企業が人手を自らの手で育てる姿勢を見せないと、人材の新規雇用はおろか現状維持も難しくなっていると判断できる材料ではある。無論、採用のために投じる予算が増えている話もよい流れに違いない。

人手不足はよく聞くところではあるが、この類の話には得てして「現在の雇用市場に合致した対価・条件を提示しているのか」との疑問が付きまとう。今件のコメントでも全国分を確認すると、「人手不足」「人材不足」の文言を多数見受けることができる(現状計35件、先行き計57件、合わせて92件)。ただし全国で景気の先行きに限定して雇用関連の印象を確認すると、良好12件、やや良好34件、不変93件、やや悪い23件 悪い12件となっており、イメージされているほど状況が悪いものでも無いことが統計からはうかがえる。

コメントには人手不足の現象が、多分に労働環境の改善が求められているとの労働市場のシグナルであるにもかかわらず、雇用市場の変化に対応しようとしない、できない企業において、人手不足感が強いとの印象を受けるものが少なからず見受けられる。他方、現状を見据えた上で問題意識を明確にし、状況改善へとかじ取りをする企業の動きや状況認識もある。

なお消費税増税に関しては先行きのコメントにおいて「消費税」だけで194件もの言及が確認できる。駆け込み需要や景況感対策の施策への期待の声もあるが、ネガティブな内容の方が多く、景況感の悪化が危惧される。どこぞで主張されている「消費税の増税で財政再建が進むので社会保障への安心感が強まり、消費が活性化される」などとの意見は見受けられず、これが現状なのだろう。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売り上げを伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

数か月先のことでは無く、数年、数十年先を見越した、長期にわたる展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。

昨今問題視されている、そして報道では得てして否定的に取り上げられている人手不足にしても、雇用市場の需給バランスの正常化、そして適切な労働対価が労働力とやり取りされる状態となるための移行プロセスに過ぎないと考えれば、むしろ肯定的に見るべき問題ではある。そもそも現状求められている労働環境は、本来正当なものとして就業者側に与えられているべきものでは無かったのか。皆がやっているから、昔からそうだったから、経営側にプラスとなるからという安易な理由での施策に過ぎないのであれば、それを正論化する裏付けは無い。

現在の社会環境が本来あるべき姿に変わるために、必要なコストの水準を求めており、それに応じたコストの算出ができないのであれば、ビジネスモデルそのものが現状に対応しきれていないか、そろばん勘定の上でどこかゆがみが生じているか、判断を間違っていたまでの話。昔と今とでは状況が異なること、昔がこうだったから今もこうだという判断は正しくないという現実を、認識すべきではある。


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