休刊相次ぐ…少女・女性向けコミック誌部数動向(2018年1月-3月)

2018/05/28 04:00

加速度的に展開される技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は先行解説した少年・男性向け雑誌ばかりで無く、少女・女性向けのにも及んでいる。そこで今回は社団法人日本雑誌協会が2018年5月18日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値(2018年1月から3月分)を用い、「少女・女性向けコミック系の雑誌」の現状を簡単にではあるが確認していく。

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トップは少女向けはちゃお独走継続、女性向けはBE・LOVEがトップ


データの取得場所に関する説明、「印刷証明付き部数」など各種用語の解説、さらには「印刷証明付き部数」を基にした定期更新記事のバックナンバーは、一連の記事まとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】に掲載している。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは少女向けコミック誌の現状。内容の限りではターゲットとなる読者層は比較的年齢が若い年齢階層、未成年でも高校生ぐらいまでが対象。今(四半)期では一誌「別冊花とゆめ」が脱落してしまった。

↑ 印刷証明付き部数(少女向けコミック誌、万部)(2017年10月-12月期と2018年1月-3月期)
↑ 印刷証明付き部数(少女向けコミック誌、万部)(2017年10月-12月期と2018年1月-3月期)

少女向けコミック誌ではトップは「ちゃお」。第2位の「りぼん」に3.0倍ほどの差をつけており、少年コミック誌の「週刊少年ジャンプ」的な群を抜く部数の多さ。この圧倒的差異をつけた状況は、現在データが取得可能な2008年4月から6月分の値以降継続している。以前話題に上ったATM型貯金箱をはじめ、魅力的な付録の数々も、同誌をトップの座に位置し続けさせている大きな要因となっているようだ。


↑ ちゃお2016年1月号付録・超金運UP ATM型貯金箱。

第2位の「りぼん」と第3位の「別冊マーガレット」は部数の点では僅差で競っており、何かイレギュラーな動きがあればすぐにでも順位は入れ替わりそうな状態。そしてその後に「花とゆめ」「LaLa」「Sho-Comi」「なかよし」がさほど違いの無い部数で続き、その他諸々が後を追いかけている。

「別冊花とゆめ」は印刷証明付き部数の最新値発表時には単に部数が非公開となったのみで、編集部の方針変更が行われただけのように見えた。しかし【別冊花とゆめが休刊】にもある通り、2018年5月26日発売の7月号で休刊を突然発表。

↑ 印刷証明付き部数(別冊花とゆめ、部)
↑ 印刷証明付き部数(別冊花とゆめ、部)

「別冊花とゆめ」の部数は2016年4月から6月期に「ガラスの仮面」50巻収録予定のエピソードの一部を小冊子に付けた号でやや部数を底上げして以降、特に2017年に入ってから失速状態にあった。このままでは同誌で話題の「ガラスの仮面」の連載再開の前に、プラットフォームの立ち位置そのものが危なくなる可能性も否定できない…との言い回しはここしばらくテンプレート化していたのだが、それがまさに体現化してしまった。「ガラスの仮面」はどの雑誌で連載を再開することになるのだろうか。

続いて女性向けコミック誌。想定読者層は「少女向け」と比べてやや高めの年齢層。内容的には実質的に大人向けが多く、子供にはあまりお勧めできない(いわゆるR指定は無いが、その判断を下されてもおかしく無い雑誌、連載も多い)。発行部数は少女向けコミックと比べて少なく、横軸の部数区切りの数字も小さめ。こちらでは「ARIA」が脱落してしまった。

↑ 印刷証明付き部数(女性向けコミック誌、万部)(2017年10月-12月期と2018年1月-3月期)
↑ 印刷証明付き部数(女性向けコミック誌、万部)(2017年10月-12月期と2018年1月-3月期)

トップの「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がやや突出、「プチコミック」「Kiss」が続く。トップ以外の部数は各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べるときれいな傾斜ができていた。ただし第2位と第3位の雑誌はここしばらく激しいつばぜり合い、さらには順位の差し換えの動きを続けている。

「ARIA」はここしばらく部数の減少が気になる動きを示していたが、【ARIA休刊決定】にもある通り4月28日発売の6月号で休刊することが発表されている。仕組みの上では今期の部数計上は可能だが、休刊が決定している以上、その必要は無いとの判断が下されたのだろう。

↑ 印刷証明付き部数(ARIA、部)
↑ 印刷証明付き部数(ARIA、部)

「ARIA」は、かつて「進撃の巨人」特需で大きく部数を底上げしたが、間もなく失速。その後は下落基調を示していた。2016年後半に入ってからは、これまでの最小値だった1万2000部すら下回る値にまで部数を落としており、前期では4ケタ台に突入。危機感を覚える状況だったが、それが体現化する形となってしまった。

