国際情勢の不透明感と株価の下落は景況感の重しにつながる…2018年12月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き下落

2019/01/11 15:00

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内閣府は2019年1月11日付で2018年12月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で下落し48.0を計上、基準値の50.0を下回ることとなった。先行き判断DIは前回月比で下落して48.5となり、基準値の50.0を下回る形となった。結果として、現状下落・先行き下落の傾向となり、基調判断は「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる。先行きについては、海外情勢や金融資本市場の動向等に対する懸念がみられる」と示された。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成30年12月調査(平成31年1月11日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は下落、先行きも下落


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2018年12月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比マイナス3.0ポイントの48.0。
 →原数値では「よくなっている」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加、「ややよくなっている」「変わらない」が減少。原数値DIは48.2。
 →詳細項目は全項目で下落。「住宅関連」のマイナス5.0ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「住宅関連」「雇用関連」。

・先行き判断DIは前回月比でマイナス3.7ポイントの48.5。
 →原数値では「やや悪くなる」「悪くなる」が増加、「よくなる」「ややよくなる」「変わらない」が減少。原数値DIは47.0。
 →詳細項目では全項目が下落。「飲食関連」のマイナス7.8ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている項目は「雇用関連」のみ。

今回大きく下落した原因は、詳細コメントでも多分に確認できる、調査対象期間の2018年12月に発生した大規模な株価の下落。米中通商摩擦の激化や中国・華為技術(ファーウェイ)製品規制問題、欧州の政局不安定化、さらにはそれらを起因とした世界経済の後退懸念の高まりを受け、半ばパニック的に株が売られた結果によるもの。特に先行き判断DIの下げ方が大きく、2019年の景気動向への不安感が一気に高まった雰囲気を見せている。

↑ 2018年末から2019年初頭にかけての日経平均株価の動き(Yahoo!ファイナンスより抜粋)
↑ 2018年末から2019年初頭にかけての日経平均株価の動き(Yahoo!ファイナンスより抜粋)

なお冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

昨今では現状判断DIにおいてやや低迷、ぬるま湯的な軟調さと表現できる動きにあるのが気になるところ。それゆえに今回の株価下落を起因としたDIの下落が、大幅な下落のきっかけにならないかとの不安は否定できない。

詳細項目は一様に下げる


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2018年12月)
↑ 景気の現状判断DI(-2018年12月)

消費税率(2014年4月)改定からは間もなく5年が過ぎようとしているが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。

今回月の現状判断DIは合計で前回月から3.0ポイントのマイナス、詳細項目でもすべてが下落。もっとも大きな下げ幅は「住宅関連」による5.0ポイント。株価下落で住宅購入層の財布のひもが引き締まったとの実情を肌身に感じたのだろう。

景気の先行き判断DIも詳細項目では全項目が下落。下げ幅は「飲食関連」の7.8ポイントが最大。

↑ 景気の先行き判断DI(-2018年12月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2018年12月)

今回月で基準値を超えている詳細項目は「雇用関連」のみ。

暖冬と国際情勢の不透明感と株価低迷と忍び寄る消費税と


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・12月前半から来客数が伸びている。4Kテレビ、レコーダー、チューナーなどの売行きが好調であり、客単価アップにつながっている(家電量販店)。
・税制大綱が決まるまで客が足踏み状況であった。ローン控除、エコポイントと消費税増税後の方がよさそうな施策も出てきたため、動きが鈍化した様子である(住宅販売会社)。
・日中の利用は変わらないが、忘年会シーズンであるにもかかわらず、夜は週末以外はどちらかといえば振るわない。その週末も例年よりも悪い(タクシー運転手)。
・気温が高い日が多く、冬物衣料の売行きが悪くなっている。美術品、宝飾品の高額受注も、前年と比べて少なくなっている(百貨店)。

■先行き
・先物のオーダーが好調に推移している。先を見据えた客の購買が多くなってきているなど、今後に向けてよい変化が出てきている(衣料品専門店)。
・宿泊はインバウンド頼みである。人手不足が厳しく、コストもかさむが価格転嫁ができず厳しい(都市型ホテル)。
・国際情勢が不透明であり、株価が下がるなか、今月のインバウンド売上の低下に続き、国内富裕層の動きが鈍くなると予想する(百貨店)。
・世界情勢は不透明で、不安感が漂っている。また、消費税の引上げ関連の話題が増えることで、生活防衛意識が高まりそうである(スーパー)。

