「半世紀後にロボットやコンピューターが多くの仕事で人にとって代わる」世界の人達の思い

2018/11/07 05:06

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技術革新は人の苦労を減らし不可能なことができるようにするために行われるが、それによって従来人がこなしていた仕事が新技術に奪われる、競争力で太刀打ちできなくなることが多々ある。利用者側の観点では便利になり快適さが増し低コストで利用できることになるが、それは同時に今までそれに従事していた人の仕事を奪うことにもなる。今回はアメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2018年9月13日に発表した調査報告書【In Advanced and Emerging Economies Alike, Worries About Job Automation】を基に、昨今の技術革新の代表格であるロボットやコンピュータに関して、人の仕事を代替しうる立場となるのか否かについて、諸外国の人達がどのような考えを抱いているのかを確認していく。


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今調査は対象国において2018年春に行われたもので、調査対象母集団は各国18歳以上で約1000人ずつ。調査方法は電話による対話形式や対面形式など。一部の国では都市部のみでの調査実施。それぞれの国の国勢調査などの結果に基づいたウェイトバックが実施されている。

まず最初に示すのは、それぞれの国の人に対して半世紀後において、ロボットやコンピューターが多くの仕事で人にとって代わるか否かを尋ね、その肯定派の意見をまとめたもの。なおアメリカ合衆国に限れば2015年6-7月の調査結果を適用させている(以下同)。また設問では全体的にと尋ねており、また別設問では回答者の国自身に関しての場合はその旨明言されていることから、今設問は世界全体としての傾向を尋ねているものと考えてよい(ただし自国の実情も回答には少なからぬ影響は与えるだろう)。

↑ 今から50年後においてロボットやコンピューターが多くの仕事で人にとって代わると思うか(2018年春)
↑ 今から50年後においてロボットやコンピューターが多くの仕事で人にとって代わると思うか(2018年春)

調査対象国でもっとも肯定派が多いのはギリシャ。「間違いない」「多分」を合わせて91%が肯定している。次いで日本が89%、カナダが84%、アルゼンチンが82%。もっとも「間違いない」のみではギリシャがもっとも多く52%だが、次いで南アフリカの45%が続いている。

報告書ではこの動向そのものに対する直接的な解説は無いものの、「製造工場の労働者1万人あたりに対する産業用ロボットの数として、韓国は600台以上、日本では300台以上、アメリカ合衆国では200台近くが設置されてる」のような事例を挙げるとともに、企業の行動傾向である利益の最大化と、人件費の高騰対策として、ロボットやコンピューターの導入促進は大いに貢献しているとの説明が行われている。

しかしながら一方で、このような新技術の導入による仕事の代替が、人々の生活をより幸せにするという考えには、多くの国では否定的なようだ。「ロボットやコンピューターが多くの仕事で人にとって代わる」ような状況となったら、人の職探しは大変になるだろうか、それとも新しく高給が期待できる仕事が生まれて人はそれに従事できるようになるだろうか(アメリカ合衆国ではこの設問の回答は掲載されていない)。

↑ ロボットやコンピューターが人の仕事の多くを代替できるようになったら(2018年春)
↑ ロボットやコンピューターが人の仕事の多くを代替できるようになったら(2018年春)

ギリシャでは91%、アルゼンチンでは89%、日本でも74%の人が、新技術によって人の仕事が取って代わられると、その分仕事が減るために人の職探しは大変になると考えている。一方で、むしろそれらの新技術ではこなせない、しかも高給が期待できる新しい仕事が生まれるので、人はそれに従事することができるという楽観的な考えを持つ人は2割台から4割台でしかない。カナダは楽観的に見えるが、それでも5割に届かない。

恐らくは単純な作業が多い、技術をあまり必要としない仕事が新技術に取って代わられる可能性は高い。新技術が代替するためのハードルが低いからだ。しかしそれは同時に、そのような仕事についていた、つくことができない人の職が奪われることを意味する。あるいは新技術よりも低コストでの就業を余儀なくされる。そしてそのような人達が、「新しく高給な仕事」に就業できる可能性は高いとは言えない。

新技術は人の生活を豊かにするため、楽になるため、できないことをするために生まれ普及するものだが、それがすべての人にプラスとなるとは限らない。強弱の違いはあるものの、どの国でも同じように考えているようだ。


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