プラスは1誌ずつ…四半期変移から見た直近動向


次に前期と直近期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前期比)(2018年1月-3月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前期比)(2018年1月-3月期)

プラス圏は1誌「ちゃお」のみ。誤差領域(上下幅5.0%以内)でのマイナスが10誌、それを超えた下げ幅は2誌。「別冊花とゆめ」は休刊・データ非公開化が決まったので、このグラフには登場せず。「別冊マーガレット」の減少ぶりがやや気になるところ。

続いて女性向けコミック。こちらは1誌、健闘している状況が確認できる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前期比)(2018年1月-3月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前期比)(2018年1月-3月期)

唯一のプラス計上誌「MELODY」は隔月刊誌。
↑ 印刷証明付き部数(MELODY、部)
↑ 印刷証明付き部数(MELODY、部)

なだらかな下落基調の部数推移だったものが、今期では明らかに上昇へと転じている。これは複数の要素による影響が考えられるが、恐らくは樹なつみ先生による「八雲立つ」の続編が掲載されたこと(+表紙にも大きく登場)が主な要因だろう。販売サイトや購読ブログなどにおいて、同誌に対し賛美・評価のコメントが多く見受けられる。パワーのある作品は掲載誌そのものを大きくけん引する好例ともいえよう。

プラスマイナスゼロとなった「フラワーズ」だが、【月刊フラワーズ増刷、「ポーの一族」続編が人気】でも伝えた、人気作品「ポーの一族」の続編「ポーの一族 春の夢」の特需は、完全に消え去ってしまっている。

↑ 印刷証明付き部数(フラワーズ、部)
↑ 印刷証明付き部数(フラワーズ、部)

「フラワーズ」はここ数年の間においては部数を3万3000部でほぼ固定した状態となっており、「ポーの一族 春の夢」の登場による特需での部数上昇(読み切りと短期集中連載)がきれいな形で表れている。今期の部数は平常運転に戻した結果。2018年5月28日発売の7月号からは新しいシリーズ「ポーの一族 ユニコーン」が表紙掲載・巻頭カラーで登場する予定なので、次期には再び「ポーの一族」のけん引力の大きさを知ることができる値が出てくることだろう。

プラス無し、誤差領域超え多数…前年同期比


続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前年同期比)(2018年1月-3月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前年同期比)(2018年1月-3月期)

プラス計上は皆無。全誌マイナスで、誤差領域を超えた下げ幅を示しているのは12誌。2割の下げ幅を示した「ザ・マーガレット」はここしばらくの間、部数を大きく減らす傾向の中にあり、よい状況とは言い難い。

↑ 印刷証明付き部数(ザ・マーガレット、部)
↑ 印刷証明付き部数(ザ・マーガレット、部)

続いて女性向けコミック。

↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前年同期比)(2018年1月-3月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前年同期比)(2018年1月-3月期)

「フラワーズ」は「ポーの一族 春の夢」特需発生前の部数に戻ったのが現状で、1年前は特需の頂点だったため、このような結果が出てしまっている。それを除くと、誤差領域以上の下げ幅を示したのは8誌、2割超えの下げ幅も「Cookie」が計上してしまっている。あまりよい状態とは言い難い。



1年ほど前にはあちこちに見受けられた「おそ松さん」特需だが、今四半期では残り香すら覚えること無く、各雑誌の部数動向は通常運転に戻っている。すでに第二期の実放送も終わり、今期はまさにその放送時期の動向なのだが、部数の上での盛り上がりは見受けられない。第一期のような嵐は去ってしまったのかもしれない。

「進撃の巨人」や「おそ松さん」のような盛り上がりを複数タイトルで意図的に起こせるようになれば、それこそ全盛期の週刊少年ジャンプのような活性化も不可能では無い。最近ならば「ポーの一族」の新連載が好例。「八雲立つ」もその可能性を秘めている。そのためには幅広い層へ訴えかける、購入動機をかきたてる作品との連動、あるいは発掘、さらには創生が欠かせまい。

他方、他ジャンルに関わる記事でも言及しているが、多くの雑誌で電子化が行われており、電子版に読者の一部を奪われ、結果として紙媒体としての印刷部数が減少している可能性は否定できない。もっとも少女向けコミック誌の場合、付録にも訴求性があることから、その影響は最小限に留まっているのだろう。女性向けコミック誌においても、男性向けのように通勤時の購読というメリットを得る機会が少ないため、需要はそれほど大きく無いのかもしれない。


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