今回月は暖冬により季節物の動きが厳しいだけでなく、米中通商摩擦の激化や欧州の政局不安定化、株価の大きな下落など自然、国際情勢、株価と複数要素で経済の足を引っ張りそうな状況悪化が発生している。さらに日本に直接関係する対外事案としても徴用工訴訟問題や韓国海軍レーダー照射事件のような、将来への不安感を覚えさせられる事案が生じている。

2019年10月に予定されている消費税率引き上げに関する具体的な動きが出てきたのは興味深い。住宅販売会社では景況感対策で恩恵を受けるとの話だが、対策は期間限定のため、反動が来ることは必然なのだが。

企業関連の景況感では人材不足への懸念が続く一方で、株価下落や米中通商摩擦による懸念の声が見受けられる。

■現状
・年末の株安で資産効果が失われつつある。年末の不動産の購入や賃貸の住み替えなどのニーズが減ってきている(不動産業)。
・原材料価格が上がり、その他資材も値上がりし、人件費も上がっているが、商品原価を上げられないため、財務状況は厳しい(食料品製造業)。
■先行き
・人手不足と募集単価の高騰は、ビル清掃業界においてはまだ厳しくなる(その他サービス業[ビルメンテナンス])。
・貿易摩擦や米国利上げにより、米国だけでなく世界的な株安は少なからず影響を受けるものと考える(金属製品製造業)。

株価の下落で資産価値が落ちるため、大きな金額の買い物をする富裕層の行動意欲が鈍化する動きが確認できる。また、コスト、特に人件費の上昇が負担との声も多々見受けられる。まさにインフレ化に向けた動きに他ならないのだが。

雇用関連では人手不足の現状を推し量れる意見が見受けられる。

■現状
・採用難の状況に変化はない。採用手段の多様化についていけない中小企業が割を食う形となっており、経済活動の鈍化の一因となっている(人材派遣会社)。

■先行き
・引き続き人手不足の職種は深刻化している一方で、充足率の高い職種は人員の削減傾向にあり、求人と求職のミスマッチが更に進行している(人材派遣会社)。

人手不足はよく聞くところではあるが、この類の話には得てして「現在の雇用市場に合致した対価・条件を提示しているのか」との疑問が付きまとう。今件のコメントでも全国分を確認すると、「人手不足」「人材不足」の文言を多数見受けることができる(現状計32件、先行き計48件、合わせて80件)。ただし全国で景気の先行きに限定して雇用関連の印象を確認すると、良好13件、やや良好32件、不変84件、やや悪い31件 悪い11件となっており、イメージされているほど状況が悪いものでも無いことが統計からはうかがえる。

コメントには人手不足の現象が、多分に労働環境の改善が求められているとの労働市場のシグナルであるにもかかわらず、雇用市場の変化に対応しようとしない、できない企業において、人手不足感が強いとの印象を受けるものが少なからず見受けられる。他方、現状を見据えた上で問題意識を明確にし、状況改善へとかじ取りをする企業の動きや状況認識もある。

なお消費税増税に関しては先行きのコメントにおいて「消費税」だけで154件もの言及が確認できる。駆け込み需要や景況感対策の施策への期待の声もあるが、おおよそネガティブな内容であり、景況感の悪化が危惧される。どこぞで主張されている「消費税の増税で財政再建が進むので社会保障への安心感が強まり、消費が活性化される」などとの意見は見受けられず、これが現状なのだろう。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売り上げを伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

数か月先のことでは無く、数年、数十年先を見越した、長期にわたる展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。

昨今問題視されている、そして報道では得てして否定的に取り上げられている人手不足にしても、雇用市場の需給バランスの正常化、そして適切な労働対価が労働力とやり取りされる状態となるための移行プロセスに過ぎないと考えれば、むしろ肯定的に見るべき問題ではある。そもそも現状求められている労働環境は、本来正当なものとして就業者側に与えられているべきものでは無かったのか。皆がやっているから、昔からそうだったから、経営側にプラスとなるからという安易な理由での施策に過ぎないのであれば、それを正論化する裏付けは無い。

現在の社会環境が本来あるべき姿に変わるために、必要なコストの水準を求めており、それに応じたコストの算出ができないのであれば、ビジネスモデルそのものが現状に対応しきれていないか、そろばん勘定の上でどこかゆがみが生じているか、判断を間違っていたまでの話。昔と今とでは状況が異なること、昔がこうだったから今もこうだという判断は正しくないという現実を、認識すべきではある。


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